3 / 124
王子様発見
しおりを挟む
サーチャット。
「ねえガム。私、お腹が空いてしまったわ」
「そうですね。どこかでお食事にしましょうか」
ガムは辺りを見回す。
「あそこはどうですか? 」
すぐに探し出してくれる。
「そうね。でもあそこはうるさくありませんこと? 」
酒場。
確かに何かは出してくれるだろう。しかし上品な私には決して居心地がいいとは言えない。
「我慢してください。開いている店はここぐらいのものです」
「いや! 私には相応しくない」
「それはそうですけど…… ワガママ言える立場ですか? 」
「そうだけど…… 」
渋々中へ。
「いらっしゃい。これはお美しいご婦人方」
マスターのお世辞。
そこいらの醜いご婦人にも同様のお世辞を言うのか悪気はない。
うおおお!
男たちの関心がこちらに向いてしまう。
ガムも私と比べれば劣るだけで品もあり頭もいい。
「どちらでもいい。こっちに来て酌をしてくれんか」
酔っぱらいのおじ様たちのお相手は面倒だ。
「失礼。旅の人。どこから来たんだい? 」
スマートな老紳士が話しかけてきた。
ガムが応対する。
「ニーチャットから参りました。国王の謁見は叶わないでしょうか? 」
「ならば明日の朝にでもここに行くといい」
親切にも地図を書いてくれた。
「いいかい。遅れないでくれ。朝七時きっかりだよ」
そう言うと笑顔を見せどこかへ行ってしまった。
うまくいった。
食事を終え宿を探す。
INNの看板が見えた。
今夜はうまくいっている。
この後もこの調子ならいいんだけどなあ。
翌日。サーチャット二日目。
紳士の言に従い朝の七時に指定された場所に赴いた。
「へい。お嬢さんたち俺と一緒に旅をしないか? 」
甘いルックスの男。名前をタレイと言った。
背も高くすらっとしているが痩せ過ぎである。いわゆる遊び人。
「なあ行こうぜ! 」
信用度は一パーセントぐらいだろうか。
あまり真面目に相手してやる男でもない。
無視して歩き出す。
「ちぇ! 待てよ! 」
「おい! 何をやっている! 」
しつこい男に罰が下る。
「朝っぱらからだらしない奴だな! 」
「これはこれは」
「少しは時と場所を弁えろ! 」
「王子様ほどの力があれば私もこのようなこと」
「あの…… 」
「これは失礼しました」
ガムが紹介する。
「私はガム。こちらのステーテルのお付をしています」
「そうか。私はこの国の王子である。今は忙しい。もしよろしかったら今夜にでもお出で下さい」
そう言うとタレイを引っ張っていった。
目的は果たした。
どうやら老紳士は王子を待てと言うことだったようだ。
「さあ上手く行ったことだしゆっくりと歩き回りましょうか」
「ステーテル! ダメですよ。つまみ食いはいけません」
「分かってるわよ。でもちょっとだけ」
甘い匂いに釣られてフラフラとする。
ようこそサーチャットへ。
「これは今朝上がった物。新鮮よ。食べて行ってちょうだいな」
この辺りは港が近く新鮮な魚介類が豊富に取れるのだとか。
「ほらこれなんかどう? 」
強烈な匂いと激しい呼び込みで落ちそうになる。
いけない。私はド・ラボーなのよ。こんな庶民の物を食べる訳にはいかない。
「食べるのかい? 」
「うん」
「買うのかい? 」
「はい」
「よし毎度あり」
押しの強いおばちゃんに押し切られえる。
すかさずガムが割り込む。
「何をやってるんですか! ステーテル! 」
「だって…… 」
「いいですか。これは私が全て頂きます。ステーテルは身分を弁えてください」
「ガムさん。少しぐらいよろしくて? 」
「なりません! 」
「お腹がすきました」
「ですからちゃんとしたところでお食事を」
「お金はあるの? 」
「それはもちろん」
ドルン金貨を十枚見せる。
一ヶ月分は賄える。
「ならばよろしい」
ガムはレストランを探す。
ドルンは共通通貨で全国どこでも使えるのが利点。
銀貨と金貨の二種類がある。金貨は銀貨十枚の価値がある。現在銀貨はその価値を下げつつある。
ガムに任せましょう。
町外れのレストランで落ち着く。
続く
「ねえガム。私、お腹が空いてしまったわ」
「そうですね。どこかでお食事にしましょうか」
ガムは辺りを見回す。
「あそこはどうですか? 」
すぐに探し出してくれる。
「そうね。でもあそこはうるさくありませんこと? 」
酒場。
確かに何かは出してくれるだろう。しかし上品な私には決して居心地がいいとは言えない。
「我慢してください。開いている店はここぐらいのものです」
「いや! 私には相応しくない」
「それはそうですけど…… ワガママ言える立場ですか? 」
「そうだけど…… 」
渋々中へ。
「いらっしゃい。これはお美しいご婦人方」
マスターのお世辞。
そこいらの醜いご婦人にも同様のお世辞を言うのか悪気はない。
うおおお!
男たちの関心がこちらに向いてしまう。
ガムも私と比べれば劣るだけで品もあり頭もいい。
「どちらでもいい。こっちに来て酌をしてくれんか」
酔っぱらいのおじ様たちのお相手は面倒だ。
「失礼。旅の人。どこから来たんだい? 」
スマートな老紳士が話しかけてきた。
ガムが応対する。
「ニーチャットから参りました。国王の謁見は叶わないでしょうか? 」
「ならば明日の朝にでもここに行くといい」
親切にも地図を書いてくれた。
「いいかい。遅れないでくれ。朝七時きっかりだよ」
そう言うと笑顔を見せどこかへ行ってしまった。
うまくいった。
食事を終え宿を探す。
INNの看板が見えた。
今夜はうまくいっている。
この後もこの調子ならいいんだけどなあ。
翌日。サーチャット二日目。
紳士の言に従い朝の七時に指定された場所に赴いた。
「へい。お嬢さんたち俺と一緒に旅をしないか? 」
甘いルックスの男。名前をタレイと言った。
背も高くすらっとしているが痩せ過ぎである。いわゆる遊び人。
「なあ行こうぜ! 」
信用度は一パーセントぐらいだろうか。
あまり真面目に相手してやる男でもない。
無視して歩き出す。
「ちぇ! 待てよ! 」
「おい! 何をやっている! 」
しつこい男に罰が下る。
「朝っぱらからだらしない奴だな! 」
「これはこれは」
「少しは時と場所を弁えろ! 」
「王子様ほどの力があれば私もこのようなこと」
「あの…… 」
「これは失礼しました」
ガムが紹介する。
「私はガム。こちらのステーテルのお付をしています」
「そうか。私はこの国の王子である。今は忙しい。もしよろしかったら今夜にでもお出で下さい」
そう言うとタレイを引っ張っていった。
目的は果たした。
どうやら老紳士は王子を待てと言うことだったようだ。
「さあ上手く行ったことだしゆっくりと歩き回りましょうか」
「ステーテル! ダメですよ。つまみ食いはいけません」
「分かってるわよ。でもちょっとだけ」
甘い匂いに釣られてフラフラとする。
ようこそサーチャットへ。
「これは今朝上がった物。新鮮よ。食べて行ってちょうだいな」
この辺りは港が近く新鮮な魚介類が豊富に取れるのだとか。
「ほらこれなんかどう? 」
強烈な匂いと激しい呼び込みで落ちそうになる。
いけない。私はド・ラボーなのよ。こんな庶民の物を食べる訳にはいかない。
「食べるのかい? 」
「うん」
「買うのかい? 」
「はい」
「よし毎度あり」
押しの強いおばちゃんに押し切られえる。
すかさずガムが割り込む。
「何をやってるんですか! ステーテル! 」
「だって…… 」
「いいですか。これは私が全て頂きます。ステーテルは身分を弁えてください」
「ガムさん。少しぐらいよろしくて? 」
「なりません! 」
「お腹がすきました」
「ですからちゃんとしたところでお食事を」
「お金はあるの? 」
「それはもちろん」
ドルン金貨を十枚見せる。
一ヶ月分は賄える。
「ならばよろしい」
ガムはレストランを探す。
ドルンは共通通貨で全国どこでも使えるのが利点。
銀貨と金貨の二種類がある。金貨は銀貨十枚の価値がある。現在銀貨はその価値を下げつつある。
ガムに任せましょう。
町外れのレストランで落ち着く。
続く
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる