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第五の少女・空蝉物語【完】
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情けない。
自分が本当に情けない。
「ゲンジさん? 」
「ああ…… 」
覚悟を決める。
寝間着姿の空蝉。
恥ずかしそうに急いで横になる。
もう後戻りできない。
どうにでもなれ!
「空蝉! 」
「静かにお願いします」
無理な注文だ。
しかし二人が起きたら面倒。
音を立てないようにゆっくりと。
声をあげないように慎重に。
だがそんな時に限って……
ギギギ!
軋む音に心臓が凍り付く。
ふー。セーフ。
「何してるんですかゲンジさん」
空蝉は耳元で囁く。
「だって! 」
「しっ! 静かに」
俺だってできるなら協力したいが限界がある。
心臓のドキドキを隠すので精一杯。
ふう疲れる。
汗だってもうこんなに。べとべとして嫌になる。
「こう言うプレーが望みか? 」
「意地悪を言わないでください…… 」
無理に声を抑える空蝉。
「いや済まん。済まん」
彼女も必死なのだ。
俺が応えないでどうする。
こういう時は大胆にいった方がいい。
寝間着をはぎ取る。
「もうゲンジさんたら」
お返しにと空蝉に脱がされる。
「お兄ちゃん…… うーん」
「寝言か…… 」
夢でも見ているのだろう。
脅かしやがる。
「お願い早く! 」
「はいはい」
空蝉に覆いかぶさる。
今までどれだけ妄想してきたことか。
それが今、現実のものとなっている。
「何て美しいんだ! 」
「嘘つき! 見えないでしょう? 」
「いや分かるよ。肌に胸に太もも、それにお尻。どれをとっても申し分ない」
裸で触れ合うことで分かることもある。
「もうゲンジさんたら…… 恥ずかしい」
さあ。そろそろかな。
「ゲンジさん。ダメ! ああ! 」
喘ぐ空蝉。
辺りを見回す。
大丈夫。誰も起きていない。
続行。
何と罪深いことか。
近距離で寝ている者をよそに交じり合う。
背徳感で一杯だ。
「ゲンジさん ダメ! 」
「おい! もう少し抑えてくれ。気づかれてしまう」
はあはあ
はあはあ
「ゲンジさんも人のこと言えないじゃないですか」
「いいから抑えて! 」
「ふふふ…… 」
仕方ない。一気に行くとしよう。
「ああダメですよゲンジさん」
「うるさい! 好きにさせろ! 」
「あああ! 」
堪らなく空蝉が呻き声をあげる。
「まったく…… 」
空蝉の口を優しく塞ぐ。
「うんん! 」
静かに喘ぎ。
静かに果てる。
闇の中で空を見る。
「ありがとうゲンジさん」
「なに…… 俺も抑えつけていたものを解放しただけさ」
「ありがとう。これでもう思い残すことはありません」
「何を言う? 」
「だって…… 」
「またやればいいじゃないか。ほらもう一度」
強引に二回目へ。
「ちょっとゲンジさん。困ります…… 」
「良いだろ? 」
「本気ですか? 」
「ああ。俺はいつでも本気だ」
体が尽きるまで何度も何度も。
もはや周りなど関係ない。
好きなようにする。
空蝉への思いは偽りではない。
彼女も俺も求め合った。
これでいいのだ。
男がいる。
女がいる。
ただそれだけのことだ。
だが空蝉は本当に女なのか?
いや人間なのか?
頭の片隅に残る疑問を解決する術は一つしかない。
直接聞く。
今なら答えてくれるかもしれない。
手をつなぎ天を仰ぐ。
「なあ空蝉。お前たちは何者なんだ? 」
「知りたいですか? 」
「ああ、焦らすなよ」
「ではお答えしましょう」
「私はあなたです」
「はあ? 」
意味が分からない。聞き違いか?
「あなたの理想の女性です」
「ずいぶん自信過剰だな」
「違うんですよ。そうではないんです」
「何が違う? 答えろ! 」
「私はあなたの作り出した幻想」
「ははは! 」
笑うしかない。からかっているのだ。
「そしてあなたはゲンジじゃない」
ゲンジではない?
それでは一体誰だと言うんだ。
ゲンジは俺だろう? 違うと言うのか?
やはり無理がある。だが気にしていても始まらない。
「何だそんなことか。俺が誰だって構わないさ」
「もう! 現実を見てください! 」
「どうした空蝉。おかしいぞ」
「おやすみなさい」
面倒臭くなったのか寝てしまう。
「空蝉! 空蝉! 」
もう反応しなくなった。
寝たのだろう。
だめだこりゃ。
俺も寝るか。
こうして二人は一線を越えた。
それが何を意味するのかも分からずに。
もう止まらない。
一人の女性を愛することは素晴らしいことだ。
だが一人の女性として認識し愛し合うと言うことはあってはならないこの島の掟を破ったことに他ならない。
禁を破れば必ず罰が下る。
認識し愛し合う。
もはや妄想の範疇から超えてしまった。
罰は……
消えゆく少女。
これが運命。
抗うことのできない現実。
現在。
「どうゲンジ? 」
「いや…… 」
「どこに行ったんだろうね。何か知ってる? 」
「俺が知るわけないだろう! 」
「怒んなくてもいいじゃない」
「いや済まない…… 」
心の整理がつかない。
俺が手を出したせいで空蝉が居なくなってしまった。
どうして?
彼女だって求めていたじゃないか。
二人にとって正しいこと。
ごく自然なこと。
どうしてこんなことになってしまったんだ。
俺が安易に受け入れてしまったから……
違う!
彼女は自分が消えるのが分かっていた。
俺のせいじゃない。
もう時間の問題だったんだ。
諦めよう。
そして忘れよう。
もう二度と同じ失敗を繰り返してはいけない。
済まない空蝉。さらばだ。
第五の少女・空蝉の物語 【完】
次回に続く
自分が本当に情けない。
「ゲンジさん? 」
「ああ…… 」
覚悟を決める。
寝間着姿の空蝉。
恥ずかしそうに急いで横になる。
もう後戻りできない。
どうにでもなれ!
「空蝉! 」
「静かにお願いします」
無理な注文だ。
しかし二人が起きたら面倒。
音を立てないようにゆっくりと。
声をあげないように慎重に。
だがそんな時に限って……
ギギギ!
軋む音に心臓が凍り付く。
ふー。セーフ。
「何してるんですかゲンジさん」
空蝉は耳元で囁く。
「だって! 」
「しっ! 静かに」
俺だってできるなら協力したいが限界がある。
心臓のドキドキを隠すので精一杯。
ふう疲れる。
汗だってもうこんなに。べとべとして嫌になる。
「こう言うプレーが望みか? 」
「意地悪を言わないでください…… 」
無理に声を抑える空蝉。
「いや済まん。済まん」
彼女も必死なのだ。
俺が応えないでどうする。
こういう時は大胆にいった方がいい。
寝間着をはぎ取る。
「もうゲンジさんたら」
お返しにと空蝉に脱がされる。
「お兄ちゃん…… うーん」
「寝言か…… 」
夢でも見ているのだろう。
脅かしやがる。
「お願い早く! 」
「はいはい」
空蝉に覆いかぶさる。
今までどれだけ妄想してきたことか。
それが今、現実のものとなっている。
「何て美しいんだ! 」
「嘘つき! 見えないでしょう? 」
「いや分かるよ。肌に胸に太もも、それにお尻。どれをとっても申し分ない」
裸で触れ合うことで分かることもある。
「もうゲンジさんたら…… 恥ずかしい」
さあ。そろそろかな。
「ゲンジさん。ダメ! ああ! 」
喘ぐ空蝉。
辺りを見回す。
大丈夫。誰も起きていない。
続行。
何と罪深いことか。
近距離で寝ている者をよそに交じり合う。
背徳感で一杯だ。
「ゲンジさん ダメ! 」
「おい! もう少し抑えてくれ。気づかれてしまう」
はあはあ
はあはあ
「ゲンジさんも人のこと言えないじゃないですか」
「いいから抑えて! 」
「ふふふ…… 」
仕方ない。一気に行くとしよう。
「ああダメですよゲンジさん」
「うるさい! 好きにさせろ! 」
「あああ! 」
堪らなく空蝉が呻き声をあげる。
「まったく…… 」
空蝉の口を優しく塞ぐ。
「うんん! 」
静かに喘ぎ。
静かに果てる。
闇の中で空を見る。
「ありがとうゲンジさん」
「なに…… 俺も抑えつけていたものを解放しただけさ」
「ありがとう。これでもう思い残すことはありません」
「何を言う? 」
「だって…… 」
「またやればいいじゃないか。ほらもう一度」
強引に二回目へ。
「ちょっとゲンジさん。困ります…… 」
「良いだろ? 」
「本気ですか? 」
「ああ。俺はいつでも本気だ」
体が尽きるまで何度も何度も。
もはや周りなど関係ない。
好きなようにする。
空蝉への思いは偽りではない。
彼女も俺も求め合った。
これでいいのだ。
男がいる。
女がいる。
ただそれだけのことだ。
だが空蝉は本当に女なのか?
いや人間なのか?
頭の片隅に残る疑問を解決する術は一つしかない。
直接聞く。
今なら答えてくれるかもしれない。
手をつなぎ天を仰ぐ。
「なあ空蝉。お前たちは何者なんだ? 」
「知りたいですか? 」
「ああ、焦らすなよ」
「ではお答えしましょう」
「私はあなたです」
「はあ? 」
意味が分からない。聞き違いか?
「あなたの理想の女性です」
「ずいぶん自信過剰だな」
「違うんですよ。そうではないんです」
「何が違う? 答えろ! 」
「私はあなたの作り出した幻想」
「ははは! 」
笑うしかない。からかっているのだ。
「そしてあなたはゲンジじゃない」
ゲンジではない?
それでは一体誰だと言うんだ。
ゲンジは俺だろう? 違うと言うのか?
やはり無理がある。だが気にしていても始まらない。
「何だそんなことか。俺が誰だって構わないさ」
「もう! 現実を見てください! 」
「どうした空蝉。おかしいぞ」
「おやすみなさい」
面倒臭くなったのか寝てしまう。
「空蝉! 空蝉! 」
もう反応しなくなった。
寝たのだろう。
だめだこりゃ。
俺も寝るか。
こうして二人は一線を越えた。
それが何を意味するのかも分からずに。
もう止まらない。
一人の女性を愛することは素晴らしいことだ。
だが一人の女性として認識し愛し合うと言うことはあってはならないこの島の掟を破ったことに他ならない。
禁を破れば必ず罰が下る。
認識し愛し合う。
もはや妄想の範疇から超えてしまった。
罰は……
消えゆく少女。
これが運命。
抗うことのできない現実。
現在。
「どうゲンジ? 」
「いや…… 」
「どこに行ったんだろうね。何か知ってる? 」
「俺が知るわけないだろう! 」
「怒んなくてもいいじゃない」
「いや済まない…… 」
心の整理がつかない。
俺が手を出したせいで空蝉が居なくなってしまった。
どうして?
彼女だって求めていたじゃないか。
二人にとって正しいこと。
ごく自然なこと。
どうしてこんなことになってしまったんだ。
俺が安易に受け入れてしまったから……
違う!
彼女は自分が消えるのが分かっていた。
俺のせいじゃない。
もう時間の問題だったんだ。
諦めよう。
そして忘れよう。
もう二度と同じ失敗を繰り返してはいけない。
済まない空蝉。さらばだ。
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