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ゴミ屋敷
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ゴミタワーから脱出成功。
あれあの方は?
確か門番と話をするって言って出て行った。それっきり姿が見当たらない。
門番に尋ねてもは知らないの一点張り。
「まさか…… あのガキ! 嵌めたわね! 」
「ステーテル! 落ち着いて。彼の行きそうなところと言ったら…… 」
館からちょっと行ったところにレストランの文字。ガムの推理だとおそらくここ……
「いらっしゃい」
そう言えば朝から食べてなかったんだっけ。ちょっと待って……
あの少年に金貨を奪われた。今は暴落し続ける銀貨のみ。それもわずかばかり。
ここの支払いはおろか何も買えはしない。
ガムはそのことに気づいているのかしら?
「ガム! 」
「お任せください。ホラいた」
奥の席で勢いよく掻きこんでいる男。あの少年に間違いない。
もう逃がさない。
「ちょっと…… 」
「何だよ。食ってんだから…… 」
少年は手を止め顔を上げる。
「えっ? 」
一瞬驚くもすぐに笑顔を見せる。
「ははは…… 早かったな」
「ええ、ずいぶんとお世話になりました」
「いや…… もっとゆっくりしてればいいのに」
「そしたらどっかに逃げてたでしょう? 」
男は首を振る。
「いや食ったら戻るつもりだったんだ」
「本当? 」
「信じてくれよ! 」
「だったら早く金貨を返しなさいよ! 」
「す…… 済みません」
少年は素直に認めて謝った。
「そう正直に話してくれればいい。もういいわ。あなたもお腹が空いてたんでしょう」
「ステーテル! 」
「さあ私たちも食べましょう」
少年にお薦めを選んでもらう。
さすがに料理はおいしい。ゴミが代わりに出ることもない。
腹を満たし外へ。
今日はもう遅いので案内は明日にしてもらい泊まるところを探す。
ド・ラボーにふさわしい宿。この町にあるだろうか。
ガムに全てお任せ。
「こっちです」
ガムは妙に鼻が効く。
しかしそれはこの町に来るまでだ。あのゴミ屋敷で鼻をやられている。当てにはできない。
レストランから離れること十分。宿の看板発見。
「いらっしゃい。ああここは地元専用だよ」
ガムが噛みつく。
「冗談でしょう? 」
「他所を当たんな! 」
ずいぶん嫌われている。
近くにもう一軒。そちらに行くことに。
「一泊お願いします」
「嫌だね。よそ者を泊まらせるつもりはない」
ここもダメ?
せっかく訪ねたと言うのに愛想がない。なぜこんなにも嫌がるのか?
話を聞く。
「話すことなんかない! 真っ暗になる前にとっとと消えうせろ! 」
激高する亭主。どうやらゴミが関係しているようだ。
もう慣れたとはいえ臭いも強いし大量に全国から送られて来たらそれは誰でも怒る。
町を汚したのは私たちのせいだと疑わない。これは厄介。
宿を追い出される。
「どうしますステーテル? 」
野宿…… それは嫌! 他に方法はないのかしら?
おじさんが手招きをする。
「俺んちに来ないか」
男の提案を受け入れる。
「ちょっとしたゴミハウスへようこそ」
寝るだけ。割り切るしかない。
「ははは…… 」
「汚れているが遠慮なく使え! 」
「ここはゴミハウスと言っても一応人間が住んでいるんだ。まだマシだろ? 」
訳の分からない理屈でごまかそうとしている。
親切なおじさん。その裏の顔は?
部屋が二つほど。
一つにおじさんとその子供。まだ小さい男の子だ。
「俺はこっちで寝るからお前らはその部屋で寝てくれ」
確かに野宿よりは幾分かマシ。
ああ。ゴミの町でゴミ溜めに寝ることになるなんて。
仕方なく二人で部屋をきれいにする。
「まったくなんですかここは? 」
「あらガムは好きでしょう? 」
「ちょっと待ってください。一緒にしないで下さい! 」
ガムが怒る。
「あちらは芸術。これはただのゴミ屋敷」
「似てると思うけど」
「まったく違います! 」
ガムの基準が分からない。
「あなたはゴミに興味があるんじゃないの? 」
「いえそれは芸術として捉えた場合です。ただのゴミは何の価値もないどころか害悪でしかありません」
おじさんが音もなく現れた。
「済まんがもう少し静かにしてくれ。子供が寝てるんだ」
「ガムが…… 」
「私のせいですか? 」
「いいから静かにしてくれ! 」
「すみません」
おじさんが戻る前に少し話を聞く。
「なぜこの町はゴミを受け入れてるんですか? 」
「さあな。俺にも分からない。ただ金になるからって聞いたけど。どの辺がそうなのか俺にはちっとも理解できんけどな」
「辛くないんですか? 」
「ああもう慣れたからな。だが女どもは嫌がって逃げちまったがな」
「ここには男と気にしないおばちゃんが残った。俺みたいに子供を置いていかれた哀れな男も数人。
愛想を尽かされたりとあるがほとんどは子供も連れてよその国に行ったよ。俺らは余りものなのさ。
さあ子供が寝てるから静かにしてくれ」
話を打ち切る。
最後に一つ聞いてみる。
「ゴミはタワーに持って行くとして。この辺りのゴミはなぜこんなにあるんですか? 」
「次から次にゴミが来るもんだから誰もきれいにしようと思わなくなったのさ。ゴミが溜まっていく一方だ。まあこれもゴーチャットの運命なんだろう」
諦めの境地。
「もう寝るぞ! 」
不慣れなゴミハウスで一晩過ごす。
続く
あれあの方は?
確か門番と話をするって言って出て行った。それっきり姿が見当たらない。
門番に尋ねてもは知らないの一点張り。
「まさか…… あのガキ! 嵌めたわね! 」
「ステーテル! 落ち着いて。彼の行きそうなところと言ったら…… 」
館からちょっと行ったところにレストランの文字。ガムの推理だとおそらくここ……
「いらっしゃい」
そう言えば朝から食べてなかったんだっけ。ちょっと待って……
あの少年に金貨を奪われた。今は暴落し続ける銀貨のみ。それもわずかばかり。
ここの支払いはおろか何も買えはしない。
ガムはそのことに気づいているのかしら?
「ガム! 」
「お任せください。ホラいた」
奥の席で勢いよく掻きこんでいる男。あの少年に間違いない。
もう逃がさない。
「ちょっと…… 」
「何だよ。食ってんだから…… 」
少年は手を止め顔を上げる。
「えっ? 」
一瞬驚くもすぐに笑顔を見せる。
「ははは…… 早かったな」
「ええ、ずいぶんとお世話になりました」
「いや…… もっとゆっくりしてればいいのに」
「そしたらどっかに逃げてたでしょう? 」
男は首を振る。
「いや食ったら戻るつもりだったんだ」
「本当? 」
「信じてくれよ! 」
「だったら早く金貨を返しなさいよ! 」
「す…… 済みません」
少年は素直に認めて謝った。
「そう正直に話してくれればいい。もういいわ。あなたもお腹が空いてたんでしょう」
「ステーテル! 」
「さあ私たちも食べましょう」
少年にお薦めを選んでもらう。
さすがに料理はおいしい。ゴミが代わりに出ることもない。
腹を満たし外へ。
今日はもう遅いので案内は明日にしてもらい泊まるところを探す。
ド・ラボーにふさわしい宿。この町にあるだろうか。
ガムに全てお任せ。
「こっちです」
ガムは妙に鼻が効く。
しかしそれはこの町に来るまでだ。あのゴミ屋敷で鼻をやられている。当てにはできない。
レストランから離れること十分。宿の看板発見。
「いらっしゃい。ああここは地元専用だよ」
ガムが噛みつく。
「冗談でしょう? 」
「他所を当たんな! 」
ずいぶん嫌われている。
近くにもう一軒。そちらに行くことに。
「一泊お願いします」
「嫌だね。よそ者を泊まらせるつもりはない」
ここもダメ?
せっかく訪ねたと言うのに愛想がない。なぜこんなにも嫌がるのか?
話を聞く。
「話すことなんかない! 真っ暗になる前にとっとと消えうせろ! 」
激高する亭主。どうやらゴミが関係しているようだ。
もう慣れたとはいえ臭いも強いし大量に全国から送られて来たらそれは誰でも怒る。
町を汚したのは私たちのせいだと疑わない。これは厄介。
宿を追い出される。
「どうしますステーテル? 」
野宿…… それは嫌! 他に方法はないのかしら?
おじさんが手招きをする。
「俺んちに来ないか」
男の提案を受け入れる。
「ちょっとしたゴミハウスへようこそ」
寝るだけ。割り切るしかない。
「ははは…… 」
「汚れているが遠慮なく使え! 」
「ここはゴミハウスと言っても一応人間が住んでいるんだ。まだマシだろ? 」
訳の分からない理屈でごまかそうとしている。
親切なおじさん。その裏の顔は?
部屋が二つほど。
一つにおじさんとその子供。まだ小さい男の子だ。
「俺はこっちで寝るからお前らはその部屋で寝てくれ」
確かに野宿よりは幾分かマシ。
ああ。ゴミの町でゴミ溜めに寝ることになるなんて。
仕方なく二人で部屋をきれいにする。
「まったくなんですかここは? 」
「あらガムは好きでしょう? 」
「ちょっと待ってください。一緒にしないで下さい! 」
ガムが怒る。
「あちらは芸術。これはただのゴミ屋敷」
「似てると思うけど」
「まったく違います! 」
ガムの基準が分からない。
「あなたはゴミに興味があるんじゃないの? 」
「いえそれは芸術として捉えた場合です。ただのゴミは何の価値もないどころか害悪でしかありません」
おじさんが音もなく現れた。
「済まんがもう少し静かにしてくれ。子供が寝てるんだ」
「ガムが…… 」
「私のせいですか? 」
「いいから静かにしてくれ! 」
「すみません」
おじさんが戻る前に少し話を聞く。
「なぜこの町はゴミを受け入れてるんですか? 」
「さあな。俺にも分からない。ただ金になるからって聞いたけど。どの辺がそうなのか俺にはちっとも理解できんけどな」
「辛くないんですか? 」
「ああもう慣れたからな。だが女どもは嫌がって逃げちまったがな」
「ここには男と気にしないおばちゃんが残った。俺みたいに子供を置いていかれた哀れな男も数人。
愛想を尽かされたりとあるがほとんどは子供も連れてよその国に行ったよ。俺らは余りものなのさ。
さあ子供が寝てるから静かにしてくれ」
話を打ち切る。
最後に一つ聞いてみる。
「ゴミはタワーに持って行くとして。この辺りのゴミはなぜこんなにあるんですか? 」
「次から次にゴミが来るもんだから誰もきれいにしようと思わなくなったのさ。ゴミが溜まっていく一方だ。まあこれもゴーチャットの運命なんだろう」
諦めの境地。
「もう寝るぞ! 」
不慣れなゴミハウスで一晩過ごす。
続く
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