ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

文字の大きさ
上 下
14 / 124

めでたしめでたし

しおりを挟む
ひゃああはは!
イエー!

「ほれ避けろ避けろ! 当たってしまうぞ! わははは! 」

再び王子のご乱心。

「王様こちらへ早く! 」

木の陰に身を隠す。

王子は我を失っている。いつもの王子ではない。

昨日のことが無ければ今も信じられない。

またあいつ!
 
「あれほど与えるなと言っておいたのに! 」

「王様? 」

「ステーテルや本当に済まない。バカ息子が何を考えているのやら」

「昨日もありましたよ」

「甘やかすものだからまったく! 」

王子は弾が尽きるまで乱射を続ける。もう手が付けられない。

「王子はいつもこうなのでしょうか? 」

「うむ。奴の悪い癖でな。もともと臆病なたちでいつもは大人しいのだがどうも銃を持つと人が変わってしまう」

ガチャガチャ

弾切れのようだ。

「取り押さえろ! 」

執事たちが取り囲む。

「確保! 」

「王子? お前と言う奴は! 」

「あれ父上? いつの間に。ははは…… 」

「馬鹿者! 二度と銃を手にするでない! 分かったな? 」

「はい…… 」

「そうでなければこの屋敷から出て行ってもらう! 」

「うわああ! それは困ります」

「自業自得ではないか」

「すみません。もう二度としません」

「ふう一件落着か。これでしばらくは大丈夫であろう」

国王の白髪が一気に増えた。

「さあステーテル。気を取り直して食事にしよう」

マイペースの国王。

後始末を執事に任せ歩き出す。

ようやく落ち着く事ができた。

もう少しで王が凶弾に倒れるところだった。巻き込まれてもおかしくなかった。

危ない危ない。本当に危なかった。


翌日。

謁見の間に第一王子と共に呼ばれる。

「昨日は大変だったな。バカ息子にはきつく叱ってある。許してやってくれ」

「はあ…… 」

第三王子は当分の間外出を禁じられた。監視もつけられているとのこと。

「そろそろいい知らせを聞かせて欲しいのだが」

第一王子は緊張のせいか下を向いたまま。

「ステーテルよ。どうじゃ? 考えてくれたか? 」

「それは…… 」

「何? まだはっきりせんのか? 」

「いえ。お互いに確かめております」

「では良いのだな? 」

「はい」

「王子も良いな? 」

「もちろん」

「では十日後に式を執り行う。問題ないな? 」

王子を見る。

「はい」

「うむ! それでは急いで式の準備だ」

退出。入れ代わりで執事が中へ。


部屋に戻る。

「どうしましたステーテル。王子と婚約したのですか? 」

「ええ。王様の許しを頂きました」

「それは結構なことですね。おめでとうございます」

「ガムにも苦労をかけましたね」

「ステーテル…… 後は当日まで何もなければいいのですが」

「ガム? 」

「だって前回。土壇場でお逃げになったではないですか」

「そんなこともありましたっけ? 」

「とぼけるおつもりですか? 」

「もうガムったら。意地悪なんだから」

「何にせよ。今度は我慢してくださいよ」

「でもそれが難しいのよね。ガムにも覚えがあるでしょう? 」

『マリッジブルー』

「いえ。私はまだそのような機会に恵まれておりませんので」

「私はどうやらマリッジブルーになりやすいらしい」

「まあ心理は本人にしか分かりませんからね」

「今度は絶対大丈夫! 」

「そうですよ。深刻にならなければいい。その日までボーっとしてればいいんです」

「うーん」

「それとこの十か条は破きますか? 」

王子に求める十か条。

「もう必要ありませんよね? 幸せになるんですから」

「待って! それは捨てないで! 」

「でも今度の方はかけ離れてしまってますよ」

「理想は難しいのよね」


こうしてステーテルは第一王子の妃となった。

婚姻を結んで一年後無事に大きな赤子が生まれた。

計三人の天使を授かった。

こうしてステーテルはいつまでも幸せに暮らしましたとさ。

お終い……


「ダメ! ストップ! 」

思い描いていた幸せな未来は消えて無くなる。

「ガムちょっと」

「どうしました? この期に及んでまだ私は必要なんでしょうか? 」

「ごめんなさい」

「まさかステーテル? 」

「私…… 結婚できない! 」

「どうしました? 落ち着いてください。ステーテル! 」

「王子は優しい方です。しかしあまりにも優柔不断でイライラするんです。このまま結婚すればやがて我慢できなくなり不幸になってしまいます。だからお別れしたいの」

「ちょっと。ステーテル? 無理ですよ。今さらどうしろと? 」

「あなたは私の付き人なのですか代わりにお断りして。お願い! 」

「そんな…… 」

「これ以上は耐えられない」

「そんな深刻にならなくても。マリッジブルーなんですから。そのうち不安も消えます。ねえステーテル? 」

「ごめんなさいガム」

「どうしても? 」

「お願い! 」

「もう! 仕方がないわね」

我がままを聞き入れる。


                 続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

【完結】内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜

たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。 でもわたしは利用価値のない人間。 手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか? 少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。 生きることを諦めた女の子の話です ★異世界のゆるい設定です

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

処理中です...