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追憶 空蝉のいない世界
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空蝉を失って三日。
空蝉のことは残念だった。
だが前を向かなくては。
俺には他の少女たちが残っている。
いつまでも引きずる訳にはいかない。
彼女たちを空蝉の分まで幸せにしてやればいい。
だが……
「お兄ちゃん。元気ないよ」
リンがのぞき込む。
傷心には沁みる。
「リンどうした? 」
「釣りに行こうよ! 」
リンらしくない。気を使わせてしまった。
リンもこれで成長しているのだろう。
あっちも成長してくれるといいがな……
「もう! お兄ちゃんたら」
リンが後ろを向く。
「行こうよ! 」
「待ってくれ! 空蝉を探すのが先だ」
「空蝉? 」
失踪して三日。
自分の意思で失踪したのか事故か分からないがもしかしたら助けを待っているかもしれない。できる限りのことはしたい。
「お兄ちゃん変なの」
「変? どこが? 」
「だって変なんだもん」
「そうかなあ…… 」
「空蝉って誰? 」
「おい冗談だろ? 空蝉だぞ! 」
「知らない。リン分かんない! 」
「嘘を吐くな! 一緒に遊んだじゃないか! 空蝉だ! ほら…… 仲間だろ? 」
一体どうなっている?
「リン分かんない。子供だから」
「リン! 」
「もう、お兄ちゃんがいじめる」
三日たったら忘れる。
そう言うものか。
まあリンなら有り得なくもない。
何と言っても三歩も歩けば忘れるのだから。
気にしていても仕方がない。
俺だけでも。
さざ波が聞こえる。
空蝉……
空蝉って誰だっけ?
空蝉! 空蝉! 空蝉!
あれ? おかしいな。どうしたんだ俺?
空蝉? 空蝉?
名前しか出てこない。
どんな顔かさえも思い出せない。
空蝉って誰?
空蝉? 空蝉?
まずい!
コテージに戻る。
ムーちゃんの姿が見えた。
「ゲンジさん。おっかない顔をしてどうしたんですか? 」
、いや、その…… 変なんだ」
「何がですか? 」
「空蝉が思い出せないんだ。おかしいだろ? 」
「空蝉? あれどこかで聞いたような…… 」
ムーちゃんが思い出そうとするが……
「そうだ古典ですよ」
「古典? 」
「ゲンジさんが教えてくれたじゃないですか。もしかして試験でもする気ですか」
「いや何か違うなあ…… 」
「まあ何にしろ大したことじゃないですよ」
「そうだな」
空蝉……
空…… 何だったけ?
えっと……
まあいいか。
「それでどうしました? 」
「俺にも良く分からない。暑さでどうにかなったのかもな」
ミーンミーン
ミーンミーン
「おお! 蝉の音がする」
「風流ですね」
「この島にも蝉が居たとはな。はっはは! 」
なぜか涙が溢れる。
「どうしたんですか? 」
「いや何でもない」
「そうだ亜砂がゲンジさんを探していましたよ」
「ありがとう」
宝も見つかった。
後は脱出する方法だが。
飛行機を待つのは現実的ではない。
やはりここは船になる。
亜砂を探す。
ビーチを確認。
あれ居ないな……
いつも大体この辺りにいるんだけどな。
「リン。亜砂を見なかったか? 」
「花飾りを作るって」
それならFL地点だな。よし行ってみるか。
「リンもついてくるか? 」
「ううん。ここで遊んでるよ」
「はいはい」
コンパス片手に一人寂しく歩き出す。
最近リンが消極的になってしまった。
避けられている?
いや関係は良好なはず。
俺が邪険に扱っても尻尾を振ってついてくる子犬のような存在。
リンが分からない。
まるで娘を持つ父親のような気持ち。
ああ。辛い。
ブツブツ
ブツブツ
自分の世界に入り込んでしまったためもう少しで通り過ぎるところだった。
FL地点に到着。
まず何か口に入れなくては。
お腹が空いた。
喉も渇いた。
えっと…… バナナは喉が渇くしなあ。
ココナッツはトラウマ。
ブドウがいいかな。
旬のフルーツを選ぶ。
ブドウは見当たらない……
ならばキウイフルーツでも……
ダメだ! 痒くなってしまう。
違うのにするか。
よしこれがいい。
イチジク。
これならちょうどいい。
鮮やかな緑にぽつぽつと赤の斑点。
お尻の方が割れている。
皮を剥き実をかぶりつく。
うん。甘い。
もう一つ。
うん。満足満足。
まるで天にも昇るおいしさ。
差し詰め俺は天使ってところか。
天使になった気分だ。
「あれ? ゲンジじゃない? 」
花飾りの少女。
亜砂の登場。
「どうしたのボーっとしちゃって? 」
「俺? 俺のことか? 」
亜砂にハイになっているところを見られてしまった。
恥ずかしい……
「うん。リンゴ食べる? 」
「俺はこれで満足だ」
「亜砂こそこのイチジク食べてみろ。美味しいぞ」
「ごめんね…… 」
急に沈み込む亜砂。
「どうした? 」
「イチジクはちょっと…… 」
「おいいしいのに。食わず嫌いか? 」
「ううん。昔いろいろあってさ。食べられなくなったの」
「そうか」
亜砂の突然の告白。
亜砂に何があった?
【続】
第五少女・空蝉
この話を持って空蝉は完全消滅。
皆の記憶から消え去った。
これが始まり。
そこで空蝉誕生秘話。
他の子は以外にもすらすら出てきたんだけどこの子だけは名前をどうしようか迷った記憶がある。
最後の子なのでと適当にすらっというわけにもいかない。何か意味のあるものをと考えたのが……
「空蝉」
ゲンジに引っ張られてしまった。
まあカモフラージュにはちょうどいいかなと。
服装もしゃべり方も性格も上品で大人の女性を意識してみました。
ゲンジの良き理解者であり保護者。
料理も上手なのでメイドとして採用。
ゲンジに空蝉
何か意味があるかもしれない。
特別篇に期待。
最後に一言。
空蝉に幸あれ!
空蝉のことは残念だった。
だが前を向かなくては。
俺には他の少女たちが残っている。
いつまでも引きずる訳にはいかない。
彼女たちを空蝉の分まで幸せにしてやればいい。
だが……
「お兄ちゃん。元気ないよ」
リンがのぞき込む。
傷心には沁みる。
「リンどうした? 」
「釣りに行こうよ! 」
リンらしくない。気を使わせてしまった。
リンもこれで成長しているのだろう。
あっちも成長してくれるといいがな……
「もう! お兄ちゃんたら」
リンが後ろを向く。
「行こうよ! 」
「待ってくれ! 空蝉を探すのが先だ」
「空蝉? 」
失踪して三日。
自分の意思で失踪したのか事故か分からないがもしかしたら助けを待っているかもしれない。できる限りのことはしたい。
「お兄ちゃん変なの」
「変? どこが? 」
「だって変なんだもん」
「そうかなあ…… 」
「空蝉って誰? 」
「おい冗談だろ? 空蝉だぞ! 」
「知らない。リン分かんない! 」
「嘘を吐くな! 一緒に遊んだじゃないか! 空蝉だ! ほら…… 仲間だろ? 」
一体どうなっている?
「リン分かんない。子供だから」
「リン! 」
「もう、お兄ちゃんがいじめる」
三日たったら忘れる。
そう言うものか。
まあリンなら有り得なくもない。
何と言っても三歩も歩けば忘れるのだから。
気にしていても仕方がない。
俺だけでも。
さざ波が聞こえる。
空蝉……
空蝉って誰だっけ?
空蝉! 空蝉! 空蝉!
あれ? おかしいな。どうしたんだ俺?
空蝉? 空蝉?
名前しか出てこない。
どんな顔かさえも思い出せない。
空蝉って誰?
空蝉? 空蝉?
まずい!
コテージに戻る。
ムーちゃんの姿が見えた。
「ゲンジさん。おっかない顔をしてどうしたんですか? 」
、いや、その…… 変なんだ」
「何がですか? 」
「空蝉が思い出せないんだ。おかしいだろ? 」
「空蝉? あれどこかで聞いたような…… 」
ムーちゃんが思い出そうとするが……
「そうだ古典ですよ」
「古典? 」
「ゲンジさんが教えてくれたじゃないですか。もしかして試験でもする気ですか」
「いや何か違うなあ…… 」
「まあ何にしろ大したことじゃないですよ」
「そうだな」
空蝉……
空…… 何だったけ?
えっと……
まあいいか。
「それでどうしました? 」
「俺にも良く分からない。暑さでどうにかなったのかもな」
ミーンミーン
ミーンミーン
「おお! 蝉の音がする」
「風流ですね」
「この島にも蝉が居たとはな。はっはは! 」
なぜか涙が溢れる。
「どうしたんですか? 」
「いや何でもない」
「そうだ亜砂がゲンジさんを探していましたよ」
「ありがとう」
宝も見つかった。
後は脱出する方法だが。
飛行機を待つのは現実的ではない。
やはりここは船になる。
亜砂を探す。
ビーチを確認。
あれ居ないな……
いつも大体この辺りにいるんだけどな。
「リン。亜砂を見なかったか? 」
「花飾りを作るって」
それならFL地点だな。よし行ってみるか。
「リンもついてくるか? 」
「ううん。ここで遊んでるよ」
「はいはい」
コンパス片手に一人寂しく歩き出す。
最近リンが消極的になってしまった。
避けられている?
いや関係は良好なはず。
俺が邪険に扱っても尻尾を振ってついてくる子犬のような存在。
リンが分からない。
まるで娘を持つ父親のような気持ち。
ああ。辛い。
ブツブツ
ブツブツ
自分の世界に入り込んでしまったためもう少しで通り過ぎるところだった。
FL地点に到着。
まず何か口に入れなくては。
お腹が空いた。
喉も渇いた。
えっと…… バナナは喉が渇くしなあ。
ココナッツはトラウマ。
ブドウがいいかな。
旬のフルーツを選ぶ。
ブドウは見当たらない……
ならばキウイフルーツでも……
ダメだ! 痒くなってしまう。
違うのにするか。
よしこれがいい。
イチジク。
これならちょうどいい。
鮮やかな緑にぽつぽつと赤の斑点。
お尻の方が割れている。
皮を剥き実をかぶりつく。
うん。甘い。
もう一つ。
うん。満足満足。
まるで天にも昇るおいしさ。
差し詰め俺は天使ってところか。
天使になった気分だ。
「あれ? ゲンジじゃない? 」
花飾りの少女。
亜砂の登場。
「どうしたのボーっとしちゃって? 」
「俺? 俺のことか? 」
亜砂にハイになっているところを見られてしまった。
恥ずかしい……
「うん。リンゴ食べる? 」
「俺はこれで満足だ」
「亜砂こそこのイチジク食べてみろ。美味しいぞ」
「ごめんね…… 」
急に沈み込む亜砂。
「どうした? 」
「イチジクはちょっと…… 」
「おいいしいのに。食わず嫌いか? 」
「ううん。昔いろいろあってさ。食べられなくなったの」
「そうか」
亜砂の突然の告白。
亜砂に何があった?
【続】
第五少女・空蝉
この話を持って空蝉は完全消滅。
皆の記憶から消え去った。
これが始まり。
そこで空蝉誕生秘話。
他の子は以外にもすらすら出てきたんだけどこの子だけは名前をどうしようか迷った記憶がある。
最後の子なのでと適当にすらっというわけにもいかない。何か意味のあるものをと考えたのが……
「空蝉」
ゲンジに引っ張られてしまった。
まあカモフラージュにはちょうどいいかなと。
服装もしゃべり方も性格も上品で大人の女性を意識してみました。
ゲンジの良き理解者であり保護者。
料理も上手なのでメイドとして採用。
ゲンジに空蝉
何か意味があるかもしれない。
特別篇に期待。
最後に一言。
空蝉に幸あれ!
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