夏への招待状 失われた記憶と消えゆく少女たち 無人島脱出お宝大作戦

二廻歩

文字の大きさ
上 下
2 / 61

鳥たちの楽園

しおりを挟む
翌日。
じりじりと暑い。
何度になっているのだろうか?
時計を見る。
十二時過ぎ。
あーあ。だらしないなあ。
温度はえっと…… 三十度を超えている。
この島に来て一番の暑さだ。
夏とは言え湿度が五十前後。
カラッとしていて過ごしやすい。
ただこの暑さだとスコールになるかもしれない。
念のため今日は近くで過ごすことにする。
これも無人島生活で得た数少ない経験から来るものだ。
間違いはないはず。

さあ昼飯だ。
昨日の魚の余り。
火をおこし二日目の魚に挑戦だ。
くさ! まあ大丈夫だろう。下痢になる程度だ。

外へ。
海で体を冷やす。
ああ気持ちいい。夏はやはり海が不可欠だ。
よしもういいだろう。

続いて砂浜で貝採りに励む。
飽きてしまわないように日ごとに獲物を変える。
これが長続きするコツだ。
食べられるものを選ぶ。
大きい物から小さい物まで。
手を切らないように気をつけながら。
夢中で採り続ける。

一時間が経過。
ああ、もうこんな時間か。急ごう。
コテージに置いてあった大きなスプーンが役に立つ。
ざくざく。
ざくざく。
辺りをつけたところを集中的に掘り返す。お宝さがしみたいで面白い。
あれ……
何かを思い出したような…… いや気のせいか。
目当ての貝も取れ、夕飯は確保できた。そろそろ切り上げよう。
ついつい貝採りに夢中になってしまった。

ぴとぴと
後片付けに入ってすぐ雨が降り出してきた。
最初は静かにゆっくりと。
三十分もしないで大粒の雨に。
スコールとなった。

まずい帰ろう!
コテージはもうすぐだ。
雨にぬれグショグショの服でコテージに駆け込む。
ふーう。危なかった。
スコールは一時間ほどで収まったが戻ってきて正解。
自分は水恐怖症だという自覚はないがなぜか息苦しくなり最悪の事態が頭をよぎる。
何かあったのだろうか? 過去が思い出せない。
だから余計に不安になる。

俺はなぜこの島にいるんだ?
なぜ一人なんだ?
誰か! 誰か助けてくれ!

疲れた。
晩飯を食べてすぐに横になる。
さあ明日だ。
嫌なことは忘れよう。
もう寝る。

翌日。
ああ。良く寝た。
清々しい朝だ。
と思ったがやはり正午過ぎ。
どうしたのだろう?
一度慣れてしまうと人間は決まった時間にしか起きられなくなる。
習慣って奴か?
不思議だがそれしか考えられない。
まあいいか。
別にここはのんびりした島だ。何かする訳でもない。
ゆっくり時間が過ぎていく。
良いんだか悪いんだか。
昨日の余りを掻き込んで外へ。

日課のスイム。
今日は波打ち際でクロールの練習。
たまに来る大波を警戒し浮輪を用意。
これで溺れる心配はない。
水は得意じゃないが体を冷やすには手っ取り早い。
うわっ!
波が襲い掛かってきた。
流されないように浮輪に掴まる。
ゴッホ ゴッホ
ハアハア ハアハア
大量の海水を飲み込んでしまった。
まあいいか。助かったのだから。
いつも飲んでいるしね。
飲み水を確保できずにヤシの実や果物、スコールの水で凌いでいるがやはり真夏の暑さは堪える。
知らず知らずのうちに喉が渇いてしまう。
体に影響があると分かっていても海水を含むしかない。
危険だが体も慣れてきた。
問題ないだろう。

さあ今日はどこに行こうかな。やはりここは右に行ってみるか。
今まで足を運んだことのない東側を散策。
果たして何があるのか?
新しい発見があればいいが……
深い緑に囲まれていてすぐに迷いそうだ。
サバイバル未経験の俺にはまだ早いか?
コテージにあったコンパスを頼りに進む。
生い茂った木々を掻い潜って急ぐ。
ドンドン東進。
しかしいくら行っても緑、緑。
また緑か。
奥へ奥へと向かう。
コンパスがあっていれば順調に進んでいるはず。
捲っては進み捲っては進み。
グリーンロードを開拓していく。
捲っては……
危ない!
大声で叫ぶ。
惰性で続けていたらどうなっていたことか。
目の前に突如崖がお目見えになった。
危うく滑落するところだった。
下は海らしく打ち付ける波の音が聞こえる。
どうやら島はここまでらしい。
とりあえず島の東端に辿り着く事ができた。

引き返す。
行きとは違う道を進む。
少し南に針路をとる。
一歩ずつゆっくり歩く。
崖や危険地帯を通り過ごし進んでいくとすぐに泉が見えてきた。
助かった。これで水を確保できる。
手で水を掬う。
うん。大丈夫。変な味も臭いもしない。
とりあえず飲めるだけ飲んで腹を膨らませる。
次からは水筒を持ってこよう。
それからは水汲みは日課となった。

ぎゃあ!
ぎゃあ!
どこからともなく鳥が降りてくる。
大声でこちらを威嚇する。
邪魔だどけ!
二羽三羽と増えて行き最後には十羽以上の集団。にらみを利かす。
彼らも泉の水が目当てなのだろう。
赤に緑、黄色とカラフルな鳥が舞い降りてくる。
飲み場を代われと訴えかけている。
仲良く一緒にという訳にも行かないらしい。
俺は仕方なくその場を立ち去った。
どうやらこの泉は鳥たちの憩いの場。
大げさに言えば鳥たちのオアシス。
いや楽園だろうか。
また新たな出会いと発見があった。
まあこの島にも鳥ぐらい居て当然。
不思議でも何でもない。
そうするともっと大きな動物なんかもいるかもしれない。
夜は出歩くのはよそう。
襲われたら最後。逃げ切る自信など無い。

空の様子がおかしい。
雲が湧いてきた。
スコールがまたありそうだ。
これはまずい。降ってくる前に急いで戻ろう。

今日も無事に一日を終える。
それにしても俺はなぜここに来たのだろう?
未だに思い出せない。
目的は何だ?
まさか一生このままなんてことはないよな。
時が経てば経つほど不安が大きくなっていく。

                     【続】
また明日。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ

ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。 【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】 なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。 【登場人物】 エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。 ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。 マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。 アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。 アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。 クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。

磯村家の呪いと愛しのグランパ

しまおか
ミステリー
資産運用専門会社への就職希望の須藤大貴は、大学の同じクラスの山内楓と目黒絵美の会話を耳にし、楓が資産家である母方の祖母から十三歳の時に多額の遺産を受け取ったと知り興味を持つ。一人娘の母が亡くなり、代襲相続したからだ。そこで話に入り詳細を聞いた所、血の繋がりは無いけれど幼い頃から彼女を育てた、二人目の祖父が失踪していると聞く。また不仲な父と再婚相手に遺産を使わせないよう、祖母の遺言で楓が成人するまで祖父が弁護士を通じ遺産管理しているという。さらに祖父は、田舎の家の建物部分と一千万の現金だけ受け取り、残りは楓に渡した上で姻族終了届を出して死後離婚し、姿を消したと言うのだ。彼女は大学に無事入学したのを機に、愛しのグランパを探したいと考えていた。そこでかつて住んでいたN県の村に秘密があると思い、同じ県出身でしかも近い場所に実家がある絵美に相談していたのだ。また祖父を見つけるだけでなく、何故失踪までしたかを探らなければ解決できないと考えていた。四十年近く前に十年で磯村家とその親族が八人亡くなり、一人失踪しているという。内訳は五人が病死、三人が事故死だ。祖母の最初の夫の真之介が滑落死、その弟の光二朗も滑落死、二人の前に光二朗の妻が幼子を残し、事故死していた。複雑な経緯を聞いた大貴は、専門家に調査依頼することを提案。そこで泊という調査員に、彼女の祖父の居場所を突き止めて貰った。すると彼は多額の借金を抱え、三か所で働いていると判明。まだ過去の謎が明らかになっていない為、大貴達と泊で調査を勧めつつ様々な問題を解決しようと動く。そこから驚くべき事実が発覚する。楓とグランパの関係はどうなっていくのか!?

総務の黒川さんは袖をまくらない

八木山
ミステリー
僕は、総務の黒川さんが好きだ。 話も合うし、お酒の趣味も合う。 彼女のことを、もっと知りたい。 ・・・どうして、いつも長袖なんだ? ・僕(北野) 昏寧堂出版の中途社員。 経営企画室のサブリーダー。 30代、うかうかしていられないなと思っている ・黒川さん 昏寧堂出版の中途社員。 総務部のアイドル。 ギリギリ20代だが、思うところはある。 ・水樹 昏寧堂出版のプロパー社員。 社内をちょこまか動き回っており、何をするのが仕事なのかわからない。 僕と同い年だが、女性社員の熱い視線を集めている。 ・プロの人 その道のプロの人。 どこからともなく現れる有識者。 弊社のセキュリティはどうなってるんだ?

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

日月神示を読み解く

あつしじゅん
ミステリー
 神からの預言書、日月神示を読み解く

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純一
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

「蒼緋蔵家の番犬 1~エージェントナンバーフォー~」

百門一新
ミステリー
 雪弥は、自身も知らない「蒼緋蔵家」の特殊性により、驚異的な戦闘能力を持っていた。正妻の子ではない彼は家族とは距離を置き、国家特殊機動部隊総本部のエージェント【ナンバー4】として活動している。  彼はある日「高校三年生として」学園への潜入調査を命令される。24歳の自分が未成年に……頭を抱える彼に追い打ちをかけるように、美貌の仏頂面な兄が「副当主」にすると案を出したと新たな実家問題も浮上し――!? 日本人なのに、青い目。灰色かかった髪――彼の「爪」はあらゆるもの、そして怪異さえも切り裂いた。 『蒼緋蔵家の番犬』 彼の知らないところで『エージェントナンバー4』ではなく、その実家の奇妙なキーワードが、彼自身の秘密と共に、雪弥と、雪弥の大切な家族も巻き込んでいく――。 ※「小説家になろう」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...