夏への招待状 失われた記憶と消えゆく少女たち 無人島脱出お宝大作戦

二廻歩

文字の大きさ
上 下
33 / 61

侵入者

しおりを挟む
 1階に下り、渡り廊下を通って中央棟へ急ぐ。
 幸い、広いロビーにも事務室にも人の気配はない。
 正面玄関のガラス戸を通して、厚い雲に覆われた空が見える。
 どうやら雨が降り出したようで、ガラスにどんどん水滴がついていく。
 一気に暗さを増した外界は、まるで余裕をなくした杏里の心象風景のようだ。
 下駄箱の列の隅が、アイテムを隠した来客用コーナーだった。
 隠してあったタオルで裸身を拭くと、まず乳首と陰部にロイヤルゼラチンを塗り込んだ。
 その上から薄いピンクのブラとパンティ、そして黒いパンティストッキングを身につけると、下着の上から白のブラウスを羽織り、黒のタイトミニを穿く。
 仕上げにフレームの細い銀縁眼鏡をかけると、杏里は社会人になったばかりのOLそのものの格好になった。
 久しぶりに衣服で肌を隠すことができ、少しほっとした気分だった。
 着替えを済ませ、ホールの大鏡の前でポーズをとってみる。
 悪くはなかった。
 露出度の高いコスチュームだけでは飽きられてしまうだろうと、あえてセレクトした地味目のアイテムである。
 が、成人女性並みに乳房と尻の発達した杏里には、ブラウスとタイトミニの組み合わせがよく似合う。
 次のターゲットは教員たちだけに、このスタイルは有効なはずだった。
 まあ、一部のロリコン教師には不評かもしれないけど…。
 ふとそんなことを思うと、苦い笑いがこみ上げてきた。
 職員室に行く途中で給湯室に寄り、水で性露丸マグナムの丸薬を喉に流し込む。
 これも下駄箱に隠してあったものである。
 残りはゴールである体育館の下駄箱に忍ばせてある一袋だけだから、今となっては貴重なエネルギー源だった。
 塗り薬と飲み薬の両方が効いてくるのを待つ。
 いい加減疲れ切っている身体の奥に火がともり、めらめらと燃え上がり始めるのがわかった。
 乳首が勃起し、薄いブラジャーの生地を押し上げる。
 一時乾きかけていた股の間のぬるぬる感も、また元に戻ってきたようだ。
 覚悟を決めて、職員室の引き戸の前に立つ。
 控えめにノックをすると、
「どうぞ」
 校長の大山のバリトンが返ってきた。
「笹原君だね。待っていたよ。何の仕掛けもないから、安心してお入り」
 半信半疑で戸を引いた。
 視界に広がったのは、いつもの職員室の光景だ。
 それぞれのデスクについて、教師たちがデスクワークにいそしんでいる。
 ただひとつ普段と異なるのは、杏里を見る彼らのまなざしが、異様にぎらついて見えることだった。
 一歩前に進み出ると、すぐ後ろで乱暴に引き戸が閉められた。
 その音を合図にしたかのように、教師たちが椅子をずらして立ち上がる。
 その時になって、ようやく杏里は気づいた。
 普段と大きく異なる、もうひとつの点に。
 デスクの陰から現れた、思わず眼を背けたくなるもの…。
 教師たちは、老若男女問わず、全員下半身裸なのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ

ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。 【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】 なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。 【登場人物】 エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。 ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。 マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。 アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。 アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。 クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。

磯村家の呪いと愛しのグランパ

しまおか
ミステリー
資産運用専門会社への就職希望の須藤大貴は、大学の同じクラスの山内楓と目黒絵美の会話を耳にし、楓が資産家である母方の祖母から十三歳の時に多額の遺産を受け取ったと知り興味を持つ。一人娘の母が亡くなり、代襲相続したからだ。そこで話に入り詳細を聞いた所、血の繋がりは無いけれど幼い頃から彼女を育てた、二人目の祖父が失踪していると聞く。また不仲な父と再婚相手に遺産を使わせないよう、祖母の遺言で楓が成人するまで祖父が弁護士を通じ遺産管理しているという。さらに祖父は、田舎の家の建物部分と一千万の現金だけ受け取り、残りは楓に渡した上で姻族終了届を出して死後離婚し、姿を消したと言うのだ。彼女は大学に無事入学したのを機に、愛しのグランパを探したいと考えていた。そこでかつて住んでいたN県の村に秘密があると思い、同じ県出身でしかも近い場所に実家がある絵美に相談していたのだ。また祖父を見つけるだけでなく、何故失踪までしたかを探らなければ解決できないと考えていた。四十年近く前に十年で磯村家とその親族が八人亡くなり、一人失踪しているという。内訳は五人が病死、三人が事故死だ。祖母の最初の夫の真之介が滑落死、その弟の光二朗も滑落死、二人の前に光二朗の妻が幼子を残し、事故死していた。複雑な経緯を聞いた大貴は、専門家に調査依頼することを提案。そこで泊という調査員に、彼女の祖父の居場所を突き止めて貰った。すると彼は多額の借金を抱え、三か所で働いていると判明。まだ過去の謎が明らかになっていない為、大貴達と泊で調査を勧めつつ様々な問題を解決しようと動く。そこから驚くべき事実が発覚する。楓とグランパの関係はどうなっていくのか!?

総務の黒川さんは袖をまくらない

八木山
ミステリー
僕は、総務の黒川さんが好きだ。 話も合うし、お酒の趣味も合う。 彼女のことを、もっと知りたい。 ・・・どうして、いつも長袖なんだ? ・僕(北野) 昏寧堂出版の中途社員。 経営企画室のサブリーダー。 30代、うかうかしていられないなと思っている ・黒川さん 昏寧堂出版の中途社員。 総務部のアイドル。 ギリギリ20代だが、思うところはある。 ・水樹 昏寧堂出版のプロパー社員。 社内をちょこまか動き回っており、何をするのが仕事なのかわからない。 僕と同い年だが、女性社員の熱い視線を集めている。 ・プロの人 その道のプロの人。 どこからともなく現れる有識者。 弊社のセキュリティはどうなってるんだ?

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

日月神示を読み解く

あつしじゅん
ミステリー
 神からの預言書、日月神示を読み解く

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純一
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【完結】心打つ雨音、恋してもなお

crazy’s7@体調不良不定期更新中
ミステリー
 主人公【高坂 戀】は秋のある夜、叔母が経営する珈琲店の軒下で【姫宮 陽菜】という女性に出逢う。その日はあいにくの雨。薄着で寒そうにしている様子が気になった戀は、彼女に声をかけ一緒にここ(珈琲店)で休んでいかないかと提案した。  数日後、珈琲店で二人は再会する。話をするうちに次第に打ち解け、陽菜があの日ここにいた理由を知った戀は……。 *読み 高坂戀:たかさかれん 姫宮陽菜:ひめみやはるな *ある失踪事件を通し、主人公がヒロインと結ばれる物語 *この物語はフィクションです。

処理中です...