10 / 124
追手
しおりを挟む
がくがく
がくがく
王子と二人きり。
「どうしたんですか王子? 」
「済まないが黙っていてくれないか。今は何も考えられない」
ボンクラ王子に笑みと余裕が消えた。これが本来の王子?
「説明してください! でなければ言いふらしますよ」
「ステーテル! 」
「王子を見損ないました。まさか子供までいたなんて。でもご安心ください。あなたの意思は尊重します」
「うん? どういうことだ」
「ですからお二人。いえ赤ん坊も含め三人仲良く末永くお幸せに」
「待て! 聞いてくれ! 」
取り乱す王子。
今までちやほやされていい思いをしたのだ。いい気味じゃない。
こんな王子は最低。
「どうするおつもりですか王子? 」
「いや自分では決められない。どうすればよい? 」
自分では決められないんだから本当に呆れてしまう。
「だからあの女性と結婚すればいいでしょう」
「しかし位が。身分が…… 」
この国のルールでは子を授かった二人は自動的に結婚しなければならずそれは王家も守らねばならない。王子と言えど例外は認められていない。
一夫一婦制が基本。
これはどの国でも共通のルール。
まず婚姻をし子を産む。
これが昔ながらのやり方。
最近では疑問に思う国民も少なくないが古くて頭の固い現国王の元では変わることは無く次世代に引き継がれていくだろうと言われている。
もちろん国王も他に愛人がいるなどと噂されることのないお人で国民からも人気が高い。
一夫多妻などもっての外。
ハーレムなど論外。
もちろん陰でこっそりお盛んな奴もいるがそれは例外中の例外。
国は民に課すが民を裏切るようなことはしない。
国王が守らずに誰が守ると言うのだ。
それが国王制。
子を守るため。
国民の幸せのためである。
とまあガムの話は続くのだがどこから仕入れた情報なのか信用に値するのか?
「王子はどうするおつもりですか? 」
「だからそれをお前に問うているのではないか」
上からの態度。頭に来る。
「ではお答えしましょう」
王子のすがるような眼が向けられる。
「王子はやはりあの女性と結婚すべきです」
「はっきり言ったな。よし我も王子である。従うとしよう」
結局決められずに言われるまま受け入れる。
ちょっとだけほんのちょっとだけかわいいと思ってしまった。
情けなさよりもかわいさが勝るなんてさすがは王子。
「では私はこれで失礼します」
王子に別れを告げる。
もう二度と会うことはないだろう。
さあ旅支度を始めなければ。
もうガムったらどこに行ったのよ!
ガム帰還せず。
何かあったのかしら?
ざわざわ!
ざわざわ!
外が騒がしい。
もう陽もくれると言うのに…… まさか晩餐会の準備かしら。
様子を見に行ってみる。
執事の姿がある。
何か不穏な空気。どうしたのかしら。
「ステーテル様。こんなところにいらしたんですか探したんですよ」
そうだった。お付の者を一人借りていたのだった。
まあ館は危険が無いのだから単独行動も許されている。
迷った時には役に立ちそうだけどもう慣れて来たし……
「何を騒いでらっしゃるの? 」
「それが…… ニーチャット国の者だとか。人を探しているようですよ」
ニ―チャット? まずい…… もう追手が来るとは想定外。
はやく逃げなければ。
「いいですか。そのような方はここにはおりません。お引き取り下さい」
執事が対応する。
「本当だな? 」
「はい」
「後で分かって関係が悪化してもいいのか? 」
追手の男に見覚えがある。ニ―チャット王子の専属部隊。
確か名前は二―ドルフ?
しつこいんだから。
王子の婚約者に求婚してくる人がどこにいるのかしら。
王子のプライドを傷つけたのは間違いないけれど。あの男だって王子を裏切っているじゃない。
本当にしつこい。まさか王命でもなく勝手に探し回っているのではないかしら?
あの蛇のような執念深さが気持ち悪い。
舌なめずりするあの感じとかも生理的に無理。
顔も体つきも悪くないのに女癖だけはどうにもならない。
ああ。近づかないで!
「では本当に良いのだな? 」
「ええ。お帰り下さい」
「分かった。ではこのニードルフ伝えるとしよう」
しつこいニードルフの追跡をかわすことに成功。
だがそこにガムが……
続く
がくがく
王子と二人きり。
「どうしたんですか王子? 」
「済まないが黙っていてくれないか。今は何も考えられない」
ボンクラ王子に笑みと余裕が消えた。これが本来の王子?
「説明してください! でなければ言いふらしますよ」
「ステーテル! 」
「王子を見損ないました。まさか子供までいたなんて。でもご安心ください。あなたの意思は尊重します」
「うん? どういうことだ」
「ですからお二人。いえ赤ん坊も含め三人仲良く末永くお幸せに」
「待て! 聞いてくれ! 」
取り乱す王子。
今までちやほやされていい思いをしたのだ。いい気味じゃない。
こんな王子は最低。
「どうするおつもりですか王子? 」
「いや自分では決められない。どうすればよい? 」
自分では決められないんだから本当に呆れてしまう。
「だからあの女性と結婚すればいいでしょう」
「しかし位が。身分が…… 」
この国のルールでは子を授かった二人は自動的に結婚しなければならずそれは王家も守らねばならない。王子と言えど例外は認められていない。
一夫一婦制が基本。
これはどの国でも共通のルール。
まず婚姻をし子を産む。
これが昔ながらのやり方。
最近では疑問に思う国民も少なくないが古くて頭の固い現国王の元では変わることは無く次世代に引き継がれていくだろうと言われている。
もちろん国王も他に愛人がいるなどと噂されることのないお人で国民からも人気が高い。
一夫多妻などもっての外。
ハーレムなど論外。
もちろん陰でこっそりお盛んな奴もいるがそれは例外中の例外。
国は民に課すが民を裏切るようなことはしない。
国王が守らずに誰が守ると言うのだ。
それが国王制。
子を守るため。
国民の幸せのためである。
とまあガムの話は続くのだがどこから仕入れた情報なのか信用に値するのか?
「王子はどうするおつもりですか? 」
「だからそれをお前に問うているのではないか」
上からの態度。頭に来る。
「ではお答えしましょう」
王子のすがるような眼が向けられる。
「王子はやはりあの女性と結婚すべきです」
「はっきり言ったな。よし我も王子である。従うとしよう」
結局決められずに言われるまま受け入れる。
ちょっとだけほんのちょっとだけかわいいと思ってしまった。
情けなさよりもかわいさが勝るなんてさすがは王子。
「では私はこれで失礼します」
王子に別れを告げる。
もう二度と会うことはないだろう。
さあ旅支度を始めなければ。
もうガムったらどこに行ったのよ!
ガム帰還せず。
何かあったのかしら?
ざわざわ!
ざわざわ!
外が騒がしい。
もう陽もくれると言うのに…… まさか晩餐会の準備かしら。
様子を見に行ってみる。
執事の姿がある。
何か不穏な空気。どうしたのかしら。
「ステーテル様。こんなところにいらしたんですか探したんですよ」
そうだった。お付の者を一人借りていたのだった。
まあ館は危険が無いのだから単独行動も許されている。
迷った時には役に立ちそうだけどもう慣れて来たし……
「何を騒いでらっしゃるの? 」
「それが…… ニーチャット国の者だとか。人を探しているようですよ」
ニ―チャット? まずい…… もう追手が来るとは想定外。
はやく逃げなければ。
「いいですか。そのような方はここにはおりません。お引き取り下さい」
執事が対応する。
「本当だな? 」
「はい」
「後で分かって関係が悪化してもいいのか? 」
追手の男に見覚えがある。ニ―チャット王子の専属部隊。
確か名前は二―ドルフ?
しつこいんだから。
王子の婚約者に求婚してくる人がどこにいるのかしら。
王子のプライドを傷つけたのは間違いないけれど。あの男だって王子を裏切っているじゃない。
本当にしつこい。まさか王命でもなく勝手に探し回っているのではないかしら?
あの蛇のような執念深さが気持ち悪い。
舌なめずりするあの感じとかも生理的に無理。
顔も体つきも悪くないのに女癖だけはどうにもならない。
ああ。近づかないで!
「では本当に良いのだな? 」
「ええ。お帰り下さい」
「分かった。ではこのニードルフ伝えるとしよう」
しつこいニードルフの追跡をかわすことに成功。
だがそこにガムが……
続く
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる