16 / 61
暗号解読中
しおりを挟む
翌日。
起きると何やら騒々しい。
まさか……
亜砂が起こしに来た。
「ゲンジ! 船! 船だって! 」
「何? どこだ? 」
「ほら。遠くの方に見えるよ! 」
「なぜ早く知らせない? 」
「そんなこと言っても…… 」
亜砂に八つ当たりしても始まらない。
急いでコテージから出る。
ちくしょう! あんな遠くを走るなんてありかよ!
笛を吹いても聞こえるはずがない。
一応首にかけた笛を鳴らす。
強く長く。
しかしまったく反応が無い。
当たり前だ。船は水平線の遥か遠くなのだから。
残念……
脱出する最後のチャンスを逃した?
「あーあ。うふふ…… 」
「ずいぶん落ち着いてるな亜砂」
「ゲンジには悪いけどこれでゆっくりできるでしょう」
「くそ! 皆を集めて作戦会議だ! 」
「ええっ? ゆっくりしようよ。どう一緒に泳がない? 」
白のビキニが誘惑する。
「それは俺だって…… 」
「さあ泳ぎましょう」
亜砂に誘われるまま海へ。
うーん。気持ちいい。だが今はそんなことしている時ではない。
「行くぞ! 」
亜砂は渋々海から上がる。
目的を忘れてはいけない。
とにかくここから脱出することだ。
運が良ければお宝も。
全員を集め話し合う。
「誰かこの暗号が分かる奴はいないか? 」
「何これ? 」
リンには期待してない。
「えっとね…… 」
何か閃いたらしい。
N-1 E-20.5 S-3 ③ WA
N-1 W-17.5 S-1.5 ② RA
N^1 W-25 S-3 ① FL
N-! W-25 S-30 ④ JP
「全部Nから始まってるね」
珍しくリンの指摘が的を得ている。
「リン。何か分かるか? 」
首を振る。
「馬鹿だなあリンは」
「こら! 」
「お兄ちゃん…… 」
リンがうるんだ瞳で訴えかける。
「リン…… 」
つい本能で抱きしめてやりたくなる。
「ほらリンを甘やかさないの! 」
アイミは手厳しい。
大きな胸と大きな瞳で勝ち誇る。
「アイミ。今は仲間割れをしている時じゃない。分かるなら教えてくれ」
「どうしようかな…… 」
もったいぶって言おうとしない。
その隙にムーちゃんが手を挙げる。
「このNは何らかの記号でしょう。うん? N以外にもSもEもWもある」
「これはもう分かるんじゃないゲンジ? 」
亜砂が口を挟む。まるで最初から知っているかのような物言い。引っかかる。
「ニュースとか? 」
「ええ。だから? 」
「東西南北。そうか方角を現しているのか」
「ちょっと待ってください」
今まで見守っていた空蝉が発言する。
「するとこの数字は距離になりませんか? 」
「偉いぞ空蝉」
「いえそれほどでも。出しゃばった真似をしました。申し訳ございません」
なぜか謝る彼女。感謝されることはあっても叱責されるいわれはないはず。
だがなぜか表情が硬い。まるで俺を恐れているような態度。
違和感がある。
「それから他には? 」
「距離だとするとキロはあり得ないんじゃない」
「いやそうとも限らない。海に隠した可能性もあるしな」
「考え過ぎじゃない」
「そうですね。この島で考えたほうがよさそうですよ」
ムーちゃんは冷静だ。
「リンは分かったの? 」
アイミがからかう。
「えっとね…… キロじゃないなら…… 分かった! グラムだ! 」
「はっははは! 」
アイミに乗せられた哀れなリン。
「ちょっと止めなってば。リンがかわいそうじゃない」
「何か言った? 」
アイミとムーちゃんの間に微妙な空気が流れた。
それを振り払ったのが亜砂。。
「もう二人とも止めなよ。リンは頑張った方じゃない」
リンが下を向く。
元気いっぱいのリンの姿が見えなくなってしまった。
「答えはこう。キロでないならメートルでしょう? 」
「正解! 」
「実は私見つけた時気になって勝手に測ってみたんだ。そうしたら予想通り。
コテージから海までが大体百メートル」
「うんうん」
「だったらさあ。この数字の1=百メートルなんじゃないかな」
物凄い発想力と行動力。
らしくない亜砂を少々見直した。
ただの白ビキニのお姉さんではなかったようだ。
「よしこの勢いで暗号を全て解き明かそう! 」
「おう! 」
皆の力が合わさり宝に迫る。
果たしてこのまま上手く行くのだろうか。
ゴホゴホ。
アガガガ。
「どうしたのゲンジ? 」
アイミがこちらを見る。
「済まん済まん。ちょっと喉がな…… 夏風邪かな」
「あっそう! 」
アイミは素っ気ない。
「本当に大丈夫ですか? 」
「ああ今日は早く寝るよ。後のことはお前に任せるな空蝉」
「では今日はこれくらいにしてまた次の機会に」
ムーちゃんが締める。
よくやったぞ皆。もうあと少しだ。
これなら一人の力で充分だ。
ゆっくり考えながら休むとしよう。
先にコテージに戻る。
地図と暗号を見比べる。
うーん。違うか。
これでもない。まさかだとしたら……
この地図と暗号は間違えなく関係があるはず。
だとしてこのローマ字は何だ?
ダメだ。もう少し手掛かりがないと無理そうだ。
ゴホゴホ
ゴホゴホ
咳が止まらない。これはまずい。
ベットで横になる。
おやすみなさい。
今日はベットを独り占め。
さすがに他の者と一緒に寝るわけにはいかない。
いいような悪いような。
嬉しいような悲しいような。
複雑な気分だ。
【続】
起きると何やら騒々しい。
まさか……
亜砂が起こしに来た。
「ゲンジ! 船! 船だって! 」
「何? どこだ? 」
「ほら。遠くの方に見えるよ! 」
「なぜ早く知らせない? 」
「そんなこと言っても…… 」
亜砂に八つ当たりしても始まらない。
急いでコテージから出る。
ちくしょう! あんな遠くを走るなんてありかよ!
笛を吹いても聞こえるはずがない。
一応首にかけた笛を鳴らす。
強く長く。
しかしまったく反応が無い。
当たり前だ。船は水平線の遥か遠くなのだから。
残念……
脱出する最後のチャンスを逃した?
「あーあ。うふふ…… 」
「ずいぶん落ち着いてるな亜砂」
「ゲンジには悪いけどこれでゆっくりできるでしょう」
「くそ! 皆を集めて作戦会議だ! 」
「ええっ? ゆっくりしようよ。どう一緒に泳がない? 」
白のビキニが誘惑する。
「それは俺だって…… 」
「さあ泳ぎましょう」
亜砂に誘われるまま海へ。
うーん。気持ちいい。だが今はそんなことしている時ではない。
「行くぞ! 」
亜砂は渋々海から上がる。
目的を忘れてはいけない。
とにかくここから脱出することだ。
運が良ければお宝も。
全員を集め話し合う。
「誰かこの暗号が分かる奴はいないか? 」
「何これ? 」
リンには期待してない。
「えっとね…… 」
何か閃いたらしい。
N-1 E-20.5 S-3 ③ WA
N-1 W-17.5 S-1.5 ② RA
N^1 W-25 S-3 ① FL
N-! W-25 S-30 ④ JP
「全部Nから始まってるね」
珍しくリンの指摘が的を得ている。
「リン。何か分かるか? 」
首を振る。
「馬鹿だなあリンは」
「こら! 」
「お兄ちゃん…… 」
リンがうるんだ瞳で訴えかける。
「リン…… 」
つい本能で抱きしめてやりたくなる。
「ほらリンを甘やかさないの! 」
アイミは手厳しい。
大きな胸と大きな瞳で勝ち誇る。
「アイミ。今は仲間割れをしている時じゃない。分かるなら教えてくれ」
「どうしようかな…… 」
もったいぶって言おうとしない。
その隙にムーちゃんが手を挙げる。
「このNは何らかの記号でしょう。うん? N以外にもSもEもWもある」
「これはもう分かるんじゃないゲンジ? 」
亜砂が口を挟む。まるで最初から知っているかのような物言い。引っかかる。
「ニュースとか? 」
「ええ。だから? 」
「東西南北。そうか方角を現しているのか」
「ちょっと待ってください」
今まで見守っていた空蝉が発言する。
「するとこの数字は距離になりませんか? 」
「偉いぞ空蝉」
「いえそれほどでも。出しゃばった真似をしました。申し訳ございません」
なぜか謝る彼女。感謝されることはあっても叱責されるいわれはないはず。
だがなぜか表情が硬い。まるで俺を恐れているような態度。
違和感がある。
「それから他には? 」
「距離だとするとキロはあり得ないんじゃない」
「いやそうとも限らない。海に隠した可能性もあるしな」
「考え過ぎじゃない」
「そうですね。この島で考えたほうがよさそうですよ」
ムーちゃんは冷静だ。
「リンは分かったの? 」
アイミがからかう。
「えっとね…… キロじゃないなら…… 分かった! グラムだ! 」
「はっははは! 」
アイミに乗せられた哀れなリン。
「ちょっと止めなってば。リンがかわいそうじゃない」
「何か言った? 」
アイミとムーちゃんの間に微妙な空気が流れた。
それを振り払ったのが亜砂。。
「もう二人とも止めなよ。リンは頑張った方じゃない」
リンが下を向く。
元気いっぱいのリンの姿が見えなくなってしまった。
「答えはこう。キロでないならメートルでしょう? 」
「正解! 」
「実は私見つけた時気になって勝手に測ってみたんだ。そうしたら予想通り。
コテージから海までが大体百メートル」
「うんうん」
「だったらさあ。この数字の1=百メートルなんじゃないかな」
物凄い発想力と行動力。
らしくない亜砂を少々見直した。
ただの白ビキニのお姉さんではなかったようだ。
「よしこの勢いで暗号を全て解き明かそう! 」
「おう! 」
皆の力が合わさり宝に迫る。
果たしてこのまま上手く行くのだろうか。
ゴホゴホ。
アガガガ。
「どうしたのゲンジ? 」
アイミがこちらを見る。
「済まん済まん。ちょっと喉がな…… 夏風邪かな」
「あっそう! 」
アイミは素っ気ない。
「本当に大丈夫ですか? 」
「ああ今日は早く寝るよ。後のことはお前に任せるな空蝉」
「では今日はこれくらいにしてまた次の機会に」
ムーちゃんが締める。
よくやったぞ皆。もうあと少しだ。
これなら一人の力で充分だ。
ゆっくり考えながら休むとしよう。
先にコテージに戻る。
地図と暗号を見比べる。
うーん。違うか。
これでもない。まさかだとしたら……
この地図と暗号は間違えなく関係があるはず。
だとしてこのローマ字は何だ?
ダメだ。もう少し手掛かりがないと無理そうだ。
ゴホゴホ
ゴホゴホ
咳が止まらない。これはまずい。
ベットで横になる。
おやすみなさい。
今日はベットを独り占め。
さすがに他の者と一緒に寝るわけにはいかない。
いいような悪いような。
嬉しいような悲しいような。
複雑な気分だ。
【続】
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ
ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。
【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】
なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。
【登場人物】
エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。
ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。
マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。
アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。
アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。
クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。

磯村家の呪いと愛しのグランパ
しまおか
ミステリー
資産運用専門会社への就職希望の須藤大貴は、大学の同じクラスの山内楓と目黒絵美の会話を耳にし、楓が資産家である母方の祖母から十三歳の時に多額の遺産を受け取ったと知り興味を持つ。一人娘の母が亡くなり、代襲相続したからだ。そこで話に入り詳細を聞いた所、血の繋がりは無いけれど幼い頃から彼女を育てた、二人目の祖父が失踪していると聞く。また不仲な父と再婚相手に遺産を使わせないよう、祖母の遺言で楓が成人するまで祖父が弁護士を通じ遺産管理しているという。さらに祖父は、田舎の家の建物部分と一千万の現金だけ受け取り、残りは楓に渡した上で姻族終了届を出して死後離婚し、姿を消したと言うのだ。彼女は大学に無事入学したのを機に、愛しのグランパを探したいと考えていた。そこでかつて住んでいたN県の村に秘密があると思い、同じ県出身でしかも近い場所に実家がある絵美に相談していたのだ。また祖父を見つけるだけでなく、何故失踪までしたかを探らなければ解決できないと考えていた。四十年近く前に十年で磯村家とその親族が八人亡くなり、一人失踪しているという。内訳は五人が病死、三人が事故死だ。祖母の最初の夫の真之介が滑落死、その弟の光二朗も滑落死、二人の前に光二朗の妻が幼子を残し、事故死していた。複雑な経緯を聞いた大貴は、専門家に調査依頼することを提案。そこで泊という調査員に、彼女の祖父の居場所を突き止めて貰った。すると彼は多額の借金を抱え、三か所で働いていると判明。まだ過去の謎が明らかになっていない為、大貴達と泊で調査を勧めつつ様々な問題を解決しようと動く。そこから驚くべき事実が発覚する。楓とグランパの関係はどうなっていくのか!?
総務の黒川さんは袖をまくらない
八木山
ミステリー
僕は、総務の黒川さんが好きだ。
話も合うし、お酒の趣味も合う。
彼女のことを、もっと知りたい。
・・・どうして、いつも長袖なんだ?
・僕(北野)
昏寧堂出版の中途社員。
経営企画室のサブリーダー。
30代、うかうかしていられないなと思っている
・黒川さん
昏寧堂出版の中途社員。
総務部のアイドル。
ギリギリ20代だが、思うところはある。
・水樹
昏寧堂出版のプロパー社員。
社内をちょこまか動き回っており、何をするのが仕事なのかわからない。
僕と同い年だが、女性社員の熱い視線を集めている。
・プロの人
その道のプロの人。
どこからともなく現れる有識者。
弊社のセキュリティはどうなってるんだ?


イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。某大学の芸術学部でクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。かつての同級生の不審死。消えた犯人。屋敷のアトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の六人は、大学時代にこの屋敷で共に芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。グループの中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる