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死の国シーンジャット
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「面倒くさいなあ…… 」
必死に止める老紳士を振り払うガム。
連れなのかただの通行人なのか分からないがおばさんが加わる。
「ほら悪いことは言わないからおやめなさい! 」
「ちょっと放してよ! 」
変な人達に絡まれたものだ。
ガムが銀貨を一枚差し出す。
「ほらこれで我慢して! 」
橋の上で口論となる。
「馬鹿者! 」
ついに老紳士が切れた。
「もう知らぬわ! 」
「さあ行きましょう。ステーテル」
「はい…… 」
何となく気になるが今は夜。余計なことに関わらない方が身のため。
ガムについて行くのみ。
ガムと共に橋のちょうど中間地点までやって来た。
あれどこ?
後ろを振り返ったが今までいた老紳士もおばさんの姿もない。
これは一体? 消えてしまったとでも言うの?
今さっきまでいたのに……
違和感を覚える。
「行きましょう。ステーテル」
ガムに任せていれば大丈夫。安心なんだから。
でも…… なぜか嫌な予感がする。
「またやってしまった! 」
耳を澄ますと後ろから声が聞こえる。
「私は止められなかった」
「いいんじゃない。彼女たちの意思よ。諦めましょう」
「いや、彼女らはまだ決心していなかった。私が止めれば引き返してくれただろう」
シーンジャット。
死の国。
「もう決して引き返すことができない。私たちに出来ることと言えば出口を示してやることぐらいだ。
いいか! よく聞け! 」
「ステーテル。どうしたんですか? さあ行きますよ」
「ねえ。本当にこれでいいの? 」
「分かりません。でも進むべきです」
「ガム…… 聞こえない? 」
「もうステーテル。私を脅かす気ですね」
「違うってば! 」
「その手には乗りませんよ。自分一人で震えていてください」
「もう! 」
「いいかよく聞け! 」
まだ何か言っている。くぐもって良く聞きとれない。
はっきりお願い!
「国王に会うのだ。国王だけはお前たちの味方だ。国王だけが帰る方法を知っている。
もちろん簡単ではない。王子に捕まってはいけない! 虜にされてしまう。
もう戻る気が無いのなら聞き流すがよい。だがそちらの世界はそれは暗いし寒いぞ。
出口は開けておく。戻る気があるなら帰ってくるがよい」
「それから奴らは…… 」
もう完全に聞こえなくなってしまった。
「ねえガム。今のは? 」
「どうしたんですか? 」
ガムには聞こえていない。
「ここは死の国みたいね。私たちは誤って死の国へ来てしまったみたい」
「いえ問題ありません」
ガム……
「死の国であろうと幻想の国であろうと一向に構いません。
ステーテル。私たちの目的はあくまで理想の王子を探すことです。
王子であるならばたとえ死の国であろうとどんな国であろうと問題ないのです」
でもやっぱり……
「引き返しましょう! ねえガム」
ガムが首を振る。
「いいですか。彼らは銀貨一枚しかもらえなかったから嫌がらせをしているんです。
気にする必要はないのです。銀の価値が暴落している。
その為様々な影響を受けている。銀貨一枚では一日が限界。彼らも大変なんです」
「ガムは物知りなのね」
「いえ。これくらいの情報は入ってきますよ。ステーテルは何も気にせず私に全てお任せください」
ついに橋を渡り切る。
あれ何か急に眠気がする。
「ステーテル! 」
「ガム。これは一体…… もうダメ! 」
目覚めた時には朝になっていた。
ベットの中。
あれどうして私はここに? 確か橋を渡り……
ダメだ思い出せない。
ここは一体どこ?
「おう! 起きたか! 」
女性の姿。ガムではない。
「あの…… 」
「ああ、ここは休憩室。 お前たちが倒れていたからここまで運んでやったのさ! 」
「それはどうも。あなたは? 」
「ここの責任者のアイニーだ。よろしくな! 」
「はい。それで連れの者がいたと思うんですが」
「彼女ならもう先に行ってるよ。さあお前も。ああ名前は? 」
「ステーテル」
「そうか。ならステーテル。着いて来い! 」
良く分からないけどガムに会えれば問題ない。
言われるまま外へ。
続く
必死に止める老紳士を振り払うガム。
連れなのかただの通行人なのか分からないがおばさんが加わる。
「ほら悪いことは言わないからおやめなさい! 」
「ちょっと放してよ! 」
変な人達に絡まれたものだ。
ガムが銀貨を一枚差し出す。
「ほらこれで我慢して! 」
橋の上で口論となる。
「馬鹿者! 」
ついに老紳士が切れた。
「もう知らぬわ! 」
「さあ行きましょう。ステーテル」
「はい…… 」
何となく気になるが今は夜。余計なことに関わらない方が身のため。
ガムについて行くのみ。
ガムと共に橋のちょうど中間地点までやって来た。
あれどこ?
後ろを振り返ったが今までいた老紳士もおばさんの姿もない。
これは一体? 消えてしまったとでも言うの?
今さっきまでいたのに……
違和感を覚える。
「行きましょう。ステーテル」
ガムに任せていれば大丈夫。安心なんだから。
でも…… なぜか嫌な予感がする。
「またやってしまった! 」
耳を澄ますと後ろから声が聞こえる。
「私は止められなかった」
「いいんじゃない。彼女たちの意思よ。諦めましょう」
「いや、彼女らはまだ決心していなかった。私が止めれば引き返してくれただろう」
シーンジャット。
死の国。
「もう決して引き返すことができない。私たちに出来ることと言えば出口を示してやることぐらいだ。
いいか! よく聞け! 」
「ステーテル。どうしたんですか? さあ行きますよ」
「ねえ。本当にこれでいいの? 」
「分かりません。でも進むべきです」
「ガム…… 聞こえない? 」
「もうステーテル。私を脅かす気ですね」
「違うってば! 」
「その手には乗りませんよ。自分一人で震えていてください」
「もう! 」
「いいかよく聞け! 」
まだ何か言っている。くぐもって良く聞きとれない。
はっきりお願い!
「国王に会うのだ。国王だけはお前たちの味方だ。国王だけが帰る方法を知っている。
もちろん簡単ではない。王子に捕まってはいけない! 虜にされてしまう。
もう戻る気が無いのなら聞き流すがよい。だがそちらの世界はそれは暗いし寒いぞ。
出口は開けておく。戻る気があるなら帰ってくるがよい」
「それから奴らは…… 」
もう完全に聞こえなくなってしまった。
「ねえガム。今のは? 」
「どうしたんですか? 」
ガムには聞こえていない。
「ここは死の国みたいね。私たちは誤って死の国へ来てしまったみたい」
「いえ問題ありません」
ガム……
「死の国であろうと幻想の国であろうと一向に構いません。
ステーテル。私たちの目的はあくまで理想の王子を探すことです。
王子であるならばたとえ死の国であろうとどんな国であろうと問題ないのです」
でもやっぱり……
「引き返しましょう! ねえガム」
ガムが首を振る。
「いいですか。彼らは銀貨一枚しかもらえなかったから嫌がらせをしているんです。
気にする必要はないのです。銀の価値が暴落している。
その為様々な影響を受けている。銀貨一枚では一日が限界。彼らも大変なんです」
「ガムは物知りなのね」
「いえ。これくらいの情報は入ってきますよ。ステーテルは何も気にせず私に全てお任せください」
ついに橋を渡り切る。
あれ何か急に眠気がする。
「ステーテル! 」
「ガム。これは一体…… もうダメ! 」
目覚めた時には朝になっていた。
ベットの中。
あれどうして私はここに? 確か橋を渡り……
ダメだ思い出せない。
ここは一体どこ?
「おう! 起きたか! 」
女性の姿。ガムではない。
「あの…… 」
「ああ、ここは休憩室。 お前たちが倒れていたからここまで運んでやったのさ! 」
「それはどうも。あなたは? 」
「ここの責任者のアイニーだ。よろしくな! 」
「はい。それで連れの者がいたと思うんですが」
「彼女ならもう先に行ってるよ。さあお前も。ああ名前は? 」
「ステーテル」
「そうか。ならステーテル。着いて来い! 」
良く分からないけどガムに会えれば問題ない。
言われるまま外へ。
続く
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