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ガムとの関係
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第一王子にお呼ばれ。
トントン
ドンドン
「失礼します。何か御用でしょうか? 」
「おお。来たか。まあ座れ! 」
あれ怒っていない? どうして?
「実はな…… 」
止まってしまった? 一体どうしたのかしら?
王子の顔を見る。
いやだ…… 恥ずかしい。目が合わせられない。
「そのな…… 」
やっぱり渋い。年上も悪くないかも。
私ったらかわいいよりも男らしいがいいなんてどうかしてる。
十か条は修正しなくては。
「だからさあ…… 」
また? もじもじしてちっとも男らしくない。さっきの雄姿はどこに行ったって言うの?
「あのう王子様。それで御用とは何でしょうか? 」
「うーん」
長考を始める。
爺さんなのかしら?
「あのはっきりしてください! 用があるなら早くお願いします! 」
イライラが止まらない。
まったくもう。困ったお人。
「君は第三王子の婚約者だったな」
「ハイそうでございます。しかしまだ花嫁候補と言うだけで正確には違うんです」
王子の首に目が行く。
何て逞しいのかしら。
それ以上視線を上げない。いえ上げられない。
首に向かって話す。
「ではまだ婚約していないのだな? 」
「はい! 」
「奴は。第三王子は昼間の女性と婚姻する運びとなった。だから申し訳なく思っている」
「いえ。あなた様が謝る必要などありません」
「いやこれもけじめだ」
「とまあ前置きはこれくらいにして本題だが…… 」
また黙ってしまった。
仕方なく首に訴える。
「先をお願いします」
「君達ははこれで自由になった」
「いえ。お世話になっておりますのでご気遣いなく」
「それでだが…… 」
「それで? 」
「我が妃になってくれないか! 」
「ええっ? 冗談? 」
「冗談ではない。お主が大変気に入った。できれば早急に式をあげたい」
「急すぎます」
「ではいいのだな? 」
「それは…… 考えさせてください」
「ステーテル? 」
「申し訳ありません。用がありますのでそれでは」
立ち上がろうとすると腕を掴まれる。
強引なんだから。
「待ってくれ! ステーテル! 」
引き止めを無視して挨拶もせずに退出する。
ガムの元へ。
ガムは何かを悟ったのか優しく抱き寄せてくれた。
私よりも恋愛経験の豊富なお姉さん。
夜になるとなぜか態度が変わる。珍しいタイプのガム。
「お姉さま! 」
「あらステーテル。困りごとかしら」
笑みを湛える。
「いらっしゃい」
ガムのベットに潜り込む。
「お姉さま。私どうしたらいいの? 」
「ステーテル。あなたの好きなようにするといいわ。私が見守っていたあげるから。ほら落ち着いた? 」
「ううん。ダメなの! 」
「もう甘えてばっかりなんだから。ほらもっと近づいて」
強く抱きしめてくれる。
「お姉さま! 」
「ステーテル! 」
「いいでしょう? 」
「ええ。いいわ」
どちらからともなく口づけを交わす。
もう一度。
「まだやるの? 」
今度は息ができないぐらい長く熱いキス。
「もうダメ! 」
「我慢して」
「だってお姉さま」
体を絡める。
「ダメよこれ以上は。いけない! 」
「お姉さま! 」
「スティ―! 」
越えてはいけないライン。
夜の間だけだって分かっている。二人が素直になれる特別な時間。
もちろん雰囲気も大事。
野宿してこうなることは無い。
今日は二人の思いが重なったに過ぎない。
「ほら顔を上げて」
「お姉さま」
「その呼び方は止めて」
二人の関係が深くなればなるほど対等になっていく。
「もうグーちゃん」
「テルったら」
二人はお互いにそう呼び合っている。
もちろん夜だけだ。
普段は口にもしない。
「ほら落ち着いたでしょう」
「グーちゃん。ありがとう」
「だったら何があったのか教えて? 王子は何とおっしゃっていたの? 」
「その…… 恥ずかしい…… 」
「分かった! 当ててあげる。王子はあなたに求婚したんでしょう」
「ううん…… うん…… 」
「どっち? 」
「うん」
「やっぱり。そんなことじゃないかと思った」
「私どうすればいいの? 」
「ふふふ…… かわいい」
「グーちゃん。からかわないでよ! 」
「拗ねなくてもいいじゃない。テルは幸せ者よ」
「そうかなあ…… 」
「テルはどう? 好き? 嫌い? どちらでもない? 」
「ええっと…… 分からない! 」
「嘘! 」
「信じてよグーちゃん」
「ううん」
首を振るガム。
「本当は好きなんでしょう? 」
「私が? 誰を? 」
「第一王子を! 」
「そんなあ…… 」
「だからすごく悩んでるんでしょう? 」
「うん。どうしよう? 」
「いいんじゃない。乗り換えたらいいの」
「でも私の十か条からはかけ離れているしなあ…… 」
「それが何? 」
「でもこれだけは譲れないよ」
「おっさんだから嫌だとか年上は嫌とか渋いのは困るとかそんなの些細なことでしょう」
納得しそうになる。
「でも第一王子だよ」
「それが何だって言うの! 」
「争いが勃発するのは嫌! 嫌いなのそう言うの」
「我がままなんだから」
話は平行線のまま。
「もう分かった。戦乱の世に身を置きたくない気持ち痛い程分かる。でも戦うの! 戦ってでしか見えないものがあるの! 」
「グーちゃん…… 」
「もういい。話はこれでお終い。もう眠いでしょう。さあおやすみなさい」
「うん。おやすみ」
抱き着くのは止めて手をつなぐにとどめた。
続く
トントン
ドンドン
「失礼します。何か御用でしょうか? 」
「おお。来たか。まあ座れ! 」
あれ怒っていない? どうして?
「実はな…… 」
止まってしまった? 一体どうしたのかしら?
王子の顔を見る。
いやだ…… 恥ずかしい。目が合わせられない。
「そのな…… 」
やっぱり渋い。年上も悪くないかも。
私ったらかわいいよりも男らしいがいいなんてどうかしてる。
十か条は修正しなくては。
「だからさあ…… 」
また? もじもじしてちっとも男らしくない。さっきの雄姿はどこに行ったって言うの?
「あのう王子様。それで御用とは何でしょうか? 」
「うーん」
長考を始める。
爺さんなのかしら?
「あのはっきりしてください! 用があるなら早くお願いします! 」
イライラが止まらない。
まったくもう。困ったお人。
「君は第三王子の婚約者だったな」
「ハイそうでございます。しかしまだ花嫁候補と言うだけで正確には違うんです」
王子の首に目が行く。
何て逞しいのかしら。
それ以上視線を上げない。いえ上げられない。
首に向かって話す。
「ではまだ婚約していないのだな? 」
「はい! 」
「奴は。第三王子は昼間の女性と婚姻する運びとなった。だから申し訳なく思っている」
「いえ。あなた様が謝る必要などありません」
「いやこれもけじめだ」
「とまあ前置きはこれくらいにして本題だが…… 」
また黙ってしまった。
仕方なく首に訴える。
「先をお願いします」
「君達ははこれで自由になった」
「いえ。お世話になっておりますのでご気遣いなく」
「それでだが…… 」
「それで? 」
「我が妃になってくれないか! 」
「ええっ? 冗談? 」
「冗談ではない。お主が大変気に入った。できれば早急に式をあげたい」
「急すぎます」
「ではいいのだな? 」
「それは…… 考えさせてください」
「ステーテル? 」
「申し訳ありません。用がありますのでそれでは」
立ち上がろうとすると腕を掴まれる。
強引なんだから。
「待ってくれ! ステーテル! 」
引き止めを無視して挨拶もせずに退出する。
ガムの元へ。
ガムは何かを悟ったのか優しく抱き寄せてくれた。
私よりも恋愛経験の豊富なお姉さん。
夜になるとなぜか態度が変わる。珍しいタイプのガム。
「お姉さま! 」
「あらステーテル。困りごとかしら」
笑みを湛える。
「いらっしゃい」
ガムのベットに潜り込む。
「お姉さま。私どうしたらいいの? 」
「ステーテル。あなたの好きなようにするといいわ。私が見守っていたあげるから。ほら落ち着いた? 」
「ううん。ダメなの! 」
「もう甘えてばっかりなんだから。ほらもっと近づいて」
強く抱きしめてくれる。
「お姉さま! 」
「ステーテル! 」
「いいでしょう? 」
「ええ。いいわ」
どちらからともなく口づけを交わす。
もう一度。
「まだやるの? 」
今度は息ができないぐらい長く熱いキス。
「もうダメ! 」
「我慢して」
「だってお姉さま」
体を絡める。
「ダメよこれ以上は。いけない! 」
「お姉さま! 」
「スティ―! 」
越えてはいけないライン。
夜の間だけだって分かっている。二人が素直になれる特別な時間。
もちろん雰囲気も大事。
野宿してこうなることは無い。
今日は二人の思いが重なったに過ぎない。
「ほら顔を上げて」
「お姉さま」
「その呼び方は止めて」
二人の関係が深くなればなるほど対等になっていく。
「もうグーちゃん」
「テルったら」
二人はお互いにそう呼び合っている。
もちろん夜だけだ。
普段は口にもしない。
「ほら落ち着いたでしょう」
「グーちゃん。ありがとう」
「だったら何があったのか教えて? 王子は何とおっしゃっていたの? 」
「その…… 恥ずかしい…… 」
「分かった! 当ててあげる。王子はあなたに求婚したんでしょう」
「ううん…… うん…… 」
「どっち? 」
「うん」
「やっぱり。そんなことじゃないかと思った」
「私どうすればいいの? 」
「ふふふ…… かわいい」
「グーちゃん。からかわないでよ! 」
「拗ねなくてもいいじゃない。テルは幸せ者よ」
「そうかなあ…… 」
「テルはどう? 好き? 嫌い? どちらでもない? 」
「ええっと…… 分からない! 」
「嘘! 」
「信じてよグーちゃん」
「ううん」
首を振るガム。
「本当は好きなんでしょう? 」
「私が? 誰を? 」
「第一王子を! 」
「そんなあ…… 」
「だからすごく悩んでるんでしょう? 」
「うん。どうしよう? 」
「いいんじゃない。乗り換えたらいいの」
「でも私の十か条からはかけ離れているしなあ…… 」
「それが何? 」
「でもこれだけは譲れないよ」
「おっさんだから嫌だとか年上は嫌とか渋いのは困るとかそんなの些細なことでしょう」
納得しそうになる。
「でも第一王子だよ」
「それが何だって言うの! 」
「争いが勃発するのは嫌! 嫌いなのそう言うの」
「我がままなんだから」
話は平行線のまま。
「もう分かった。戦乱の世に身を置きたくない気持ち痛い程分かる。でも戦うの! 戦ってでしか見えないものがあるの! 」
「グーちゃん…… 」
「もういい。話はこれでお終い。もう眠いでしょう。さあおやすみなさい」
「うん。おやすみ」
抱き着くのは止めて手をつなぐにとどめた。
続く
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