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盾? 囮? ガム活用法
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深夜の散策。
ギギ……
扉の音が響き渡る。
ああこんな時に限って大きい。抑えたつもりなんだけど。
まずい! 気付かれてしまう。
大丈夫? 大丈夫よね?
足音がする方に歩き出す。
ガムが先頭。背中に張り付く。
「ちょっと…… 苦しい! 」
「だって…… お願い! 」
「だからくっつき過ぎですって」
足音が消えないうちに。息を殺し足音を立てないように追跡。
何か楽しくなってきちゃった。怖いよりもワクワクが勝る。
これも絶対の信頼がおけるガムがいるからこそ。
さあどうする?
足音は一旦止まる。
気付かれた?
再び動き出した。今度は階段を下る音。
まさか……
あんな危険なところに夜中に一人でどうかしてる。
「急ぎましょう」
ガムはスピードを上げた。くっ付いていたのでもう少しで倒れるところだった。
「ねえどう? 」
階段付近までやって来た。
逃げ場所も確保せなばならないので待機。
真っ暗闇の中、耳を澄ませる。
トントン
トントン
階段を登る音。音と共にわずかな光。
「ガム…… 」
「静かに! 気づかれますよ」
「だって…… 」
もう耐えられない。今すぐ部屋に戻りたい。
音が止まる。
何か気になったのだろうか? それとも……
ガムが屈む。私はそこにただ突っ立ている。
もう気づかれたっていい。これ以上の恐怖を味わいたくない。
早く見つけてもらいたいくらいだ。
諦めに近い感情が支配する。
あきらかにおかしいのだが冷静になどいられない。
足音が遠ざかっていく。
ふう……
危機は去ったようだ。
「どうするガム? 」
「進みましょう。彼らが何を隠しているのか気になります」
「ちょっとガム…… 」
階段を下る。
一歩一歩なるべく足音を立てないように慎重に。
ちょっとでも油断すれば軋む音で気づかれる。そうなったらお終い。
「何してるんですか? 」
「怖くて…… 」
「急ぎましょう。夜が明けるとやっかいですよ」
真っ暗な地下に向かって歩いていく。
本来ガムはこのような無謀な行為を止めるはずなのになぜか今回は乗り気だ。
一段ずつ踏み外さないようにゆっくり。それでいて音を立てないように慎重に。
最後の一段を降りると頑丈な扉が見えた。
中から光が漏れている。元々点けっぱなしなのか消し忘れたのか。
とにかく中へ。
「ガム先にいって」
「もう! ステーテルこそお先にどうぞ 」
文句を垂れるがこれくらいはやってもらわなくてはお付の意味がない。
本来ガムは私をあらゆる危険や穢れから守るのが役目。
ギギギ!
嫌な音を立て扉が開いた。
「待って…… 心の準備が…… 」
もし本当に化け物や肉食獣が居たらどうする? ガムを盾にしたとしても私はただでは済まない。
忠告を無視した報いを受けるべき。
ガムを囮にしたらどうかしら? 少なくてもダッシュで逃げ切れる。
うーん。どうしよう……
結論がでないまま先に進むことに。
特に獣特有の臭いがしない。
化け物などいない。
やはりあの男の言っていたことは嘘だ。私たちを怖がらせて絶対に地下に近づかせないための作戦。
ああ、ごめんなさい。ガム。
あなたを一瞬でも盾にしようとした自分が恥ずかしい。
私をきつく罰して。もう二度としないから。
「ごめんねガム」
「はい? 」
盾どころか囮にしようとしていたなんてもう自分が許せない。
「何を言ってるんですか。さあ行きますよ」
光が眩しい。
特に変わったところは見当たらない。何を隠していたのだろう?
「ステーテル? 」
ガムが先へ先へと進んでいく。
もう危険が無いと判断したのだろうが甘いわ。あの喚き声の正体が分からなければ安心できない。
目の前には巨大な檻。
檻には得体の知れない生物がうごめいていた。
続く
ギギ……
扉の音が響き渡る。
ああこんな時に限って大きい。抑えたつもりなんだけど。
まずい! 気付かれてしまう。
大丈夫? 大丈夫よね?
足音がする方に歩き出す。
ガムが先頭。背中に張り付く。
「ちょっと…… 苦しい! 」
「だって…… お願い! 」
「だからくっつき過ぎですって」
足音が消えないうちに。息を殺し足音を立てないように追跡。
何か楽しくなってきちゃった。怖いよりもワクワクが勝る。
これも絶対の信頼がおけるガムがいるからこそ。
さあどうする?
足音は一旦止まる。
気付かれた?
再び動き出した。今度は階段を下る音。
まさか……
あんな危険なところに夜中に一人でどうかしてる。
「急ぎましょう」
ガムはスピードを上げた。くっ付いていたのでもう少しで倒れるところだった。
「ねえどう? 」
階段付近までやって来た。
逃げ場所も確保せなばならないので待機。
真っ暗闇の中、耳を澄ませる。
トントン
トントン
階段を登る音。音と共にわずかな光。
「ガム…… 」
「静かに! 気づかれますよ」
「だって…… 」
もう耐えられない。今すぐ部屋に戻りたい。
音が止まる。
何か気になったのだろうか? それとも……
ガムが屈む。私はそこにただ突っ立ている。
もう気づかれたっていい。これ以上の恐怖を味わいたくない。
早く見つけてもらいたいくらいだ。
諦めに近い感情が支配する。
あきらかにおかしいのだが冷静になどいられない。
足音が遠ざかっていく。
ふう……
危機は去ったようだ。
「どうするガム? 」
「進みましょう。彼らが何を隠しているのか気になります」
「ちょっとガム…… 」
階段を下る。
一歩一歩なるべく足音を立てないように慎重に。
ちょっとでも油断すれば軋む音で気づかれる。そうなったらお終い。
「何してるんですか? 」
「怖くて…… 」
「急ぎましょう。夜が明けるとやっかいですよ」
真っ暗な地下に向かって歩いていく。
本来ガムはこのような無謀な行為を止めるはずなのになぜか今回は乗り気だ。
一段ずつ踏み外さないようにゆっくり。それでいて音を立てないように慎重に。
最後の一段を降りると頑丈な扉が見えた。
中から光が漏れている。元々点けっぱなしなのか消し忘れたのか。
とにかく中へ。
「ガム先にいって」
「もう! ステーテルこそお先にどうぞ 」
文句を垂れるがこれくらいはやってもらわなくてはお付の意味がない。
本来ガムは私をあらゆる危険や穢れから守るのが役目。
ギギギ!
嫌な音を立て扉が開いた。
「待って…… 心の準備が…… 」
もし本当に化け物や肉食獣が居たらどうする? ガムを盾にしたとしても私はただでは済まない。
忠告を無視した報いを受けるべき。
ガムを囮にしたらどうかしら? 少なくてもダッシュで逃げ切れる。
うーん。どうしよう……
結論がでないまま先に進むことに。
特に獣特有の臭いがしない。
化け物などいない。
やはりあの男の言っていたことは嘘だ。私たちを怖がらせて絶対に地下に近づかせないための作戦。
ああ、ごめんなさい。ガム。
あなたを一瞬でも盾にしようとした自分が恥ずかしい。
私をきつく罰して。もう二度としないから。
「ごめんねガム」
「はい? 」
盾どころか囮にしようとしていたなんてもう自分が許せない。
「何を言ってるんですか。さあ行きますよ」
光が眩しい。
特に変わったところは見当たらない。何を隠していたのだろう?
「ステーテル? 」
ガムが先へ先へと進んでいく。
もう危険が無いと判断したのだろうが甘いわ。あの喚き声の正体が分からなければ安心できない。
目の前には巨大な檻。
檻には得体の知れない生物がうごめいていた。
続く
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