夏への招待状 失われた記憶と消えゆく少女たち 無人島脱出お宝大作戦

二廻歩

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登頂

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博士はちっとも分かってくれない。
どうしたら理解してくれるのか。
助手は助手なのか? 人間ではないのか?
博士は俺をあくまで助手として扱う。
対等な関係を築こうとは一切考えてないらしい。
「分かった分かった。分かったよ! 」
博士が折れた?
「何が分かったんですか? 」
「君の苦労も知らないで悪かった。これでいいか? 」
口だけだ。やはりちっとも理解しようとしてくれない。
憎たらしい。何の反省も後悔もしてないと見える。
ただ改善の見込みもありそうだ。
「だったら形で示してくださいよ」
「しかし私ももう年だ。こういう力仕事は若い者に任せるのが一番だ」
確かに……
結局博士に乗せられてしまう。
しまった! うまいこと丸め込まれた。

「重いよ! 」
「もうすぐだ! 」
「まだですか? 」
「ほら見えてきた」
結局博士は何も持ってはくれなかった。
発掘道具を抱え上を目指す。
「どうだね。あそこが頂上だ」
「あれですか? 」
見えるか!
適当に合わせる。
荷物が重すぎて下しか見えない。
そもそも博士が邪魔をしている気がする。
「うん。ここからだいたい一キロってところかな」
まだだいぶある。
半分を過ぎた辺り。
ただ勾配は激しいが回り道をしないため時間のロスは少ない。
登山開始から一時間少々。目前に迫った頂上。
どんどん息が荒くなる。
「ほらダッシュ! 」 
先に到着した博士のスパルタ。
無茶を言いやがる。
ゼイゼイ
ハアハア
「息が上がって言葉にならない」
「急げ! 」
「くそ! 助手だと思ってこき使いやがって今に見てろ! 」
博士への恨みをパワーに最後の力を振り絞る。

「着いた! 」
「ようやくか。遅いぞ! 」
「もうダメ! 」
荷物を放って地べたに這いつくばる。
「おいみっともないぞ! 」
「誰も見てませんよ。無人島なんだから」
「口答えするな! 」 
「はいはい」
「早く準備に取り掛かれ! 」
息が切れ体力も失われ動くことさえ不可能なのに無茶言いやがる。
「五分休憩お願いします」
「仕方がない。認めてやろう。五分間だけだぞ」
山小屋が見える。
いつ頃からあったのかは定かではないがどうやら最近まで管理されていたようだ。
博士はいつの間にか姿を消していた。寛いでやがるな。
山小屋は小さくすぐに満杯となりそうだ。
多くても五人が限度だろう。

缶詰で体力を回復。
水分補給を忘れない。
これで熱さでどうにかなることは無いだろう。
荷物からも解放され体力も回復した今、景色を楽しむ余裕も出てきた。
「うわ! 」
突風が吹いた。危うくバランスを崩し落ちそうになる。
危ない危ない。
足がすくむ。
高いのはやはり苦手だ。
とりあえずあまり下を見ないように辺りを見回す。
絶好のスポット。
北は緑から海となっている。
東は緑一色。建物の一部が見える。
南と西は青一色。海が見えるのみ。
双眼鏡を持ってくればよかった。
もしかしたら何か見えるかもしれない。
息を吸う。
うーんいい気持ち。
太陽は直接当たるものの高度が高い為涼しい。
錯覚だろうか?
とりあえず手を口に添える。
「ヤッホー! ヤッホー! 」
「おい。いつまで休んでるんだ! 」
恥ずかしい所を見られてしまった。
「いいから早くしろ! 」
「くだらないことしてる暇があったら体を動かせ! 」

発掘開始!
「ちょっと待ってください。本当にここにあるんですか? 
「ああ。暗号を解読した結果ここが一番可能性が高い」
「本当かなあ…… 」
「ブツブツ文句を言わずにやるんだ! 」
「へいへい」
「全てを掘り返すつもりでやれ! 」
「博士は? 」
「私は山小屋で作戦を練る」
また楽な方を選びやがった。人の苦労も知らないでまったく……
「そんなこと言わないで一緒に頼みますよ」
スコップを渡す。
渋々手に取り掘り返す博士。
ただ闇雲に掘り返すばかりで深さも分からなければ目印もないのでは徒労に終わることは目に見えている。
もちろんそんなことは分かっている。
だが発掘作業とは本来そう言うものだ。
当たりをつけてもカケラ一つ見つからないことが往々にしてある。
だがあきらめてはいけない。
仮になくてもなかったことを発見したのは大きい。
失敗したら別の場所を探せばいい。

ザクザク
ザクザク
「ありませんね」
「こっちも全滅だ」
太陽が沈み始めた。
「どうしましょう博士? もう帰りますか? 」
「馬鹿を言うな! 」 
「でも…… 」 
「今夜はここで泊まるぞ! 」
「ええっ? 冗談がきついっすよ」
「嘘でも冗談でもない! もともと宝さがしに来たんだからな」
「分かってますよ…… 」
ようやく慣れてきた寝場所を変えられるのは辛い。
環境は最悪。
博士は気にしていないようだが埃だらけで雑魚寝するのはちょっと……

缶詰を開ける。
甘辛だれの豚肉。
空腹にはもってこい。一瞬で腹の中へ。
「まったく少しは味わえ! 」
博士の小言は無視。無視。
仕方なく山小屋で一泊。
博士と仲良く雑魚寝。
埃臭く息も詰まりそうだがそんなことを考える暇も無く夢の中へ。

                      【続】
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