ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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最後の力

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突然のキス。回避するのは不可能。

王子。へへへ……

「ステーテル? 」

ガムに引っ叩かれる。

「いつまで惚けてるんですか? 早く正気に戻ってください! ステーテル! ステー! 」

「あれ…… ガム。もう。ちょっと! 」

元国王があれほど気をつけるように言っていたのに避ける暇も無くキスを受ける。

「どうしましょう? どうしましょう? 」

「落ち着いてください」

「だってあと一時間もしないで私は固まってしまうのよ? 」

「とにかくここを出ましょう。着いてきてください」

「ガム…… 」

「心配しないでください。私がお守りします」

そう。ガムに任せれば安心だ。

「こっちです」

館内は王子の命により出払っていて人の姿は見当たらない。

危険を加える者はいない。

館を出て王子たちの後を追う。

と言っても見つかってはお終い。慎重に前へ。

王子を先頭に明後日の方に駆けていく男たち。

「そっちじゃない」

爺なら村人に匿われている。

ガムの機転で安全に逃がされた。


とにかく昨日の地点まで走る。

できたら馬車でも使えたら良かったのだが。

あれだけ目立つ上に馬が見当たらない。

「ガム…… 」

「大丈夫です。まだ何とかなります」

「もう嫌! 」

「ほら笑ってください。もう少しなんですから」

第一ポイントに差し掛かった。

河童の像が見えた。

像を傾ける。

「こっちね。行きましょうステーテル」

頼りになるガム。

「次はこっち」

東に走る。

歩いて十分もかからないところに像があるはず。

「えっと…… 」

歩いている時間は無い。走りながら像を探す。

さすがに簡単には見つからないか。

「もうあの爺さん! 大雑把なんだから」

「ステーテルは左を。私は右を」

よく見る。

像。河童の像。

ある?

「ダメどこにもない! ガム…… 」

「焦ってはダメ。よく見るの」

「だって…… 」

「泣き言を言わないの! 」

「もうガムがいじめる」

「ステーテル。諦めるつもりですか? 」

「ううん」

「なら真剣に探してください」

「でも…… 」

「気持ちは分かりますがこれはあくまであなたの問題。違いますか? 」

「嘘? 見捨てるつもり? 」

ガムが首を振る。

「私はあなたが理想の王子様と結ばれるためにここまで仕えてきました。ですがこの国の王子も条件面では問題ありません。あなたが我慢すればここで一生暮らせるように取り計らいますが。まあどの道固まってしまう運命なのですが。それはそれでよろしいではないですか」

弱気なガム。諦めムードが漂う。ここはもう自分の力で何とかするしかない。

像? 像?

もう三十分もない。どうしよう。

「うわああ! 」

頭が真っ白。何も思い浮かばない。

「落ち着いてください。私は問題ありません」

冷静な対応が癇に障る。

「もう! 」

「ステーテル? 」

「あった。あったわよ! 」

像は繁みに隠れるように立っていた。まあ目立つところに置いておくものでもないか。

でもこの国のシンボルと言ってもいいのにこれでいいの?

繁みからちょっとだけ顔を見せた河童の笑顔に腹が立つ。

「まったくちゃんと管理しておきなさいよ! 」

「ステーテル。もう少し上品に」

「何言ってるのこんな時に」

今度の像は河童一体が大きくが描かれている。

二人でも動かすのが大変な重さ。

はあはあ
はあはあ

息を切らし最後の力を振り絞り傾ける。

「こっちです」

はあはあ

「分かった。でも少し休憩を…… お願い! 」

「ダメです。本当に時間が無いんですよ」

「もう嫌! 」

ガムに引っ張ってもらい走る。

そろそろ限界が近い。

体力にしろ気力にしろもう使い果たしている。

あと残されているとすれば火事場の馬鹿力ぐらいなもの。

果たしてこんな私にそんな力が残されているかしら。

もう時間がない。タイムリミットまで残り僅か。

凍り付くが先か? それとも……


ステーテルとガムの運命は如何に?


                    続く
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