ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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地下の秘密

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「ほら手を動かして! そうじゃない! もっと早く! 」

ついつい熱が入るのか厳しくなるので困ってしまう。

「さあ一つずつゆっくり重ねていってね」

一つ二つ三つ。

そこまでは誰にでも問題なくできる。だがその後が続かない。

ボロ!

ああもうダメ!

「ほらもうちょっと」

十個まで積み上げた。これが限界。

満足。満足。

「これが毎日なのよね…… 」

「大変ですね」

「もう慣れたから。ふふふ…… 」

私も合わせて苦笑い。

「時間は無限にあるから大丈夫。心配しなくてもいいわ」

無限? その言葉が引っかかる。

比喩なのか?

本当の意味だとしたら?

寒気がする。

まさか食事の影響?

「ではまた」

採石場見学を終える。

王子は私に何を見せたかったのだろう?

ただの暇つぶし?

「次はどうしたい? 」

昨日のことが浮かぶ。

確か地下には決して近づくなと警告を受けていた。でも少しでも気になったら突っ込むのが私のやり方。

「王子。もう村はいいです。館内を案内してくれませんか」

「それもそうだな…… よし帰ろう! 」


ポツポツ
ポツポツ

小雨が降りだした。

ああ! これはまずい。濡れては元も来ない。

急いで館へ。

ガムが門の前で突っ立ている。

「ガム? 」

「ステーテル! 」
 
心配になって飛び出してきたようだ。こういう時は頼もしい。

「さあ戻りますよ」

ガムは相変わらずクール。

「王子? 王様はどちらに? 」

「うん? いや私もまだ見かけてない」

何か隠している?

「父上のことは気にしなくていい。ただ座っているだけさ」

反抗? まあよくあること。

「では案内しよう。ここが王の間。今は出かけている。続いて謁見の間。ここでお言葉を述べられる。それから君達がいるのはゲストルームだ。後は…… 」

一階に降りる。

「王子。もう少し詳しくお願いします」

「済まん。疲れてしまった。この後のことはその辺の者に頼んでくれ」

昨日部屋まで案内した男が引き継いだ。

「俺も忙しいんですよ。鳥の世話だったり魚の世話だったり何かとあるんですわ。
できればこれ以上迷惑をかけないでくれないか」

嫌味を言う男。案内を拒否するとはどういうつもり。私たちを女だと思って馬鹿にして……

王子に言いつけてもいいのよ。

あら嫌だ…… そんな心にもないこと。

「でしたらこちらで勝手に見回ります」

どうせ目的は地下にあるんだから。

「おい! そういう訳にはいかない」

「でも…… 」

「ほらさっさと行くぞ! 」

手を引っ張られる。

ガムに視線を送るがちっとも反応しない。卑しいものではないと判断したのかしら。これくらいはいいとか?

館には広々とした窓。

窓から黄色やピンクの花が見える。

窓を超えるとゲストルームが一つ置きにあり、間にはここと同様に大きな窓があるだけ。どうやらメイドたちの控えとして使われているようだ。

そこを抜けて行き大きな部屋が見えてきた。

ここは大広間で今は使われていないが盛大なパーティーが催されているのだとか。

さあ長い長い廊下を抜けパウダールームを過ぎると見えてきました階段。

「ここで終点だ! 」

下にも上にも行けるようになっている。

どうしよう?

「あの…… 」

「さあ戻るぞ! 」

「待って。この階段はどこへ? 」

ガムが反応。

「二階は執務室等あり一般の者、この俺さえも立ち入りを禁止されている。

二階に上がれるのは信頼のおける者のみ。要するにお前らはここまでだ! 」

憎たらしい奴。今さっき行ってきたんですけど。

「さあ戻るぞ」

「でしたら地下は? 」

ガムが食らいつく。

「ふん。興味を持つなと言っただろ。知らんぞ! 」

「あなたのいい方が引っかかったのよ」

「まあいい。もう一度言う。地下には近づくな! 危険だ! 」

「何がいるの? 」

「それは化け物だとか獰猛な肉食獣とかな。まあ悪いことは言わない。これ以上進めばただでは済まない」

そう言われては従わざるをえない。

別にそこまで興味がある訳でもない。

つまらない好奇心で怪我などしたくない。

                続く
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