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消えたガム
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王子への興味が薄れる。
あーあ。今回は失敗だったかな……
「待たれよ! 」
館の者に止められる。
「申し訳ありません。急いでおりますので」
ガムが走ってきた。
「もう勝手なことしないでください」
「だって…… 」
「待ってくれ! 君は私の理想の女性だ。どうかとどまってくれ」
どうやら王子の正体が分かった。
浮気癖の有るボンクラ王子。
反吐が出る。
「どうした? 」
「ボンクラ…… いえ王子! 私は王子様には相応しくありません。どうぞサンテール様とお幸せにおなり下さい」
「何? どういうことだ? 」
「噂は聞いております」
「ちょっと待て! 確かに彼女は美しい。我が妃にふさわしい。そう思っていた。だがそれは君に会うまでだ。お願いだ。ここに留まってくれ! 」
今更何を言われたところで気が変わる訳でもない。
王子も退くつもりはないようだ。
ガムがド・ラボーなどと余計なことを言わなければただの村娘として目をつけられることはなかったのに。もう本当に面倒くさい。
「王子様無理を言わないでください! 私はただの村娘です」
「ははは! 何を言う! 立派なド・ラボーではないか」
優柔不断の王子に絶好の選択の機会を与えてしまった。
ド・ラボーはこの国には存在しない。幻の存在。
王子が食いつかないはずがないのだ。
ヒット!
王子をゲット。
あーあ。面倒くさい。
「しかし王子様」
執事が間に入る。
「サンテール様はどういたしましょう? 」
「そうだな。花嫁候補としよう」
「よしこれより花嫁候補二人による最終テストに移る」
「あの私は辞退…… 」
ガムが睨む。
ええっ? どうしてなのガム?
「明日から一週間でどちらが王子にふさわしいか決める。それで文句ないな二人とも? 」
「大変光栄でございます」
王子の機嫌を損なわぬように従う。
「よし。では一週間ほどここに滞在してくれ」
部屋を用意される。
「ふふふ…… ではまた明日。楽しみにしてるよステーテル」
王子は去りようやく落ち着いた。
「げえ! 気持ち悪い! 」
「ステーテル! そのやる気の無さは何ですか! 」
「だって…… あの王子様優柔不断なんだもの」
「いいですか。我々は追われているんですよ? 」
ふんふん。
「守ってもらうにはちょうどいいではないですか」
「あの王子に? 」
「いえ。そのお抱えの者にですよ」
聡明なガム。
それだけではなさそうだが……
「確かにそうだけどさ」
「追われている身だと言うことをお忘れなく」
「はいはい」
「それに何かと旅ではお金がかかります。ただで泊めて頂けるなんて何と幸運。感謝すべきです」
やっぱりそっちか。
「ステーテルが王子と一緒になるのが一番なんですけどね」
「うーん。顔は最高なんだけどさ。やっぱり情けない感じがして嫌なの」
「黙りなさい! 十か条には確かありませんでしたよね」
ガムに叱られた。
「加えようかしら」
「なりません! ワガママは許しません! 」
「さあもう寝ましょう。明日からが楽しみですね」
もう。ガムの分からず屋!
もう口もきいてあげないんだから。
翌日。
「あれガム? ガム! 」
朝起きるとガムが姿を消していた。どこに行ってしまったのだろう?
この私を置いていくなんてなんて無責任なんでしょう。
ああそれにしてもこのふかふかのベット。やっぱりこうでなくちゃ。もうひと眠りしようかしら。
トントン。
ドアが叩かれた。
「誰? ガム? 」
「これは失礼しました。お食事の用意ができております」
そうか…… あの王子と食事を……
ああ。嫌だな。
「あれ王子様は? 」
テーブルにはすでに料理が並んでいる。今すぐ手をつけたいが肝心の王子がいない。
「王子はサンテール様と狩りに出ております」
ああ先を越された。
サンテールの一歩リード。
「あらこれは一大事。どうしましょう? 」
慌てるふりをする。
「残念だわ…… 伝えてくださらない? 」
「はい」
これですぐに追い出されることは無いでしょう。
私って頭いい。
見てるガム? 私の演技力を? ガム?
「頂きます! 」
ご馳走を平らげる。
うーん。美味しかった。
さあこの後どうしましょう? まさか執事に聞くわけにもいかない。
まあ散歩でもするしかないわね。
外へ。
ガムが居ないのでメイドの者をつけてもらう。
さあのんびりしようっと。
ドン!
銃声が響いた。
続く
あーあ。今回は失敗だったかな……
「待たれよ! 」
館の者に止められる。
「申し訳ありません。急いでおりますので」
ガムが走ってきた。
「もう勝手なことしないでください」
「だって…… 」
「待ってくれ! 君は私の理想の女性だ。どうかとどまってくれ」
どうやら王子の正体が分かった。
浮気癖の有るボンクラ王子。
反吐が出る。
「どうした? 」
「ボンクラ…… いえ王子! 私は王子様には相応しくありません。どうぞサンテール様とお幸せにおなり下さい」
「何? どういうことだ? 」
「噂は聞いております」
「ちょっと待て! 確かに彼女は美しい。我が妃にふさわしい。そう思っていた。だがそれは君に会うまでだ。お願いだ。ここに留まってくれ! 」
今更何を言われたところで気が変わる訳でもない。
王子も退くつもりはないようだ。
ガムがド・ラボーなどと余計なことを言わなければただの村娘として目をつけられることはなかったのに。もう本当に面倒くさい。
「王子様無理を言わないでください! 私はただの村娘です」
「ははは! 何を言う! 立派なド・ラボーではないか」
優柔不断の王子に絶好の選択の機会を与えてしまった。
ド・ラボーはこの国には存在しない。幻の存在。
王子が食いつかないはずがないのだ。
ヒット!
王子をゲット。
あーあ。面倒くさい。
「しかし王子様」
執事が間に入る。
「サンテール様はどういたしましょう? 」
「そうだな。花嫁候補としよう」
「よしこれより花嫁候補二人による最終テストに移る」
「あの私は辞退…… 」
ガムが睨む。
ええっ? どうしてなのガム?
「明日から一週間でどちらが王子にふさわしいか決める。それで文句ないな二人とも? 」
「大変光栄でございます」
王子の機嫌を損なわぬように従う。
「よし。では一週間ほどここに滞在してくれ」
部屋を用意される。
「ふふふ…… ではまた明日。楽しみにしてるよステーテル」
王子は去りようやく落ち着いた。
「げえ! 気持ち悪い! 」
「ステーテル! そのやる気の無さは何ですか! 」
「だって…… あの王子様優柔不断なんだもの」
「いいですか。我々は追われているんですよ? 」
ふんふん。
「守ってもらうにはちょうどいいではないですか」
「あの王子に? 」
「いえ。そのお抱えの者にですよ」
聡明なガム。
それだけではなさそうだが……
「確かにそうだけどさ」
「追われている身だと言うことをお忘れなく」
「はいはい」
「それに何かと旅ではお金がかかります。ただで泊めて頂けるなんて何と幸運。感謝すべきです」
やっぱりそっちか。
「ステーテルが王子と一緒になるのが一番なんですけどね」
「うーん。顔は最高なんだけどさ。やっぱり情けない感じがして嫌なの」
「黙りなさい! 十か条には確かありませんでしたよね」
ガムに叱られた。
「加えようかしら」
「なりません! ワガママは許しません! 」
「さあもう寝ましょう。明日からが楽しみですね」
もう。ガムの分からず屋!
もう口もきいてあげないんだから。
翌日。
「あれガム? ガム! 」
朝起きるとガムが姿を消していた。どこに行ってしまったのだろう?
この私を置いていくなんてなんて無責任なんでしょう。
ああそれにしてもこのふかふかのベット。やっぱりこうでなくちゃ。もうひと眠りしようかしら。
トントン。
ドアが叩かれた。
「誰? ガム? 」
「これは失礼しました。お食事の用意ができております」
そうか…… あの王子と食事を……
ああ。嫌だな。
「あれ王子様は? 」
テーブルにはすでに料理が並んでいる。今すぐ手をつけたいが肝心の王子がいない。
「王子はサンテール様と狩りに出ております」
ああ先を越された。
サンテールの一歩リード。
「あらこれは一大事。どうしましょう? 」
慌てるふりをする。
「残念だわ…… 伝えてくださらない? 」
「はい」
これですぐに追い出されることは無いでしょう。
私って頭いい。
見てるガム? 私の演技力を? ガム?
「頂きます! 」
ご馳走を平らげる。
うーん。美味しかった。
さあこの後どうしましょう? まさか執事に聞くわけにもいかない。
まあ散歩でもするしかないわね。
外へ。
ガムが居ないのでメイドの者をつけてもらう。
さあのんびりしようっと。
ドン!
銃声が響いた。
続く
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