ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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王子様登場

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「あなた本当にその格好でよろしくて? 」

今度は親切心から指摘してくれる。

「王子の前なのよ! 」

「分かってる! 」

「分かってないじゃない! いい? 地味過ぎるでしょう。それにその色も良くない。それから…… 」

まだあると言うのかしら。

「決定的なのはその服。それ事体が変」

「そうかしら? 」

「まさか既製品なんじゃ? 」

「ええ。近くのドレスショップで買いました。結構高かったんだから」

「やっぱり」

彼女は頭を抱える。

「いい? ここにおられる方は皆さんオーダーメイド。私だってそう。これくらい常識よ! 」

確かに全然物が違う。比べれば一目瞭然。

ああ…… 恥ずかしい。でも仕方がない。

一方的に王子を振ったが為に追われる身。お金はない。

ガムがもう少し指摘してくれたらよかったんだけど。

とりあえずお腹を満たしましょう。

美味しそうなお肉。

「ダメです! 」

ガムが止める。

ドレスの中はコルセットを装着している。なるべくスタイルを良く見せるためにガムが用意してくれたもの。

「お控えください。苦しくなりますよ」

「はいはい」

「えっとこれでしょう。それから…… 」

久しぶりに食べる本当のご馳走。腹が鳴ってしょうがない。

うふふ……
 
笑ってごまかそうとするが効果が無い。

ついには皿を取り上げられてしまった。

まあこんなものちょっと前までは好きなだけ食べていたんだから。でも今となっては大変なご馳走。もったいない。


バンバン

手を叩く音が響き渡る。

「ええ静粛に。王子のご登場です」

ようやく本番が始まったようだ。今までのは全て余興に過ぎない。

王子争奪戦開始。

「王子さま! 」

「お願いこちらを向いてください! 」

歓声にこたえる王子。

王子は優しい。見た目も良い。でもやはり欠点がある。

「どうした? 楽しんでおらんようだが? 」

朝、招待したこともあって王子はステーテルのことを気にかけてくれる。

「おお。いいではないか。そのドレス。シックでセンスが良いな」

褒められると固まってしまう。


「どこの村娘か? おお。何と美しい瞳」

黄色の混じった藍の瞳を褒め称える。

「私は…… 」

何も出てこない。

「失礼いたします」

ガムが間に入る。

「無礼者! 」

「申し訳ございません。これ以上殿方との接触は許されません」

「何を言っておる? 我は王子。この…… うん、そなたはまさか? 」

「はい。ガムでございます。このステーテル様の付き人をやらせてもらっています」

「まさか…… するとこの娘はド・ラボー? 」

王子の目の色が変わる。

ド・ラボーは貴重。大変珍しいのだ。

「王子様! お願いです。私を! 私を! お選びください」

「私も私も! 」

「私だって! 私は王子様のものです」

良家の娘たちが騒ぎ始めた。

パーティーは定期的に行われており参加者の中には顔なじみの者も少なくない。

王子は優柔不断でどの娘にするか迷いがある。

こうして会を重ねても余計に混乱してしまうダメな王子。

まあこのぐらいは我慢しなくては。

条件はクリアしているわけだから。

「王子様! 」

「きゃあ! きゃあ! 」

「私をお選びになって! 」

王子様争奪戦は激化するばかり。

「ちょっとよろしですか王子様? 」

サンテールが前に出る。

「王子ご決断を! このままでは私はおろか彼女たちを苦しめてしまいます。もうよろしいのではないでしょうか? 」

「うーん。もう少し慎重に行きたいのだが」

ダメだこりゃ。

決断力が無い。判断力もない。これではこの先やっていけないだろう。

一抜け。

肉と魚を中心に食べられるだけ食べて館を出て行くことにする。

ガムが必死に止めようとするが無視。もう王子から興味が完全に失せた。

誰が結婚してやるものですか。

次はどこに向かおうかな……

腹を満たし帰り支度。

がやがや
ぎゃあぎゃあ

「それでは王子様ごきげんよう」

挨拶を済ませ館を出る。

                    続く
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