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帰ってきた国王
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困ったわ…… どうしましょう。
スープにサラダ。煮凝りと悪くはないんだけど……
デザートには冷凍ミカンにアイスクリームと全体的に体が冷えるメニュー。
冷え性にはきつい。もう本当に勘弁してよね。
「さあ王子。歩きましょうか」
早いところ離れるに限る。
「ではまた王子。皆さんもいつでもどうぞ」
グッと冷え込んできた。
ああこのままでは雪でも降りそうな勢いだ。
ガムも手に息をかけ揉む。私も真似をする。
「王子! 寒くありませんか? 」
「そんなことないよ。いつも通りさ」
王子の笑顔も寒々しい。
どうしてしまったのだろう?
「ガム。大丈夫? 」
「ご心配なく。歩いていればそのうち慣れますよ」
適当なこと言って風邪にでもなったらどうするのかしら。王子にもガムにも困っちゃう。
王子が駆ける。
「さあ運動でもしよう」
王子を追いかけることに。
はあはあ
はあはあ
体が温まってきたのはいいがもう限界も近い。
「もう帰りましょう王子」
「しょうがないなあ。では館に戻るとしよう」
ふう…… 助かった!
あれ? 誰かいる。
「シーシャ? 」
「父上! 帰って来たのですね! 」
国王が従者を連れて帰還。予定よりも一週間は早い。
「おう。留守番ご苦労。いやあ。予定していた集まりが雪の影響で流れた。仕方が無いので切り上げて帰ってきた。シーシャよ元気にしていたか? 」
「はい。異常ありません」
「そちらは? 」
困惑する国王。この国を訪れる者など皆無に等しい。観光客は十年近く見ていないのだとか。
毎日会う村の者とは明らかに違うのですぐに違和感を覚えたそうだ。
「こちらはステーテル。それからお付のガムさん」
「お付? 」
「ド・ラボーだそうです」
「それは何と…… 」
「だからステーテルと結婚を許して。お願い! 」
王子は興奮状態。
「何ちゅう頼み方をしとる! この愚か者が! いいかよく聞け! 」
「いくらなんでもまだ早すぎる! 」
「何を言ってるのもう遅いぐらいだよ」
「口答えは許さない! 王子の自覚を持て! 」
「父上…… 」
「分かった。分かった。好きにしろ! 」
王子を甘やかすダメな大人。それでも国王?
「どうでしょう? 」
国王が迫る。
「ごめんなさい。まだ何とも。会ったばかりですし」
結論を急ぐとまた大変なことになる。もうこりごり。
「ではお疲れでしょうからお寛ぎください。分らないことはこの男に」
案内をつけてもらう。
国王は姿を消す。
「では王子様私たちはこれで」
「待ってよ! 」
まだ子供だ。可愛らしい。
「一緒に寝よう。ねえ」
一瞬無邪気な子供のように見えたが考えていることは一人前。
「もう王子ったら! 」
疲れるんだから……
「ねえ! まだいいだろ? 」
「ごきげんよう! 」
これ以上は付き合いきれない。
案内された部屋はゲストルームなのか調度品が揃っている。
「それではお休みください」
「待って! 」
「そうだ忘れていました。館内はご自由にどうぞ。でもくれぐれも地下にはお降りにならないでください。
安全は保障致しかねます」
脅しをかける。
何だろう? 気になる。でも今はこの体を休めたい。
シャワーを浴びる。
あれ? 温度が上がらない。
「どうしましたステーテル? 」
ガムが何の断りもなく入ってくる。
「ちょっと…… 」
「ダメ? 」
「ううん」
「壊れてるみたいねスティ―」
温度をいくらいじくり回してみても上がらない。これが限界のようだ。
「急いで浴びましょうスティ―! 」
「お姉さま」
優しいガムが現れた。いつもこうだといいのに。
「もうあきらめて寝てしまいましょう。いくら寒くても二人で温め合えばいいわ」
「お姉さま! 」
「スティ―! 」
二人は寒さに負けないほどの愛でお互いを包む。
「ああお姉さま! 」
「どうしたの? ふふふ…… 」
「もうダメ! あああ! 」
「もう困ったスティ―。これからが本番じゃない」
ああもう……
薄明りに二人の肢体が浮かび上がる。
これだから止められない。何て罪深いの。
「ふふふ…… もう寝ましょう」
「お姉さま。いや! 」
すっかり温まった。
おやすみなさい。
続く
スープにサラダ。煮凝りと悪くはないんだけど……
デザートには冷凍ミカンにアイスクリームと全体的に体が冷えるメニュー。
冷え性にはきつい。もう本当に勘弁してよね。
「さあ王子。歩きましょうか」
早いところ離れるに限る。
「ではまた王子。皆さんもいつでもどうぞ」
グッと冷え込んできた。
ああこのままでは雪でも降りそうな勢いだ。
ガムも手に息をかけ揉む。私も真似をする。
「王子! 寒くありませんか? 」
「そんなことないよ。いつも通りさ」
王子の笑顔も寒々しい。
どうしてしまったのだろう?
「ガム。大丈夫? 」
「ご心配なく。歩いていればそのうち慣れますよ」
適当なこと言って風邪にでもなったらどうするのかしら。王子にもガムにも困っちゃう。
王子が駆ける。
「さあ運動でもしよう」
王子を追いかけることに。
はあはあ
はあはあ
体が温まってきたのはいいがもう限界も近い。
「もう帰りましょう王子」
「しょうがないなあ。では館に戻るとしよう」
ふう…… 助かった!
あれ? 誰かいる。
「シーシャ? 」
「父上! 帰って来たのですね! 」
国王が従者を連れて帰還。予定よりも一週間は早い。
「おう。留守番ご苦労。いやあ。予定していた集まりが雪の影響で流れた。仕方が無いので切り上げて帰ってきた。シーシャよ元気にしていたか? 」
「はい。異常ありません」
「そちらは? 」
困惑する国王。この国を訪れる者など皆無に等しい。観光客は十年近く見ていないのだとか。
毎日会う村の者とは明らかに違うのですぐに違和感を覚えたそうだ。
「こちらはステーテル。それからお付のガムさん」
「お付? 」
「ド・ラボーだそうです」
「それは何と…… 」
「だからステーテルと結婚を許して。お願い! 」
王子は興奮状態。
「何ちゅう頼み方をしとる! この愚か者が! いいかよく聞け! 」
「いくらなんでもまだ早すぎる! 」
「何を言ってるのもう遅いぐらいだよ」
「口答えは許さない! 王子の自覚を持て! 」
「父上…… 」
「分かった。分かった。好きにしろ! 」
王子を甘やかすダメな大人。それでも国王?
「どうでしょう? 」
国王が迫る。
「ごめんなさい。まだ何とも。会ったばかりですし」
結論を急ぐとまた大変なことになる。もうこりごり。
「ではお疲れでしょうからお寛ぎください。分らないことはこの男に」
案内をつけてもらう。
国王は姿を消す。
「では王子様私たちはこれで」
「待ってよ! 」
まだ子供だ。可愛らしい。
「一緒に寝よう。ねえ」
一瞬無邪気な子供のように見えたが考えていることは一人前。
「もう王子ったら! 」
疲れるんだから……
「ねえ! まだいいだろ? 」
「ごきげんよう! 」
これ以上は付き合いきれない。
案内された部屋はゲストルームなのか調度品が揃っている。
「それではお休みください」
「待って! 」
「そうだ忘れていました。館内はご自由にどうぞ。でもくれぐれも地下にはお降りにならないでください。
安全は保障致しかねます」
脅しをかける。
何だろう? 気になる。でも今はこの体を休めたい。
シャワーを浴びる。
あれ? 温度が上がらない。
「どうしましたステーテル? 」
ガムが何の断りもなく入ってくる。
「ちょっと…… 」
「ダメ? 」
「ううん」
「壊れてるみたいねスティ―」
温度をいくらいじくり回してみても上がらない。これが限界のようだ。
「急いで浴びましょうスティ―! 」
「お姉さま」
優しいガムが現れた。いつもこうだといいのに。
「もうあきらめて寝てしまいましょう。いくら寒くても二人で温め合えばいいわ」
「お姉さま! 」
「スティ―! 」
二人は寒さに負けないほどの愛でお互いを包む。
「ああお姉さま! 」
「どうしたの? ふふふ…… 」
「もうダメ! あああ! 」
「もう困ったスティ―。これからが本番じゃない」
ああもう……
薄明りに二人の肢体が浮かび上がる。
これだから止められない。何て罪深いの。
「ふふふ…… もう寝ましょう」
「お姉さま。いや! 」
すっかり温まった。
おやすみなさい。
続く
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