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財宝の歴史
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侵入者から財宝と少女たちを守った。
結果的に島を守ることにもなった。
一体奴らは何者だったのだろうか?
聞き出す前に息絶えた者ども。
やり過ぎたかなあ。
アイミに唆されなければこんな惨劇にはならなかったはずだ。
いくら煽られようと本来の俺だったらこんなことはしない。
まるで島に毒されてしまったかのように。
自分が自分でない気がする。
ふう……
今更後悔しても遅い。
反省は大事だが過ぎたことに拘り過ぎも良くない。
未来が大事だ。前を向く。
最終章へ。
その前に……
歴史を少しだけ振り返る。
海賊史。
一隻の船が何も知らずに危険地帯に侵入。
海賊たちの格好の獲物となった。
ハアハア
ハアハア
「もうダメ! 」
「ここを通りたければ通行料を払え! 」
海賊船が二隻通行を邪魔する形で止まる。
完全に進路を塞がれてしまった。
「分かりました。おいくらでしょうか? 」
ここは相手の機嫌を損ねないように従う。
「物分かりがいいな。よし積み荷を全部頂く」
「それはちょっと…… 」
「抵抗する者は消えてもらう。いいな? 」
ははは!
うおおお!
「いいぞ! いいぞ! 」
海賊たちは酒を喰らい大騒ぎ。
本来なら気づくであろう違和感に気付いていない。
「これが全てです。お引き取り下さい」
「おいおい。まだ隠しているだろう? 全部と言ったはずだ」
「これは献上する品。どうかこれ以上はお止めください」
海賊相手に粘り強く交渉するも奴らも慣れている。
「さっさと出せ! 」
脅しをかける。
「分かりました。少々お時間を頂ければ」
「嫌だね! お前は信用ならない」
まさかこの私を信用していた?
「これだけは! これだけは! お止めください」
「中身は何だ? 正直に答えろ! 」
「金銀財宝です」
「ほう。それは珍しい物を運んでいるな。まず半分をこちらの船に積め! 」
「どうか…… 」
「お前らの命と引き換えだ。安い物だろう」
「しかし…… 」
「親分来ちまいますぜ! 」
手下が騒ぎ出した。
「ああ分かった」
海賊たちはお上を恐れている。
この海域では毎日のように船舶が海賊に襲われてそのほとんどが殺されるか沈められるかのどちらかで警戒海域でもあり巡視船が目を光らせている。
悪党にとってはやりづらいことこの上ない。
だから交渉役を引き受け、引き延ばし作戦をしている。
金銀財宝が入った宝箱を慎重に移していく手下たち。
「これで最後です」
「今だ! 」
隙を突く。これがラストチャンス。
自分の船に戻り数え始めた海賊たち。
「親分! 凄いですよ」
「馬鹿者! これは全て俺の物だ! 」
ここまでの収穫は珍しいのだろう。
奴らが金銀財宝に目が眩んでいる隙に急いで船を発進させる。
奴らは気づく様子もなくただひたすら金銀を数えている。
「発進! 」
運を味方につけた。
奴らの船とは方向が逆で仮に追い駆けようとしても大回りしなければならない。
拿捕した場所は狭い為急いで大回りすると船体に傷がつくだけでなく沈む恐れさえある。
慎重に。慎重に。
「親分! 奴ら逃げましたぜ! 」
「何? 」
「急いで! 見失ってしまう」
「ふふふ…… 馬鹿な奴らだ。どこに逃げようと言うんだ? 奴らの進む方は行き止まりだ」
「海ですぜ親分。行き止まりはないっすよ」
「馬鹿! あの辺は浅瀬になっている」
「ああそう言えば…… 」
「奴らの乗ってきた船では通り抜けるのはまず不可能。
気付いた時には浅瀬に乗り上げているか動きが取れなくなっているかのどちらかだ。追い立てられてまんまと罠にはまったのさ。」
「罠ですか…… 恐ろしい」
「だから逃げても無駄ってわけだ。あるのは無人島ぐらいのものだ」
もう袋のネズミ。
「するとキャプテンはわざと逃がして遊んでいると? 」
「ああ。少しは楽しみたい」
一時間が過ぎた頃全速力で通過しようと突っ込んでくる船。
まさか見逃すはずもない。
船はたちまち進路を塞がれてしまう。
万事休す。
「おい降りろ! 俺らを舐めやがって! 」
怒り狂うキャプテン。
交渉は意味をなさない。
「ここで沈んでもらうぞ! はっははは! 」
そう言うと船を壊しにかかる。
「止めてくれ! 」
「もう遅い! 」
「大人しく従っていればいいものを無駄な抵抗をしやがって! 」
ガンガン
ドンドン
海賊たちの怒りは相当な物。
金目の物を奪うことなくただひたすら破壊行為を繰り返す。
こうなっては成す術はない。
潔く諦めるしかない。
船は沈み乗客全員が海の藻屑と化した。
大事件。
だがどこも大々的に取り上げようとしなかった。
皆海賊の力を恐れている。
明日は我が身と言わんばかり。
そうして月日は流れた。
現在。
海賊船によって無残に切り捨てられた船舶。
だが実際には宝は沈んでいないのではないかという論調がなされるようになった。
沈没船を発見した後に中を調査したところ何も発見されなかったと言う。
この船がその時の沈没船とは断定できないがこう考えるようになった。
宝はどこかに隠されたのではないか?
可能性があるのは近くの島。
財宝は近くの無人島に隠されたのではないかとの噂が広まった。
確かに近くに島があったのは確かのようだ。
だがそれがどこか未だにはっきりしていない。
一種のホラ話として広がってしまい最近になって再び注目されている。
失われた財宝を求めてハンターたちは動き出した。
【続】
結果的に島を守ることにもなった。
一体奴らは何者だったのだろうか?
聞き出す前に息絶えた者ども。
やり過ぎたかなあ。
アイミに唆されなければこんな惨劇にはならなかったはずだ。
いくら煽られようと本来の俺だったらこんなことはしない。
まるで島に毒されてしまったかのように。
自分が自分でない気がする。
ふう……
今更後悔しても遅い。
反省は大事だが過ぎたことに拘り過ぎも良くない。
未来が大事だ。前を向く。
最終章へ。
その前に……
歴史を少しだけ振り返る。
海賊史。
一隻の船が何も知らずに危険地帯に侵入。
海賊たちの格好の獲物となった。
ハアハア
ハアハア
「もうダメ! 」
「ここを通りたければ通行料を払え! 」
海賊船が二隻通行を邪魔する形で止まる。
完全に進路を塞がれてしまった。
「分かりました。おいくらでしょうか? 」
ここは相手の機嫌を損ねないように従う。
「物分かりがいいな。よし積み荷を全部頂く」
「それはちょっと…… 」
「抵抗する者は消えてもらう。いいな? 」
ははは!
うおおお!
「いいぞ! いいぞ! 」
海賊たちは酒を喰らい大騒ぎ。
本来なら気づくであろう違和感に気付いていない。
「これが全てです。お引き取り下さい」
「おいおい。まだ隠しているだろう? 全部と言ったはずだ」
「これは献上する品。どうかこれ以上はお止めください」
海賊相手に粘り強く交渉するも奴らも慣れている。
「さっさと出せ! 」
脅しをかける。
「分かりました。少々お時間を頂ければ」
「嫌だね! お前は信用ならない」
まさかこの私を信用していた?
「これだけは! これだけは! お止めください」
「中身は何だ? 正直に答えろ! 」
「金銀財宝です」
「ほう。それは珍しい物を運んでいるな。まず半分をこちらの船に積め! 」
「どうか…… 」
「お前らの命と引き換えだ。安い物だろう」
「しかし…… 」
「親分来ちまいますぜ! 」
手下が騒ぎ出した。
「ああ分かった」
海賊たちはお上を恐れている。
この海域では毎日のように船舶が海賊に襲われてそのほとんどが殺されるか沈められるかのどちらかで警戒海域でもあり巡視船が目を光らせている。
悪党にとってはやりづらいことこの上ない。
だから交渉役を引き受け、引き延ばし作戦をしている。
金銀財宝が入った宝箱を慎重に移していく手下たち。
「これで最後です」
「今だ! 」
隙を突く。これがラストチャンス。
自分の船に戻り数え始めた海賊たち。
「親分! 凄いですよ」
「馬鹿者! これは全て俺の物だ! 」
ここまでの収穫は珍しいのだろう。
奴らが金銀財宝に目が眩んでいる隙に急いで船を発進させる。
奴らは気づく様子もなくただひたすら金銀を数えている。
「発進! 」
運を味方につけた。
奴らの船とは方向が逆で仮に追い駆けようとしても大回りしなければならない。
拿捕した場所は狭い為急いで大回りすると船体に傷がつくだけでなく沈む恐れさえある。
慎重に。慎重に。
「親分! 奴ら逃げましたぜ! 」
「何? 」
「急いで! 見失ってしまう」
「ふふふ…… 馬鹿な奴らだ。どこに逃げようと言うんだ? 奴らの進む方は行き止まりだ」
「海ですぜ親分。行き止まりはないっすよ」
「馬鹿! あの辺は浅瀬になっている」
「ああそう言えば…… 」
「奴らの乗ってきた船では通り抜けるのはまず不可能。
気付いた時には浅瀬に乗り上げているか動きが取れなくなっているかのどちらかだ。追い立てられてまんまと罠にはまったのさ。」
「罠ですか…… 恐ろしい」
「だから逃げても無駄ってわけだ。あるのは無人島ぐらいのものだ」
もう袋のネズミ。
「するとキャプテンはわざと逃がして遊んでいると? 」
「ああ。少しは楽しみたい」
一時間が過ぎた頃全速力で通過しようと突っ込んでくる船。
まさか見逃すはずもない。
船はたちまち進路を塞がれてしまう。
万事休す。
「おい降りろ! 俺らを舐めやがって! 」
怒り狂うキャプテン。
交渉は意味をなさない。
「ここで沈んでもらうぞ! はっははは! 」
そう言うと船を壊しにかかる。
「止めてくれ! 」
「もう遅い! 」
「大人しく従っていればいいものを無駄な抵抗をしやがって! 」
ガンガン
ドンドン
海賊たちの怒りは相当な物。
金目の物を奪うことなくただひたすら破壊行為を繰り返す。
こうなっては成す術はない。
潔く諦めるしかない。
船は沈み乗客全員が海の藻屑と化した。
大事件。
だがどこも大々的に取り上げようとしなかった。
皆海賊の力を恐れている。
明日は我が身と言わんばかり。
そうして月日は流れた。
現在。
海賊船によって無残に切り捨てられた船舶。
だが実際には宝は沈んでいないのではないかという論調がなされるようになった。
沈没船を発見した後に中を調査したところ何も発見されなかったと言う。
この船がその時の沈没船とは断定できないがこう考えるようになった。
宝はどこかに隠されたのではないか?
可能性があるのは近くの島。
財宝は近くの無人島に隠されたのではないかとの噂が広まった。
確かに近くに島があったのは確かのようだ。
だがそれがどこか未だにはっきりしていない。
一種のホラ話として広がってしまい最近になって再び注目されている。
失われた財宝を求めてハンターたちは動き出した。
【続】
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