35 / 61
pt
しおりを挟む
暗号解読したもののPTの意味が分からない。
「お兄ちゃん? 」
PT・PT・PT……
PTって何だ?
「遊ぼうよお兄ちゃん」
「リン…… 分かる? 訳ないよな」
「うん。分かんない! 」
「PT・PT うーん。ダメだ全然思いつかない」
「遊ぼうよ! 」
「この暗号が分かるまでダメだ! 」
リンはむくれて行ってしまった。
代わるように亜砂が顔を出す。
「どうしたの? 」
「亜砂か。PTって分かるか? 」
「分かった! 」
本当かなあ……
『PT=PHOTO』
「写真。写真を調べてみたら」
「おお。斬新」
写真。写真。
確かカメラがあったよな。
荷物置き場になっている奥の部屋へ。
あったあった。これだこれ。
ガラクタを退かし目当ての物を取り出す。
これは俺のか?
やけに古いカメラ。
ああもうダメだ壊れている。
水没したのかどこをいじっても動かない。
これではなさそうだ。
考えられるのは写真自体。
コテージには無かったよな。
もちろん山小屋にも写真など見当たらなかった。
考えられるのはあの秘密の隠れ家。
行ってみるか。
「お兄ちゃん? 」
リンが戻ってきた。
「ちょうどよかった。今から出かける。着いてくるか? 」
「ううん。留守番してるよ」
いつも積極的で何も考えずに手を挙げるリンが誘いを断った。
まさか何か知っている?
「リン! 」
「眠くなっちゃった」
リンはお昼寝の時間だと言ってベッドへ。
まったく訳が分からない。
まあ今に始まったことでもないが。
山に向かう。
ドンドン
ドンドン
誰も居ない。
当たり前か。ここは無人島。
人など居るはずもない。
しかしどうやって入ろうかな……
なんかどことなく懐かしい気がしてならない。
「あらゲンジさん。何か用ですか? 」
後ろから空蝉の声がする。
たまに戻って掃除をしているとのこと。
「なあ空蝉。中を見せてくれないか」
「いいですよ。では手伝ってください」
前回訪問時同様特に変わったところを見当たらない。
「拭き掃除が終わったら元に戻してください」
「これでいいか? 」
「ダメですよ。もう少し左」
「こうか」
「はい」
「これでいいか? 」
「もっと優しくお願いします。壊れてしまいます」
「済まん済まん」
うまく使われた気がする。
掃除完了。
一息つく。
「お酒飲みますか? 」
普通はお茶を勧めるものだが。生憎切らしているとのこと。
「いや今はいい。それよりも写真を探しているんだ」
「写真ですか? 」
空蝉は難しい顔をする。
「ああ。暗号の答えがあるかもしれない」
「よく分かりませんけど。写真ならここに一つだけ。壁に掛っていたんですけど掃除のときに外してそのまま」
壁にそれらしき跡が見られる。
「ただの風景写真ですがこれが何か? 」
「見せてくれ! 」
受け取る。
外国の田舎の風景。
別に特段変わったところはない。
作者は無名だろう。
どこで撮ったかの手がかりもない。
「うーん」
「ゲンジさん。私は違うと思います」
「違う? 」
「ええ。この写真は関係ないと思います」
断言する空蝉。
「根拠でもあるのか? それとも何か知っているのか? 」
「いえ。ですがあまりに抽象的な気がしてなりません。宝はこの島にあるんでしょう? 」
「たぶんな」
「でしたらこの写真は関係ないかと思います。ただの風景ですから。
これ以上は時間の無駄ではないかと思いますが」
「うーん。ではPTとは何か分かるか? 」
「それは…… POINT」
「POINT? 」
「ええ。重点とか要点などの意味かと」
「それが? 」
「分かりません。ただ考えられるのは…… いえ何でもありません。もう一度調べ直してみてはいかがでしょう」
「一からやり直せと? 」
「はい。焦ることはありません。ゆっくり調べているうちに思い出すかもしれませんよ」
「思い出す? 」
「はい。記憶が戻りかかっているようですから」
「記憶が先という訳か」
「もう帰りましょう。遅くなりますよ」
空蝉はそう言うと外へ出る。
「降ってきそうですよ」
島を覆う不気味な雲が発達中。
このままでは土砂降りになる。
急がなくては。
ガーン
海上では雷が鳴りだした。
「まずい! 空蝉走るぞ! 」
「戻りましょうか? 」
「もう遅い! 」
中間地点に差し掛かっている。
戻っても同じこと。
岩場までやって来た。
雨がぽつぽつと降り出してくる。
このままの勢いではすぐに雷雨にやられてしまう。
まさか雷雨とはな。
スコールには慣れているが雷雨はちょっと……
「ゲンジさん」
「どうした空蝉? 」
「疲れました。申し訳ありません」
もともと病弱な空蝉。謝る必要などない。
無理して走ったせいで体調を崩したようだ。
ドガガン!
グォン!
雷鳴が轟いた。
近い!
一分もしないうちに土砂降りになった。
「大丈夫か? 」
「はい。何とか」
「そうだ。傘はどうした? 」
「すみません。置いてきてしまいました」
「いやいい」
傘があれば凌げるもののこれ以上悪化すればどっちみち役には立たない。
急ぐしかない。
ドン!
ババン!
落ちたようだ。
危ない。危ない。
容赦なく雨が降りつける。
もう持たない。
「逃げよう! 」
「どうすることもできんぞ! 」
「そんな博士…… 」
「嵐が過ぎ去るのを待つんだ」
「もう持ちませんよ! 」
「分かっている! 」
「助けて! 」
「助け…… 」
「ゲンジ! 意識を保て! やられるぞ! 」
反応が無い。
「ゲンジ! ゲンジ! おい! おーい! 」
「博士助けて! 」
「助けて! 誰か! 」
「ゲンジさん? ゲンジさん? どうしましたゲンジさん? 」
「うん。あれ俺…… おかしいな」
「ゲンジさんしっかり! 」
「博士は? 」
「思い出したんですか? 」
「ああ。少しだけ…… 」
「博士は知りません」
「嘘をつくな! 正直に話してくれ! 」
「博士は…… 」
「博士は? 」
「死にました。とっくの昔に」
【続】
「お兄ちゃん? 」
PT・PT・PT……
PTって何だ?
「遊ぼうよお兄ちゃん」
「リン…… 分かる? 訳ないよな」
「うん。分かんない! 」
「PT・PT うーん。ダメだ全然思いつかない」
「遊ぼうよ! 」
「この暗号が分かるまでダメだ! 」
リンはむくれて行ってしまった。
代わるように亜砂が顔を出す。
「どうしたの? 」
「亜砂か。PTって分かるか? 」
「分かった! 」
本当かなあ……
『PT=PHOTO』
「写真。写真を調べてみたら」
「おお。斬新」
写真。写真。
確かカメラがあったよな。
荷物置き場になっている奥の部屋へ。
あったあった。これだこれ。
ガラクタを退かし目当ての物を取り出す。
これは俺のか?
やけに古いカメラ。
ああもうダメだ壊れている。
水没したのかどこをいじっても動かない。
これではなさそうだ。
考えられるのは写真自体。
コテージには無かったよな。
もちろん山小屋にも写真など見当たらなかった。
考えられるのはあの秘密の隠れ家。
行ってみるか。
「お兄ちゃん? 」
リンが戻ってきた。
「ちょうどよかった。今から出かける。着いてくるか? 」
「ううん。留守番してるよ」
いつも積極的で何も考えずに手を挙げるリンが誘いを断った。
まさか何か知っている?
「リン! 」
「眠くなっちゃった」
リンはお昼寝の時間だと言ってベッドへ。
まったく訳が分からない。
まあ今に始まったことでもないが。
山に向かう。
ドンドン
ドンドン
誰も居ない。
当たり前か。ここは無人島。
人など居るはずもない。
しかしどうやって入ろうかな……
なんかどことなく懐かしい気がしてならない。
「あらゲンジさん。何か用ですか? 」
後ろから空蝉の声がする。
たまに戻って掃除をしているとのこと。
「なあ空蝉。中を見せてくれないか」
「いいですよ。では手伝ってください」
前回訪問時同様特に変わったところを見当たらない。
「拭き掃除が終わったら元に戻してください」
「これでいいか? 」
「ダメですよ。もう少し左」
「こうか」
「はい」
「これでいいか? 」
「もっと優しくお願いします。壊れてしまいます」
「済まん済まん」
うまく使われた気がする。
掃除完了。
一息つく。
「お酒飲みますか? 」
普通はお茶を勧めるものだが。生憎切らしているとのこと。
「いや今はいい。それよりも写真を探しているんだ」
「写真ですか? 」
空蝉は難しい顔をする。
「ああ。暗号の答えがあるかもしれない」
「よく分かりませんけど。写真ならここに一つだけ。壁に掛っていたんですけど掃除のときに外してそのまま」
壁にそれらしき跡が見られる。
「ただの風景写真ですがこれが何か? 」
「見せてくれ! 」
受け取る。
外国の田舎の風景。
別に特段変わったところはない。
作者は無名だろう。
どこで撮ったかの手がかりもない。
「うーん」
「ゲンジさん。私は違うと思います」
「違う? 」
「ええ。この写真は関係ないと思います」
断言する空蝉。
「根拠でもあるのか? それとも何か知っているのか? 」
「いえ。ですがあまりに抽象的な気がしてなりません。宝はこの島にあるんでしょう? 」
「たぶんな」
「でしたらこの写真は関係ないかと思います。ただの風景ですから。
これ以上は時間の無駄ではないかと思いますが」
「うーん。ではPTとは何か分かるか? 」
「それは…… POINT」
「POINT? 」
「ええ。重点とか要点などの意味かと」
「それが? 」
「分かりません。ただ考えられるのは…… いえ何でもありません。もう一度調べ直してみてはいかがでしょう」
「一からやり直せと? 」
「はい。焦ることはありません。ゆっくり調べているうちに思い出すかもしれませんよ」
「思い出す? 」
「はい。記憶が戻りかかっているようですから」
「記憶が先という訳か」
「もう帰りましょう。遅くなりますよ」
空蝉はそう言うと外へ出る。
「降ってきそうですよ」
島を覆う不気味な雲が発達中。
このままでは土砂降りになる。
急がなくては。
ガーン
海上では雷が鳴りだした。
「まずい! 空蝉走るぞ! 」
「戻りましょうか? 」
「もう遅い! 」
中間地点に差し掛かっている。
戻っても同じこと。
岩場までやって来た。
雨がぽつぽつと降り出してくる。
このままの勢いではすぐに雷雨にやられてしまう。
まさか雷雨とはな。
スコールには慣れているが雷雨はちょっと……
「ゲンジさん」
「どうした空蝉? 」
「疲れました。申し訳ありません」
もともと病弱な空蝉。謝る必要などない。
無理して走ったせいで体調を崩したようだ。
ドガガン!
グォン!
雷鳴が轟いた。
近い!
一分もしないうちに土砂降りになった。
「大丈夫か? 」
「はい。何とか」
「そうだ。傘はどうした? 」
「すみません。置いてきてしまいました」
「いやいい」
傘があれば凌げるもののこれ以上悪化すればどっちみち役には立たない。
急ぐしかない。
ドン!
ババン!
落ちたようだ。
危ない。危ない。
容赦なく雨が降りつける。
もう持たない。
「逃げよう! 」
「どうすることもできんぞ! 」
「そんな博士…… 」
「嵐が過ぎ去るのを待つんだ」
「もう持ちませんよ! 」
「分かっている! 」
「助けて! 」
「助け…… 」
「ゲンジ! 意識を保て! やられるぞ! 」
反応が無い。
「ゲンジ! ゲンジ! おい! おーい! 」
「博士助けて! 」
「助けて! 誰か! 」
「ゲンジさん? ゲンジさん? どうしましたゲンジさん? 」
「うん。あれ俺…… おかしいな」
「ゲンジさんしっかり! 」
「博士は? 」
「思い出したんですか? 」
「ああ。少しだけ…… 」
「博士は知りません」
「嘘をつくな! 正直に話してくれ! 」
「博士は…… 」
「博士は? 」
「死にました。とっくの昔に」
【続】
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ
ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。
【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】
なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。
【登場人物】
エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。
ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。
マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。
アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。
アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。
クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。
かれん
青木ぬかり
ミステリー
「これ……いったい何が目的なの?」
18歳の女の子が大学の危機に立ち向かう物語です。
※とても長いため、本編とは別に前半のあらすじ「忙しい人のためのかれん」を公開してますので、ぜひ。

磯村家の呪いと愛しのグランパ
しまおか
ミステリー
資産運用専門会社への就職希望の須藤大貴は、大学の同じクラスの山内楓と目黒絵美の会話を耳にし、楓が資産家である母方の祖母から十三歳の時に多額の遺産を受け取ったと知り興味を持つ。一人娘の母が亡くなり、代襲相続したからだ。そこで話に入り詳細を聞いた所、血の繋がりは無いけれど幼い頃から彼女を育てた、二人目の祖父が失踪していると聞く。また不仲な父と再婚相手に遺産を使わせないよう、祖母の遺言で楓が成人するまで祖父が弁護士を通じ遺産管理しているという。さらに祖父は、田舎の家の建物部分と一千万の現金だけ受け取り、残りは楓に渡した上で姻族終了届を出して死後離婚し、姿を消したと言うのだ。彼女は大学に無事入学したのを機に、愛しのグランパを探したいと考えていた。そこでかつて住んでいたN県の村に秘密があると思い、同じ県出身でしかも近い場所に実家がある絵美に相談していたのだ。また祖父を見つけるだけでなく、何故失踪までしたかを探らなければ解決できないと考えていた。四十年近く前に十年で磯村家とその親族が八人亡くなり、一人失踪しているという。内訳は五人が病死、三人が事故死だ。祖母の最初の夫の真之介が滑落死、その弟の光二朗も滑落死、二人の前に光二朗の妻が幼子を残し、事故死していた。複雑な経緯を聞いた大貴は、専門家に調査依頼することを提案。そこで泊という調査員に、彼女の祖父の居場所を突き止めて貰った。すると彼は多額の借金を抱え、三か所で働いていると判明。まだ過去の謎が明らかになっていない為、大貴達と泊で調査を勧めつつ様々な問題を解決しようと動く。そこから驚くべき事実が発覚する。楓とグランパの関係はどうなっていくのか!?
総務の黒川さんは袖をまくらない
八木山
ミステリー
僕は、総務の黒川さんが好きだ。
話も合うし、お酒の趣味も合う。
彼女のことを、もっと知りたい。
・・・どうして、いつも長袖なんだ?
・僕(北野)
昏寧堂出版の中途社員。
経営企画室のサブリーダー。
30代、うかうかしていられないなと思っている
・黒川さん
昏寧堂出版の中途社員。
総務部のアイドル。
ギリギリ20代だが、思うところはある。
・水樹
昏寧堂出版のプロパー社員。
社内をちょこまか動き回っており、何をするのが仕事なのかわからない。
僕と同い年だが、女性社員の熱い視線を集めている。
・プロの人
その道のプロの人。
どこからともなく現れる有識者。
弊社のセキュリティはどうなってるんだ?


イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる