夏への招待状 失われた記憶と消えゆく少女たち 無人島脱出お宝大作戦

二廻歩

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暗号解読したもののPTの意味が分からない。
「お兄ちゃん? 」
PT・PT・PT……
PTって何だ?
「遊ぼうよお兄ちゃん」
「リン…… 分かる? 訳ないよな」
「うん。分かんない! 」
「PT・PT うーん。ダメだ全然思いつかない」
「遊ぼうよ! 」
「この暗号が分かるまでダメだ! 」
リンはむくれて行ってしまった。

代わるように亜砂が顔を出す。
「どうしたの? 」
「亜砂か。PTって分かるか? 」 
「分かった! 」
本当かなあ……
『PT=PHOTO』
「写真。写真を調べてみたら」
「おお。斬新」
写真。写真。
確かカメラがあったよな。
荷物置き場になっている奥の部屋へ。
あったあった。これだこれ。
ガラクタを退かし目当ての物を取り出す。
これは俺のか?
やけに古いカメラ。
ああもうダメだ壊れている。
水没したのかどこをいじっても動かない。
これではなさそうだ。

考えられるのは写真自体。
コテージには無かったよな。
もちろん山小屋にも写真など見当たらなかった。
考えられるのはあの秘密の隠れ家。
行ってみるか。
「お兄ちゃん? 」
リンが戻ってきた。
「ちょうどよかった。今から出かける。着いてくるか? 」
「ううん。留守番してるよ」
いつも積極的で何も考えずに手を挙げるリンが誘いを断った。
まさか何か知っている?
「リン! 」
「眠くなっちゃった」
リンはお昼寝の時間だと言ってベッドへ。
まったく訳が分からない。
まあ今に始まったことでもないが。

山に向かう。
ドンドン
ドンドン
誰も居ない。
当たり前か。ここは無人島。
人など居るはずもない。
しかしどうやって入ろうかな……
なんかどことなく懐かしい気がしてならない。
「あらゲンジさん。何か用ですか? 」
後ろから空蝉の声がする。
たまに戻って掃除をしているとのこと。
「なあ空蝉。中を見せてくれないか」
「いいですよ。では手伝ってください」
前回訪問時同様特に変わったところを見当たらない。

「拭き掃除が終わったら元に戻してください」
「これでいいか? 」
「ダメですよ。もう少し左」
「こうか」
「はい」
「これでいいか? 」
「もっと優しくお願いします。壊れてしまいます」
「済まん済まん」
うまく使われた気がする。
掃除完了。

一息つく。
「お酒飲みますか? 」
普通はお茶を勧めるものだが。生憎切らしているとのこと。
「いや今はいい。それよりも写真を探しているんだ」
「写真ですか? 」
空蝉は難しい顔をする。
「ああ。暗号の答えがあるかもしれない」
「よく分かりませんけど。写真ならここに一つだけ。壁に掛っていたんですけど掃除のときに外してそのまま」
壁にそれらしき跡が見られる。
「ただの風景写真ですがこれが何か? 」
「見せてくれ! 」
受け取る。
外国の田舎の風景。
別に特段変わったところはない。
作者は無名だろう。
どこで撮ったかの手がかりもない。
「うーん」
「ゲンジさん。私は違うと思います」
「違う? 」
「ええ。この写真は関係ないと思います」
断言する空蝉。
「根拠でもあるのか? それとも何か知っているのか? 」
「いえ。ですがあまりに抽象的な気がしてなりません。宝はこの島にあるんでしょう? 」
「たぶんな」
「でしたらこの写真は関係ないかと思います。ただの風景ですから。
これ以上は時間の無駄ではないかと思いますが」
「うーん。ではPTとは何か分かるか? 」
「それは…… POINT」
「POINT? 」
「ええ。重点とか要点などの意味かと」
「それが? 」
「分かりません。ただ考えられるのは…… いえ何でもありません。もう一度調べ直してみてはいかがでしょう」
「一からやり直せと? 」
「はい。焦ることはありません。ゆっくり調べているうちに思い出すかもしれませんよ」
「思い出す? 」
「はい。記憶が戻りかかっているようですから」
「記憶が先という訳か」
「もう帰りましょう。遅くなりますよ」
空蝉はそう言うと外へ出る。

「降ってきそうですよ」
島を覆う不気味な雲が発達中。
このままでは土砂降りになる。
急がなくては。
ガーン
海上では雷が鳴りだした。
「まずい! 空蝉走るぞ! 」
「戻りましょうか? 」
「もう遅い! 」 
中間地点に差し掛かっている。
戻っても同じこと。
岩場までやって来た。
雨がぽつぽつと降り出してくる。
このままの勢いではすぐに雷雨にやられてしまう。
まさか雷雨とはな。
スコールには慣れているが雷雨はちょっと……
「ゲンジさん」
「どうした空蝉? 」
「疲れました。申し訳ありません」
もともと病弱な空蝉。謝る必要などない。
無理して走ったせいで体調を崩したようだ。

ドガガン!
グォン!
雷鳴が轟いた。
近い!
一分もしないうちに土砂降りになった。
「大丈夫か? 」
「はい。何とか」
「そうだ。傘はどうした? 」
「すみません。置いてきてしまいました」
「いやいい」
傘があれば凌げるもののこれ以上悪化すればどっちみち役には立たない。
急ぐしかない。

ドン!
ババン!
落ちたようだ。
危ない。危ない。
容赦なく雨が降りつける。
もう持たない。


「逃げよう! 」
「どうすることもできんぞ! 」
「そんな博士…… 」
「嵐が過ぎ去るのを待つんだ」
「もう持ちませんよ! 」
「分かっている! 」
「助けて! 」
「助け…… 」
「ゲンジ! 意識を保て! やられるぞ! 」
反応が無い。
「ゲンジ! ゲンジ! おい! おーい! 」
「博士助けて! 」
「助けて! 誰か! 」


「ゲンジさん? ゲンジさん? どうしましたゲンジさん? 」
「うん。あれ俺…… おかしいな」
「ゲンジさんしっかり! 」
「博士は? 」
「思い出したんですか? 」
「ああ。少しだけ…… 」
「博士は知りません」
「嘘をつくな! 正直に話してくれ! 」
「博士は…… 」
「博士は? 」
「死にました。とっくの昔に」

                    【続】
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