夏への招待状 失われた記憶と消えゆく少女たち 無人島脱出お宝大作戦

二廻歩

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アイミとムーちゃん 消えゆく少女たちの物語 <完>

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アイミとムーちゃん。
別れの儀式。

緊張と興奮で我を失う。

そうだよ。俺は彼女たちを求めていたじゃないか。
「もう…… 好きにしてくれ」
俺は自分に正直でありたい。
「もういいんだ…… 」
鉄壁のガードを突破される。

「もうゲンジさん。だめ! 強すぎる」
「次は私の番。ほらゲンジ! 大人しくしていてね」
アイミの熱が伝わる。

「どう? 」
「ああ。気持ちいいよ」
「我慢してたんだ? 」
「ああ。もうどうにもならない。我慢の限界だ! 」
「きゃあ! ゲンジったら 」
アイミが騒ぎ立てる。

ムーちゃんを一人の女性として認識。
「ゲンジさん嬉しい! 」
果てる。

間髪入れずにアイミを抱きしめる。
「済まないアイミ! 俺が間違っていた」
「ゲンジ! 」
彼女の思いに応える。
それが決死の覚悟で臨んだ彼女のいや彼女たちに対する最低限の礼儀であり、かつてないほど燃えた愛の形である。

彼女たちの願いは叶えた。
でもこんなはずでは……
どこで間違えたんだ?
なぜ止めることができなかった?
一時の欲にやられた。
確かに刹那に生きてこそ男と言うものだが……
余りにも代償が大きすぎる。
一気に二人を失ってしまうとは……
愚かしい。
後悔しても後悔しきれない。

「うおおお! 」

「ごめんねゲンジ」
「ゲンジさん。ありがとう」
二人は姿を消した。

姿が見えなくなり二人の声だけが幽かに聞こえる。
その声も遠ざかって行き、ついには失われていった。

俺は正しかったのか?
間違っていたのか?
「うおおお! 」
「アイミ! 」
「ムーちゃん! 」
絶望の中、迷宮を彷徨い続けた。

翌日。
アダムとイブ。

「お兄ちゃん! 」
リンが駆けてきた。
俺は一体? 分からない……
「リン…… 」
「どうしたの? 」
「俺は…… どうしたらいい? 疲れたよ」
もういいか。もういいのかもしれない。

「なあアイミを覚えてるか? 」
「アイミ? 誰それ? 」
「ではムーちゃんは? 」
「ううん。分かんない」

「おかしいと思わないか? 無人島に二人きりだなんて」
「飽きちゃったのお兄ちゃん? でもリンで我慢してね」
「リン…… 」
「一緒に狩りをしたでしょう? 」
覚えがない。
リンの記憶ではそういうことになってるらしい。
「一緒に魚を釣ったよね」
「ああ。ずいぶんうまくなったな」
切り替える。その一択しか無いようだ。引きずっていてもしょうがない。

「今日はどうする? 」
「大物を狙おうよ」
リンと俺。
この島に残された男女。
それはアダムとイブであるかのように。
この島はさしずめ楽園と言ったところか。

「お兄ちゃん! 」
「リン! 」
手を取り合う。
「ははは! 」
「えへへへ! お兄ちゃん! 」
「やっぱりお兄ちゃんはよくない。せっかくだから名前で呼んでくれないか」
「ええ…… 」
リンの表情が曇った。

「無理だよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん」
「なあリン。変じゃないか? 」
「変って? 」
「俺がお兄ちゃんってどういうことだ? 」
「リンのお兄ちゃんみたいな存在だから」
「でもここには他に誰もいなかったんだろ? 」
「リン…… 子供だから…… 」

「おかしいんだよ。二人きりだとすればそんな変な呼び方をしないはずだ」
「じゃあパパ」
「なぜ名前で呼ばない! 」
「うーん。恥ずかしいよ」
「お兄ちゃんの方がよっぽど恥ずかしいぞ」
「何が言いたいのお兄ちゃん? 」
「リンは全て知っているんだろ? 」
「リンは子供だから…… 」
「その手は通用しない! 」
追及の手を緩めない。
リンならばそのうちボロが出る。そう踏んで畳みかける。

「ここには君より小さな子も大きな子もいない。何て言っても俺たち二人きりだ。
だから子供じゃないよね? リン。ほら名前で呼んでごらん」
「ゲン…… 」
口ごもる。

「やっぱり恥ずかしいよ」
「だとすれば何が考えられる? 自分で考えてみろ! 」
「リンは…… 困らせないでお兄ちゃん! 」
ついにリンが切れた。

「ほらやっぱり。君は誰だ? 」
「リンに決まってる! 」
「君が個性的なのは他に人がいたからだ。俺と二人っきりだったと言うならお兄ちゃんなどいうはずがないんだ」
「それは…… 」
ついに観念したのか黙ってしまった。

「リン。正直に答えてくれ! 」
「リンはえっと…… 」
動揺している。

そこもまた可愛いんだが。
おっとまた甘やかしてしまったか? 
非情になれ! リンは何かを知っている。

「リンは…… 」
言い訳もできないほど動揺している。
俺は困るリンを見て喜ぶ変態なのか?

「リンは覚えてるんだろ? 」
「えっと…… 他の人に…… ああっ! 」
「やっぱり覚えていたか。なぜ隠すんだ? 」
「ごめんねお兄ちゃん。知らないふりしてた」
ついにボロを出した。

「でもこれはお兄ちゃんが苦しまない為だよ」
「俺の為? 」 
「ねえ知ってる。過去に意味なんてないって。未来があるから人は生きてるんだって」
いきなりの思い出否定。
なかなかの強者。

「リンね。人よりも優れているところが一つだけあるの」
「かわいいらしいところか」
「それもそうだけど」
「おいおいここは否定するとこだぞ」

「リンね。人よりも記憶力がいいの。
何でリンは存在するのか。
何の目的でリンが存在するのか。
全て分かるし覚えてる」

「そう、お兄ちゃんの勝ちだよ」

ついに白旗を挙げた。

             【続】

アイミとムーちゃんの最期。
それを記念して裏話。

アイミは当初から決まっていた。
もともと五人の少女は姉妹にする予定だったのだが。
アミ アミミ アミ― アイミ アイイ
こんな感じにする予定だったのだが分かりづらいし間違えやすいし読みづらいと思い変更。

改めて五人を考え直した。
そういう意味ではアイミはこの物語の核。
お姉さん的な存在だったのだが他のキャラが動きすぎてアイミに光が当たらなくなった。
ちなみにアイミはAM:1のこと。
詳細はあとがきに記す。

ムーちゃんの名前は?
本名は分かりません。もともと幻だから。
名前以外のあだ名で一人やってみようと言うことで。
例 顧問 文豪 ムーちゃん
しかしやりづらかった。
真剣な場面では合わない。
あと「ムーちゃんは言った」等の言い回しがしっくりこない。

そのムーちゃんの元はと言いますと……
テレビの再放送アニメのヒロインの一人。
確かマハムンドだったかな?

以上。

最期に一言。
アイミとムーちゃんは永遠のライバル。





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