夏への招待状 失われた記憶と消えゆく少女たち 無人島脱出お宝大作戦

二廻歩

文字の大きさ
上 下
53 / 61

アイミとムーちゃん 消えゆく少女たちの物語 <完>

しおりを挟む
アイミとムーちゃん。
別れの儀式。

緊張と興奮で我を失う。

そうだよ。俺は彼女たちを求めていたじゃないか。
「もう…… 好きにしてくれ」
俺は自分に正直でありたい。
「もういいんだ…… 」
鉄壁のガードを突破される。

「もうゲンジさん。だめ! 強すぎる」
「次は私の番。ほらゲンジ! 大人しくしていてね」
アイミの熱が伝わる。

「どう? 」
「ああ。気持ちいいよ」
「我慢してたんだ? 」
「ああ。もうどうにもならない。我慢の限界だ! 」
「きゃあ! ゲンジったら 」
アイミが騒ぎ立てる。

ムーちゃんを一人の女性として認識。
「ゲンジさん嬉しい! 」
果てる。

間髪入れずにアイミを抱きしめる。
「済まないアイミ! 俺が間違っていた」
「ゲンジ! 」
彼女の思いに応える。
それが決死の覚悟で臨んだ彼女のいや彼女たちに対する最低限の礼儀であり、かつてないほど燃えた愛の形である。

彼女たちの願いは叶えた。
でもこんなはずでは……
どこで間違えたんだ?
なぜ止めることができなかった?
一時の欲にやられた。
確かに刹那に生きてこそ男と言うものだが……
余りにも代償が大きすぎる。
一気に二人を失ってしまうとは……
愚かしい。
後悔しても後悔しきれない。

「うおおお! 」

「ごめんねゲンジ」
「ゲンジさん。ありがとう」
二人は姿を消した。

姿が見えなくなり二人の声だけが幽かに聞こえる。
その声も遠ざかって行き、ついには失われていった。

俺は正しかったのか?
間違っていたのか?
「うおおお! 」
「アイミ! 」
「ムーちゃん! 」
絶望の中、迷宮を彷徨い続けた。

翌日。
アダムとイブ。

「お兄ちゃん! 」
リンが駆けてきた。
俺は一体? 分からない……
「リン…… 」
「どうしたの? 」
「俺は…… どうしたらいい? 疲れたよ」
もういいか。もういいのかもしれない。

「なあアイミを覚えてるか? 」
「アイミ? 誰それ? 」
「ではムーちゃんは? 」
「ううん。分かんない」

「おかしいと思わないか? 無人島に二人きりだなんて」
「飽きちゃったのお兄ちゃん? でもリンで我慢してね」
「リン…… 」
「一緒に狩りをしたでしょう? 」
覚えがない。
リンの記憶ではそういうことになってるらしい。
「一緒に魚を釣ったよね」
「ああ。ずいぶんうまくなったな」
切り替える。その一択しか無いようだ。引きずっていてもしょうがない。

「今日はどうする? 」
「大物を狙おうよ」
リンと俺。
この島に残された男女。
それはアダムとイブであるかのように。
この島はさしずめ楽園と言ったところか。

「お兄ちゃん! 」
「リン! 」
手を取り合う。
「ははは! 」
「えへへへ! お兄ちゃん! 」
「やっぱりお兄ちゃんはよくない。せっかくだから名前で呼んでくれないか」
「ええ…… 」
リンの表情が曇った。

「無理だよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん」
「なあリン。変じゃないか? 」
「変って? 」
「俺がお兄ちゃんってどういうことだ? 」
「リンのお兄ちゃんみたいな存在だから」
「でもここには他に誰もいなかったんだろ? 」
「リン…… 子供だから…… 」

「おかしいんだよ。二人きりだとすればそんな変な呼び方をしないはずだ」
「じゃあパパ」
「なぜ名前で呼ばない! 」
「うーん。恥ずかしいよ」
「お兄ちゃんの方がよっぽど恥ずかしいぞ」
「何が言いたいのお兄ちゃん? 」
「リンは全て知っているんだろ? 」
「リンは子供だから…… 」
「その手は通用しない! 」
追及の手を緩めない。
リンならばそのうちボロが出る。そう踏んで畳みかける。

「ここには君より小さな子も大きな子もいない。何て言っても俺たち二人きりだ。
だから子供じゃないよね? リン。ほら名前で呼んでごらん」
「ゲン…… 」
口ごもる。

「やっぱり恥ずかしいよ」
「だとすれば何が考えられる? 自分で考えてみろ! 」
「リンは…… 困らせないでお兄ちゃん! 」
ついにリンが切れた。

「ほらやっぱり。君は誰だ? 」
「リンに決まってる! 」
「君が個性的なのは他に人がいたからだ。俺と二人っきりだったと言うならお兄ちゃんなどいうはずがないんだ」
「それは…… 」
ついに観念したのか黙ってしまった。

「リン。正直に答えてくれ! 」
「リンはえっと…… 」
動揺している。

そこもまた可愛いんだが。
おっとまた甘やかしてしまったか? 
非情になれ! リンは何かを知っている。

「リンは…… 」
言い訳もできないほど動揺している。
俺は困るリンを見て喜ぶ変態なのか?

「リンは覚えてるんだろ? 」
「えっと…… 他の人に…… ああっ! 」
「やっぱり覚えていたか。なぜ隠すんだ? 」
「ごめんねお兄ちゃん。知らないふりしてた」
ついにボロを出した。

「でもこれはお兄ちゃんが苦しまない為だよ」
「俺の為? 」 
「ねえ知ってる。過去に意味なんてないって。未来があるから人は生きてるんだって」
いきなりの思い出否定。
なかなかの強者。

「リンね。人よりも優れているところが一つだけあるの」
「かわいいらしいところか」
「それもそうだけど」
「おいおいここは否定するとこだぞ」

「リンね。人よりも記憶力がいいの。
何でリンは存在するのか。
何の目的でリンが存在するのか。
全て分かるし覚えてる」

「そう、お兄ちゃんの勝ちだよ」

ついに白旗を挙げた。

             【続】

アイミとムーちゃんの最期。
それを記念して裏話。

アイミは当初から決まっていた。
もともと五人の少女は姉妹にする予定だったのだが。
アミ アミミ アミ― アイミ アイイ
こんな感じにする予定だったのだが分かりづらいし間違えやすいし読みづらいと思い変更。

改めて五人を考え直した。
そういう意味ではアイミはこの物語の核。
お姉さん的な存在だったのだが他のキャラが動きすぎてアイミに光が当たらなくなった。
ちなみにアイミはAM:1のこと。
詳細はあとがきに記す。

ムーちゃんの名前は?
本名は分かりません。もともと幻だから。
名前以外のあだ名で一人やってみようと言うことで。
例 顧問 文豪 ムーちゃん
しかしやりづらかった。
真剣な場面では合わない。
あと「ムーちゃんは言った」等の言い回しがしっくりこない。

そのムーちゃんの元はと言いますと……
テレビの再放送アニメのヒロインの一人。
確かマハムンドだったかな?

以上。

最期に一言。
アイミとムーちゃんは永遠のライバル。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ

ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。 【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】 なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。 【登場人物】 エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。 ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。 マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。 アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。 アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。 クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。

磯村家の呪いと愛しのグランパ

しまおか
ミステリー
資産運用専門会社への就職希望の須藤大貴は、大学の同じクラスの山内楓と目黒絵美の会話を耳にし、楓が資産家である母方の祖母から十三歳の時に多額の遺産を受け取ったと知り興味を持つ。一人娘の母が亡くなり、代襲相続したからだ。そこで話に入り詳細を聞いた所、血の繋がりは無いけれど幼い頃から彼女を育てた、二人目の祖父が失踪していると聞く。また不仲な父と再婚相手に遺産を使わせないよう、祖母の遺言で楓が成人するまで祖父が弁護士を通じ遺産管理しているという。さらに祖父は、田舎の家の建物部分と一千万の現金だけ受け取り、残りは楓に渡した上で姻族終了届を出して死後離婚し、姿を消したと言うのだ。彼女は大学に無事入学したのを機に、愛しのグランパを探したいと考えていた。そこでかつて住んでいたN県の村に秘密があると思い、同じ県出身でしかも近い場所に実家がある絵美に相談していたのだ。また祖父を見つけるだけでなく、何故失踪までしたかを探らなければ解決できないと考えていた。四十年近く前に十年で磯村家とその親族が八人亡くなり、一人失踪しているという。内訳は五人が病死、三人が事故死だ。祖母の最初の夫の真之介が滑落死、その弟の光二朗も滑落死、二人の前に光二朗の妻が幼子を残し、事故死していた。複雑な経緯を聞いた大貴は、専門家に調査依頼することを提案。そこで泊という調査員に、彼女の祖父の居場所を突き止めて貰った。すると彼は多額の借金を抱え、三か所で働いていると判明。まだ過去の謎が明らかになっていない為、大貴達と泊で調査を勧めつつ様々な問題を解決しようと動く。そこから驚くべき事実が発覚する。楓とグランパの関係はどうなっていくのか!?

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

【完結】深海の歌声に誘われて

赤木さなぎ
ミステリー
突如流れ着いたおかしな風習の残る海辺の村を舞台とした、ホラー×ミステリー×和風世界観! ちょっと不思議で悲しくも神秘的な雰囲気をお楽しみください。 海からは美しい歌声が聞こえて来る。 男の意志に反して、足は海の方へと一歩、また一歩と進んで行く。 その歌声に誘われて、夜の冷たい海の底へと沈んで行く。 そして、彼女に出会った。 「あなたの願いを、叶えてあげます」 深海で出会った歌姫。 おかしな風習の残る海辺の村。 村に根付く“ヨコシマ様”という神への信仰。 点と点が線で繋がり、線と線が交差し、そして謎が紐解かれて行く。 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 短期集中掲載。毎日投稿します。 完結まで執筆済み。約十万文字程度。 人によっては苦手と感じる表現が出て来るかもしれません。ご注意ください。 暗い雰囲気、センシティブ、重い設定など。

日月神示を読み解く

あつしじゅん
ミステリー
 神からの預言書、日月神示を読み解く

「蒼緋蔵家の番犬 1~エージェントナンバーフォー~」

百門一新
ミステリー
 雪弥は、自身も知らない「蒼緋蔵家」の特殊性により、驚異的な戦闘能力を持っていた。正妻の子ではない彼は家族とは距離を置き、国家特殊機動部隊総本部のエージェント【ナンバー4】として活動している。  彼はある日「高校三年生として」学園への潜入調査を命令される。24歳の自分が未成年に……頭を抱える彼に追い打ちをかけるように、美貌の仏頂面な兄が「副当主」にすると案を出したと新たな実家問題も浮上し――!? 日本人なのに、青い目。灰色かかった髪――彼の「爪」はあらゆるもの、そして怪異さえも切り裂いた。 『蒼緋蔵家の番犬』 彼の知らないところで『エージェントナンバー4』ではなく、その実家の奇妙なキーワードが、彼自身の秘密と共に、雪弥と、雪弥の大切な家族も巻き込んでいく――。 ※「小説家になろう」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純一
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...