夏への招待状 失われた記憶と消えゆく少女たち 無人島脱出お宝大作戦

二廻歩

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発掘

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六日目。
宝さがし本番。
この島のどこかに埋められているのは間違いない。
朝早くに行動開始。
スコップがずっしりくる。
まだどこにあるかもわからない前から発掘道具を持つ羽目に。
「博士」
「いいから付いて来い! 」
重くてやってられない。
宝に目が眩んだ自分を恨むしかない。
とりあえず最初のポイントへ。
管理された一画にやって来た。
「博士。そろそろ教えてください」
「何? 分からないと言うのか? 暗号にはこの場所らしき絵が描かれている」
「この暗号は絵になっていると? 」
「そうだ。ここに手がかりがあるはずだ」
「無理がありますよ。勝手に思い込んでるだけでは? 」
「いいから。言う通りにしろ! 他に手がかりはないんだ」

絵の中心。
リンゴの木の下を掘り返す。
ザクザク
サクサク
手応えがあった。
石に当たったらしい。
くそ! ぬか喜びさせやがって!
「ありませんね」
「よし次! 」
リンゴの木の周りを掘り返す。
傷つけないように丁寧に掘り返す。
「あったか? 」
「いえ、まったく! 」
半日を費やした。
だが手がかり一つ見つからなかった。
ここには無いらしい。
場所を変えよう。
今度はココナッツの辺りを掘る。
闇雲に掘り続ける。
もう暗くなってきた。
「ダメだ! 今日はこれまで! 」
帰る。
今日一日は徒労に終わった。
このまま行けば島中の土を掘り返す羽目になりそうだ。

「ご馳走さま」
食事を終え明日に向けて話し合う。
「手掛かりもなく適当に掘り返しても意味がありませんよ」
物凄く効率が悪い。
「それくらい分かっておる。しかし他にはどうすることもできないのも事実だ」
「やはり場所を特定しましょう」
「どうやって? 」
どちらが助手か分からない。
「いいですか。海賊から逃れ島に上陸したのならすぐにでも隠したいはずだ。
そしてすぐに一時間程で海に戻った。
この間に隠すには着いてすぐの場所が有力。
ビーチにひっそり隠したとか」
「有り得ない! いやそんな不確かな場所は選ばない
潮の満ち引きでどうにでもなるような場所は危険すぎる」
「ではどこだと? 」
「やはり奥の方ではないかなあ」
「時間が…… 」
「それなんだが。日記には詳しくは書かれていないが一人以上の者が島に残った可能性がある。その者がゆっくりと島のどこかに隠したんだとすると厄介だ」
「でも…… 」
「管理された一画があっただろ。もしもその者の子孫が管理を引き継いでいたとしたら人の手があっても不思議ではない。
我々はてっきり宝さがしの為にこの島を管理していたと考えていたがただ単に古くからの言いつけを守っていた者が最近まで住んでいたのかもしれない」
「本当ですか? 」
にわかには信じられない。
「いやこれは私なりの仮説だ。変なところがあれば指摘してくれ。反論しても構わない」
「では一つだけ。なぜその子孫は姿を消したのでしょう? 」
「年老いてそれどころではないから。引き継ぐ者も現れないから。そんなところだろう」
「うーん。そうですかね」
「待てよ。隠れているだけかもしれない。
我々が居なくなるのをじっと待っているなんてな」
「ひええ! 夜出歩くのはよそう」
「ははは! 冗談だ。真に受けるな。化け物ではないんだから。
だがな私はそうであって欲しいと思っている。探し出して聞きだせば一発だ。楽だぞ。」
「そう言うものですかね? 」
「まあ…… いるかもしれないしいないかもしれない。神のみぞ知るって奴だ」
「さあもう寝よう。明日も早いことだし」
「はい。最後に一つだけ教えてください」

どうしても確認しておきたいことがある。
「博士が連れてきた助っ人はどこにいるんですか? 」
「ううん? そんな奴は知らん! 」
「でも宝さがしに後から合流するような話がありませんでしたか? 」
「ああ。それは君を心配させまいとついた嘘だ」
「ではここには誰も来ないんですか? 」
「ああ。知らせる訳がないだろ! 宝を横取りされるリスクが高まるだけだ」
発掘仲間が増えれば楽できると思っていたのに。この人メチャクチャだよ。
当てが外れた。
完全にはめられた。

七日目。
上陸してから七日目。
あれから一週間が経過した。
だが進展は見られない。 
当てもなく彷徨い時間だけが過ぎて行った。
「博士帰りましょうよ! 」
「ホームシックにでもなったか? 」
「いえ。でも俺もやることがありますしいったん戻ってはいかがでしょう? 」
「馬鹿者! もう少しだと言うのに我慢ができん奴だ」
「しかし…… 」
「その間に他の者に発見されたらどうする気だ? 」
「運命だと思って諦めるとか…… 」
「さあ行くぞ! 」
一週間は長すぎる。
博士は良い。自分で望んだこと。俺は違う。
ふうー
ため息を吐く。
仕方がないのかな……
諦めて博士が気の済むまで付き合うことにした。
まず山を探す。
今まで一度も探索していない山を徹底的に調べ上げることにした。
宝!
絶対に何かあるはずだ。
気合いを入れる。
「行くぞ! 」
「おう! 」
スコップやシャベルといった発掘道具を持っての登山は骨が折れる。
博士は知らん顔で前を歩く。
「ちょっと待ってくださいよ。重い! 」
「我慢しろ! もう少しの辛抱だ」
「重い! 重い! 少しは持ってくださいよ」
軽装の博士。非常食の入ったカバンをさも重そうに辛そうに持つ演技をする。
「年寄りをこき使うものではない! 助手の立場を忘れたか! 」
勝手なことを言いやがる。
「知りませんよ博士。俺がへばったらどうするつもりですか? 」
島には二人っきり。他に頼るものなどいない。
へばられてもやる気をなくされても怪我されても困るのは博士の方だ。
揺さぶりをかける。
「いいんすよ。俺は帰っても…… 」
「君…… 」
あくまで助手として扱う。
対等な関係を築こうとは一切考えてないらしい。

                       【続】
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