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リンゴの実
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昼過ぎ。
いつものように目を覚ます。
うーん良く寝た。
「起きましたかゲンジさん」
「何だ空蝉か。皆は? 」
「さあ」
上の空の空蝉。いつもと感じが違う。何かあったのだろうか?
「おいどうした? ボーっとして」
「いえ…… ゲンジさんがそれでいいなら。私は何も申しません」
「はああ? おかしいぞ」
青空教室に向かう。
「よし揃ったな。では始めようか」
「遅れてきてよく言うよ」
「何か言ったかアイミ? 」
「いえ。どうぞ」
本日は英語。
「ええっ? 」
一斉にブーイング。
「文句を言うな! 面白いぞ」
渋々受け入れる面々。
とりあえずアルファベットを書かせてから単語に移る。
「これ分かる人? 」
『APPLE』
「リンゴです」
空蝉が真面目に答える。
アイミは笑っている。
他の者も欠伸をしながら復唱。
リンだけ必至だ。
「おいリン! 間違っているぞ! 」
「どこがお兄ちゃん? 」
「先生と呼べ! Aじゃない。ANだ! 」
何度言っても理解してくれない。
「そんなのどっちだっていいよう」
「馬鹿者! 罰としてリンゴを取って来い! 」
ついつい厳しく当たってしまう。
悪い癖だ。
「ええ! お兄ちゃんどこにあるの? 」
「先生だ! 何度言えば分かる? 果物がいっぱい生っている一画があるだろ。いいから取って来い! 」
「鬼! 」
「何か言ったか? 」
「鬼…… ううんお兄ちゃん」
迷わないように地図とコンパスを渡してやる。
「分かるか? 」
「うん」
「気をつけろ! 迷ったら帰ってこれなくなるぞ」
命一杯脅す。
「そんなお兄ちゃん…… 」
不安そうに見つめる。
「大丈夫だから早く行け! 」
リンは歩き出した。
「走れ! 」
反対方向に走り出す。
「おい! 逆だ! 逆! 」
戻ってくる。
「お兄ちゃん! 」
「ほら急げ! 」
再開。
リンを待つことなく続ける。
『SVOC』
「基本だ。よし皆スペルを書け」
「ああもうかったるい! 」
アイミが音を上げる。
亜砂は眠ってしまった。
「何をやってる? 基本が大事だと言ったろ! 」
ムーちゃんがすかさず反論。
「こんなの覚えて意味あるんですか」
「あるさ。いつかここを脱出して外国に行った時に役に立つ」
「何だそれなら一生無理」
「ムーちゃんの言う通りだよ。止めた止めた」
アイミが出て行った。
「何を言ってるんだアイミ! 」
追い駆ける。
「こら待て! 」
彼女たちに教えるのは忍耐が必要だ。
「続けてください」
空蝉だけ真剣に取り組んでいる。
「よしここまで」
本日の授業を終える。
青空教室も限界かな。
うーん。難しい。
夕食用に魚を一匹釣ってコテージへ。
何かを忘れているような気がする……
まあいいか。大したことじゃないだろう。
「ゲンジさんお帰りなさい」
空蝉が確認。
「大きいですね。何て魚ですか? 」
「うーん。俺にも良く分からない。タイの一種なんじゃないか」
「そうですか…… ではお食事にしましょう」
空蝉は手際よく魚をさばく。
「へえ。上手いんだね」
「これくらい誰でもできますよ」
晩飯は空蝉の担当だ。
「そうか。でもリンには無理だろうな」
「そうかしら? そうですね」
「リンには絶対…… そうだリンはどうした? 」
「私は見てません」
まさかリンの奴…… 遅すぎる。
「心配ですね」
「まったくいつまでかかってんだ! 見てくる! 」
コテージを出て左に曲がる。
ダッシュ!
すぐに人影を捉えた。
もう夕暮れだ。
手を振ると応える。
「お兄ちゃん! リンゴ! 」
片手では持てないほどの大きさ。
夕陽にかざすリン。
光を受けた果実と少女は何とも幻想的であろうか。
コテージ。
リンはいつまでも手から放そうとしない。
「リン! 」
「だって…… 」
「デザートなんだぞ! 」
「もうお兄ちゃん。しょうがないなあ」
リンは渋々渡す。
「さあ食事にするぞ! 」
「リン。明日はココナッツお願い」
アイミがからかう。
「お兄ちゃん…… 」
「明日は頑張ろうな」
「ハーイ」
「お前らもだぞ! 」
「ハイハイ」
嫌そうに返事をする。
「まったく…… 」
「ゲンジさん。さあ一杯」
ムーちゃんが隣に座り酒を注ぐ。
「うん? これはどこから? 」
「細かいことは気にしない。さあ楽しみましょう」
ムーちゃんはいつになく積極的だ。
「ほらもう一杯」
ドンドン勧めてくる。
「もう飲めないよ」
「ゲンジさん」
「今日はムーちゃんと寝ようかな。なんちゃって…… 」
完全に酔っぱらってしまった。
ワイワイ
ガヤガヤ
勧められるまま二杯三杯と飲まされついには意識を失う。
翌日。
目覚めた時にはベットの下だった。
嵌められた。
俺が眠っちまったのを良いことにベットを占領しやがった。
うーん。
ムーちゃんの匂いがする。間違いない。
まったく言えば代わってやったのに。
うう気持ち悪い……
済まんが誰か? あれ誰もいない。どこに行っちまったんだろう。
時計を見る。
もう三時過ぎ。
皆で出かけたのかな? 仕方がないもうちょっと寝てるとしよう。
結局誰とも会うことなく夜を迎える。
もったいなかったかな。
まあいいか。こういう日もあるさ。
深く考えずに久しぶりの一人を満喫。
楽と言えば楽だ。
のんびりゆったりできて体にはいい。
【続】
いつものように目を覚ます。
うーん良く寝た。
「起きましたかゲンジさん」
「何だ空蝉か。皆は? 」
「さあ」
上の空の空蝉。いつもと感じが違う。何かあったのだろうか?
「おいどうした? ボーっとして」
「いえ…… ゲンジさんがそれでいいなら。私は何も申しません」
「はああ? おかしいぞ」
青空教室に向かう。
「よし揃ったな。では始めようか」
「遅れてきてよく言うよ」
「何か言ったかアイミ? 」
「いえ。どうぞ」
本日は英語。
「ええっ? 」
一斉にブーイング。
「文句を言うな! 面白いぞ」
渋々受け入れる面々。
とりあえずアルファベットを書かせてから単語に移る。
「これ分かる人? 」
『APPLE』
「リンゴです」
空蝉が真面目に答える。
アイミは笑っている。
他の者も欠伸をしながら復唱。
リンだけ必至だ。
「おいリン! 間違っているぞ! 」
「どこがお兄ちゃん? 」
「先生と呼べ! Aじゃない。ANだ! 」
何度言っても理解してくれない。
「そんなのどっちだっていいよう」
「馬鹿者! 罰としてリンゴを取って来い! 」
ついつい厳しく当たってしまう。
悪い癖だ。
「ええ! お兄ちゃんどこにあるの? 」
「先生だ! 何度言えば分かる? 果物がいっぱい生っている一画があるだろ。いいから取って来い! 」
「鬼! 」
「何か言ったか? 」
「鬼…… ううんお兄ちゃん」
迷わないように地図とコンパスを渡してやる。
「分かるか? 」
「うん」
「気をつけろ! 迷ったら帰ってこれなくなるぞ」
命一杯脅す。
「そんなお兄ちゃん…… 」
不安そうに見つめる。
「大丈夫だから早く行け! 」
リンは歩き出した。
「走れ! 」
反対方向に走り出す。
「おい! 逆だ! 逆! 」
戻ってくる。
「お兄ちゃん! 」
「ほら急げ! 」
再開。
リンを待つことなく続ける。
『SVOC』
「基本だ。よし皆スペルを書け」
「ああもうかったるい! 」
アイミが音を上げる。
亜砂は眠ってしまった。
「何をやってる? 基本が大事だと言ったろ! 」
ムーちゃんがすかさず反論。
「こんなの覚えて意味あるんですか」
「あるさ。いつかここを脱出して外国に行った時に役に立つ」
「何だそれなら一生無理」
「ムーちゃんの言う通りだよ。止めた止めた」
アイミが出て行った。
「何を言ってるんだアイミ! 」
追い駆ける。
「こら待て! 」
彼女たちに教えるのは忍耐が必要だ。
「続けてください」
空蝉だけ真剣に取り組んでいる。
「よしここまで」
本日の授業を終える。
青空教室も限界かな。
うーん。難しい。
夕食用に魚を一匹釣ってコテージへ。
何かを忘れているような気がする……
まあいいか。大したことじゃないだろう。
「ゲンジさんお帰りなさい」
空蝉が確認。
「大きいですね。何て魚ですか? 」
「うーん。俺にも良く分からない。タイの一種なんじゃないか」
「そうですか…… ではお食事にしましょう」
空蝉は手際よく魚をさばく。
「へえ。上手いんだね」
「これくらい誰でもできますよ」
晩飯は空蝉の担当だ。
「そうか。でもリンには無理だろうな」
「そうかしら? そうですね」
「リンには絶対…… そうだリンはどうした? 」
「私は見てません」
まさかリンの奴…… 遅すぎる。
「心配ですね」
「まったくいつまでかかってんだ! 見てくる! 」
コテージを出て左に曲がる。
ダッシュ!
すぐに人影を捉えた。
もう夕暮れだ。
手を振ると応える。
「お兄ちゃん! リンゴ! 」
片手では持てないほどの大きさ。
夕陽にかざすリン。
光を受けた果実と少女は何とも幻想的であろうか。
コテージ。
リンはいつまでも手から放そうとしない。
「リン! 」
「だって…… 」
「デザートなんだぞ! 」
「もうお兄ちゃん。しょうがないなあ」
リンは渋々渡す。
「さあ食事にするぞ! 」
「リン。明日はココナッツお願い」
アイミがからかう。
「お兄ちゃん…… 」
「明日は頑張ろうな」
「ハーイ」
「お前らもだぞ! 」
「ハイハイ」
嫌そうに返事をする。
「まったく…… 」
「ゲンジさん。さあ一杯」
ムーちゃんが隣に座り酒を注ぐ。
「うん? これはどこから? 」
「細かいことは気にしない。さあ楽しみましょう」
ムーちゃんはいつになく積極的だ。
「ほらもう一杯」
ドンドン勧めてくる。
「もう飲めないよ」
「ゲンジさん」
「今日はムーちゃんと寝ようかな。なんちゃって…… 」
完全に酔っぱらってしまった。
ワイワイ
ガヤガヤ
勧められるまま二杯三杯と飲まされついには意識を失う。
翌日。
目覚めた時にはベットの下だった。
嵌められた。
俺が眠っちまったのを良いことにベットを占領しやがった。
うーん。
ムーちゃんの匂いがする。間違いない。
まったく言えば代わってやったのに。
うう気持ち悪い……
済まんが誰か? あれ誰もいない。どこに行っちまったんだろう。
時計を見る。
もう三時過ぎ。
皆で出かけたのかな? 仕方がないもうちょっと寝てるとしよう。
結局誰とも会うことなく夜を迎える。
もったいなかったかな。
まあいいか。こういう日もあるさ。
深く考えずに久しぶりの一人を満喫。
楽と言えば楽だ。
のんびりゆったりできて体にはいい。
【続】
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