夏への招待状 失われた記憶と消えゆく少女たち 無人島脱出お宝大作戦

二廻歩

文字の大きさ
上 下
7 / 61

ラストピース・空蝉 ウツセミルゲンジ

しおりを挟む
コテージを離れ西に向かう。
暑い! 暑い!
太陽の力が強まってきた。
もうダメだ。早く……
水筒の水に手をつける。
まだ登山さえしていないのにこの有り様。このままではすぐに命の水が尽きてしまう。
引き返すか? まあ何とかなるだろう。
初登山だと言うのに本当に大丈夫だろうか?
不安が残る。
あれ? 何か思い出したような気がする。
まあいいか。ただの勘違いさ。
足が重い。
まるで体が進むのを拒絶しているかのようだ。

水筒の残りを確認。
水分補給はこまめにしなくては倒れてしまう。だが飲み過ぎにも気をつけなくてはいけない。
さあ行くぞ!

姿を見せない少女たち。
まだ俺のことを信じていないのか?
誰も居ないこの島でせっかく出会った貴重な仲間だと言うのに。
みんなどこへ行ってしまったのか?
まあ彼女たちにも事情と言うものがある。
なるべく尊重したいが少なくても何か言ってからにして欲しい。
心配するじゃないか。
また独りぼっちだ。
くそ! くそ! くそ!
不満ばかりが溜まる。
そのうち爆発しかねない。
とにかく山に行くとしよう。

その前に……
登山する前に果樹園へ立ち寄る。
ヤシの実とバナナをお見舞いの品にする。
気に入ってくれるだろうか?

さあさっそく登山開始。
とは言ったものの肝心の亜砂が見当たらない。
待ち合わせしたはずだが未だに姿を現さない。
先に行ってしまったのか?
しょうがない。先に進もう。
頂上を目指して山を登る。
緑に覆われた道なき道をひたすら開拓。
暑い!
喉が渇いた!
疲れたよう!
うおおお!
誰かに聞こえる訳ではないが叫んでみる。
ああ虚しい。
何か手掛かりは……
発見。道だ。
人の手が入った登山道が運よく見つかった。
これで頂上まで行ける。
さあ歩くぞ!

一時間後。
はあはあ
はあはあ
ようやく頂上が見えてきた。
頂上は狭く山小屋があるだけ。
念のために中を確認。
だがまったく使っていないのか埃だらけで山小屋としての役割を果たせていない。
まあこんなものか。
どうやら誰もいないらしい。
無駄足だったか?
アイミたちが隠れているはずもない。
頂上の空気を思いっ切り吸い込む。
あー気持ちいい。
深呼吸して下山開始。

登山口まで降りる。
うん? まだあるぞ。
少し下るとボロボロの一軒家が見えた。
隠れ家発見。
まさか……
念のため確認。
「おーい! 誰かいませんか? 」
ゴホゴホ
ゴホゴホ
風邪を拗らしたのか息が苦しそうだ。
「あの…… 」
「すいません。今は体調を崩していまして…… 」
妙に熱っぽい。
セクシーな声に魅了されてしまう。
「突然押しかけてすみません」
彼女は苦しそうに咳き込む。
大丈夫だろうか?
彼女が亜砂の言っていた女の子だろう。
「あなたは? 」
「私は空蝉。どうかよろしく」
「俺はゲンジ。お見舞いにきたんだけど…… 」
家には空蝉以外いない。
「他の奴は誰も来てない? 」
「ええ。今日は誰も」
空蝉の話を聞くことにした。

元々病弱だと言う。今はだいぶ改善されたのだがやはり暑さは侮れない。
特に日差しの強い午後はどうにもならないらしい。
「ただの風邪ですから。もう明日にでも良くなっていますよ」
和服姿の彼女。
高貴な身分の娘なのか上品な仕種に言葉遣い。
ついついこちらも丁寧になってしまう。

「何か飲み物でも…… 」
ゴホゴホ
ゴホゴホ
立ち上がり動こうとする。
「俺は大丈夫ですから」
「申し訳ありません」
その場で座り込む。
はだけた裾から見えるほっそりとした足は白く少しだけ赤みがかっている。
まるで人形のようだ。
「二、三日も大人しくしてれば…… 完治しますから…… 」
「無理をすることは無い。俺が毎日通ってやるから」
「そこまでしていただかなくても…… 」
「ははは! 気にするな! 」
迷惑そうに下を向く。
まずかったかな……
女は礼を述べて横になる。
これ以上は迷惑だ。
帰るとしよう。

まったくあいつらは何でこないんだ!
姿を見せない少女たち。
何か変だ。
まあいいか。
結局今日も亜砂たちに会うことは無かった。
コテージに戻り一人寂しく飯を食う。

それから三日が過ぎた。
空蝉の体調は良くなり血色も良く、元気を取り戻した。
通った甲斐があったと言うものだ。

                  【続】

五人目の少女・空蝉。
これでようやく主要キャラクターが揃った。

 登場人物紹介

ゲンジ 謎多き主人公。
    生まれも育ちも不明。
    何らかの理由でこの島にやって来た。
    名前さえも不確か。
    過去のトラウマから高所恐怖症と水恐怖症(軽い)
    記憶喪失は本当か?
    朝起きられない。
 
博士  亜砂の口から洩れた人物。
    どうやらゲンジと関係があるらしい。
    ゲンジの記憶を取り戻す突破口。
    博士と言うぐらいだから偉いのだろう。
    所在不明。
    今どこにいるのか?
    なぜ姿を見せないのか?

  キャラクター紹介

 ヒロインたち

アイミ 第一の少女。
    目がぱっちりしていてかわいらしい。
    胸が大きくゲンジと過去に何かあったらしい。
      
ムーちゃん 第二の少女。
      アイミをも凌ぐ美少女。
      本名は明かされていない。

リン   人懐っこい性格。
     成長期なのか胸はない。
     伸びた服のせいで胸元が見え隠れする。
     見た目は幼い。
     皆の中で一番小さくて幼い。

亜砂   大胆な白の水着を着用。
     泳ぎが得意。
     博士の情報をつい話してしまう。
     少し抜けているところがある。
                
空蝉   最後の少女。
     病弱で儚い。
     和服が似合う上品な女性。
     
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ

ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。 【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】 なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。 【登場人物】 エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。 ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。 マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。 アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。 アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。 クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。

磯村家の呪いと愛しのグランパ

しまおか
ミステリー
資産運用専門会社への就職希望の須藤大貴は、大学の同じクラスの山内楓と目黒絵美の会話を耳にし、楓が資産家である母方の祖母から十三歳の時に多額の遺産を受け取ったと知り興味を持つ。一人娘の母が亡くなり、代襲相続したからだ。そこで話に入り詳細を聞いた所、血の繋がりは無いけれど幼い頃から彼女を育てた、二人目の祖父が失踪していると聞く。また不仲な父と再婚相手に遺産を使わせないよう、祖母の遺言で楓が成人するまで祖父が弁護士を通じ遺産管理しているという。さらに祖父は、田舎の家の建物部分と一千万の現金だけ受け取り、残りは楓に渡した上で姻族終了届を出して死後離婚し、姿を消したと言うのだ。彼女は大学に無事入学したのを機に、愛しのグランパを探したいと考えていた。そこでかつて住んでいたN県の村に秘密があると思い、同じ県出身でしかも近い場所に実家がある絵美に相談していたのだ。また祖父を見つけるだけでなく、何故失踪までしたかを探らなければ解決できないと考えていた。四十年近く前に十年で磯村家とその親族が八人亡くなり、一人失踪しているという。内訳は五人が病死、三人が事故死だ。祖母の最初の夫の真之介が滑落死、その弟の光二朗も滑落死、二人の前に光二朗の妻が幼子を残し、事故死していた。複雑な経緯を聞いた大貴は、専門家に調査依頼することを提案。そこで泊という調査員に、彼女の祖父の居場所を突き止めて貰った。すると彼は多額の借金を抱え、三か所で働いていると判明。まだ過去の謎が明らかになっていない為、大貴達と泊で調査を勧めつつ様々な問題を解決しようと動く。そこから驚くべき事実が発覚する。楓とグランパの関係はどうなっていくのか!?

総務の黒川さんは袖をまくらない

八木山
ミステリー
僕は、総務の黒川さんが好きだ。 話も合うし、お酒の趣味も合う。 彼女のことを、もっと知りたい。 ・・・どうして、いつも長袖なんだ? ・僕(北野) 昏寧堂出版の中途社員。 経営企画室のサブリーダー。 30代、うかうかしていられないなと思っている ・黒川さん 昏寧堂出版の中途社員。 総務部のアイドル。 ギリギリ20代だが、思うところはある。 ・水樹 昏寧堂出版のプロパー社員。 社内をちょこまか動き回っており、何をするのが仕事なのかわからない。 僕と同い年だが、女性社員の熱い視線を集めている。 ・プロの人 その道のプロの人。 どこからともなく現れる有識者。 弊社のセキュリティはどうなってるんだ?

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

【完結】深海の歌声に誘われて

赤木さなぎ
ミステリー
突如流れ着いたおかしな風習の残る海辺の村を舞台とした、ホラー×ミステリー×和風世界観! ちょっと不思議で悲しくも神秘的な雰囲気をお楽しみください。 海からは美しい歌声が聞こえて来る。 男の意志に反して、足は海の方へと一歩、また一歩と進んで行く。 その歌声に誘われて、夜の冷たい海の底へと沈んで行く。 そして、彼女に出会った。 「あなたの願いを、叶えてあげます」 深海で出会った歌姫。 おかしな風習の残る海辺の村。 村に根付く“ヨコシマ様”という神への信仰。 点と点が線で繋がり、線と線が交差し、そして謎が紐解かれて行く。 ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― 短期集中掲載。毎日投稿します。 完結まで執筆済み。約十万文字程度。 人によっては苦手と感じる表現が出て来るかもしれません。ご注意ください。 暗い雰囲気、センシティブ、重い設定など。

日月神示を読み解く

あつしじゅん
ミステリー
 神からの預言書、日月神示を読み解く

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純一
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

「蒼緋蔵家の番犬 1~エージェントナンバーフォー~」

百門一新
ミステリー
 雪弥は、自身も知らない「蒼緋蔵家」の特殊性により、驚異的な戦闘能力を持っていた。正妻の子ではない彼は家族とは距離を置き、国家特殊機動部隊総本部のエージェント【ナンバー4】として活動している。  彼はある日「高校三年生として」学園への潜入調査を命令される。24歳の自分が未成年に……頭を抱える彼に追い打ちをかけるように、美貌の仏頂面な兄が「副当主」にすると案を出したと新たな実家問題も浮上し――!? 日本人なのに、青い目。灰色かかった髪――彼の「爪」はあらゆるもの、そして怪異さえも切り裂いた。 『蒼緋蔵家の番犬』 彼の知らないところで『エージェントナンバー4』ではなく、その実家の奇妙なキーワードが、彼自身の秘密と共に、雪弥と、雪弥の大切な家族も巻き込んでいく――。 ※「小説家になろう」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...