ジミート チート神を探して神々の森へ 追放されし三人の勇者故郷を救え!

二廻歩

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上陸 第一村人発見

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船内は静まり返っていた。
慣れない船旅と疲れから徐々に気力が失われつつある。

「緑・黒・紫・青…… 」

「どうしたんすか兄貴? 」
「疲れたのカン? 」

「ううん。今度の旅だよ」

「緑はドコダ山や神々の森の色。
黒は夜の闇。
紫は神々の森とジミートで。
青は今の景色」

「辺り一面海に囲まれどこを見ても青。青。
いい加減辛くなってきたよ。
もう飽きちゃった」

「はっはは。兄貴。オレンジを忘れてますよ」
「オレンジ? 」
「炎の色。ずっと見てたもんだから目に焼き付いちまったっす」
「もうパック! 余計なこと言わないの! 」

全員に疲れが見える。
限界が近い?

「ねえ、カン。この後私たちどうなっちゃうの? 」

「どうって言われても…… 奪還し、大王鬼神を倒す。
いや大王鬼神を倒して皆を救出するかな」

「そうじゃなくて倒した後。救出してからの話」
「ええ…… さあ…… まったく…… 」

「呆れた何も考えてないの? 」
「だって…… パック頼む! 」
「自分すか? 兄貴が分からないことを自分が分かるはずないっす」

「まあ。そうだな。プラスティ―どうぞ」
「私? カンと小さなお城でいつまでもかな」

「自分もそうっす。兄貴といつまでも」
「ははは。俺もアル―と一緒に全国を旅に出ようかな」

「兄貴! それは無いっす! 」
「もう最低! 」

「まあまあ。冗談はそれくらいにして俺たちの村なくなっちまったからなあ」

「新しく立て直すの? 」
「それは村長にでも聞くしかないよ」

「リサイクル卿は何か言ってなかった? 」
「父上が? さあ、考えてないんじゃない」

「じゃあ、あの爺さんにでも相談するっすか」
「爺さんて。神社の? 」
「頼らずに何とかしろって言われそうだな」
「うーん」

「これ今する話? 」
「プラスティ―が始めたんだろ」

「だって…… やっぱり何か聞かされてなかった? 」
話が元に戻る。

「昔のことであんまり覚えてないんだよなあ…… 
そう言えばドコダの民は元々ここではないどこかに住んでいた。
そしてどこかを目指すとか話していたけど。
昔話の一種だから気にも留めていなかった」

「伝説の地ね…… 」

「神社で話を聞いたときにどこかで聞いたことあるって思ったんだよね」

「他には覚えてることある? 」
「さあ、イスラがどうとか」
「イスラ? 」
モッタが反応した。

「イスラを知ってるの? 」

「さあな。隊長が一度話してくれた。
でもそん時は酔っぱらっちまって覚えてないんだ。
大事な話だったのによう。
イスラはどこかに存在するとか言ってたぞ」

モッタは常に酔っぱらい。肝心の話を聞きそびれる。

「うーん。やっぱりこれ以上は出てこないや」
「思い出しなさい! 」
「うーん」

船内は沈黙が支配した。

昼過ぎ。

「お腹空いた! まだ?
港はどこ? 」

不満が爆発。自制が効かない危機的状況。
未だに食事にありつけてないのだ。
それどころかロクに水も飲めない。

「水。水をちょうだい! 」
「はっはは。海水で良けりゃあるっす」
「もう何でもいいわ」

ガブガブ
おええ!

「しょっぱい。こんなの飲めない! 」

「プラスティ―。もう少しの辛抱だよ」

「ほら見えてきた」
「どこどこ? 見えないじゃない! 」

「兄貴。海水の飲み過ぎで幻覚でも見えたんっすか」
「違う! 立ってよく見ろ! 」

「本当? 本当に本当なの? 」
「ほら薄っすらと何かが見えるだろ」

「ああ! 船が見えるっす。それも一つや二つではない。港だ! 」

パックの視力は驚異的ではっきり見えるのだとか。

「急ぐぞ! 」

モッタが張り切りだした。
もうすぐそこだと分かり元気が湧いたのだろう。

「飯だ! 飯だ! 」
「とにかく水! 水よ! 」
「皆落ち着いて! ここはリーダーの俺が一番に上陸する」

船を港に着ける。
上陸開始。

こうして漂流しかけていたオンボロ船は無事港に到着。

決戦の地に足を踏み入れた。

最終決戦は近い。

「いっちばん! 」
「にっばん! 」
「さんばんっす! 」
「よんばーん。ってガキか? 数字も良くねえし。まったく! 」

港には人の気配が無い。
静かなものだ。
聞こえるのは海鳥の鳴き声と波の音。

にゃあ! 
猫が集まってきた。

漁のお零れをもらおうとやってきたのか行儀がいい。
だがお目当ての物はない。

「パック何かあげて! 」
「そんじゃあ。この魚をやるよ」

小魚のうえ、生では食べづらかった為、非常食としてとっていた。

猫たちは奪い合いを始めた。

「ボトルはどうしてるかしら? 」
ふとボトルのことが気になった。

ボトルは危ないので爺さんに預けている。

「心配ないよ。爺さんと仲良くやってるさ」
「猫は苦手じゃなかったすか? 」
「パック! 」
「へいへい」
「心配ないよプラスティ―。さあ行こう」

港には人が見当たらないので歩くことにした。

「おーい。誰かいませんか?
おーい! おーい! 」

「何じゃお前らは! 」
後方から怒鳴り声。

第一村人発見?

振り返り挨拶をする。

「ほうほう。そうか。観光でね。
それはそれは遠くからって誰が信じるか! 」

「お前らまた悪さを企んでいるんだろ? 違うか? 」

勘違いしているようだ。

「どういうことでしょう? 」
「あいつらの仲間だろ? 」
「あいつらって? 」
「大王鬼神に決まっておる! 」

「我々はその大王鬼神に招待されておりまして。どちらにおられますか? 」
「知るか! やっぱり仲間じゃないか! 」

男は怒って帰ってしまった。

せっかくのチャンスを逃す。

当てもなくさまようのは良くない。
とりあえず飯屋を探す。

ちょっと行ったところに海鮮料理の店が見つかった。

さっそく中へ。

カニとエビのボイル。
貝のスープ。
海鮮ピラフ。
メインの海鮮鍋。

海の幸を堪能する。

「ふうお腹いっぱい! 」
「もう食べれない! 」

「任せてくだせい。自分が食べるっす」
パックが残飯処理に取り掛かる。

「ウイーヒック」
モッタは相変わらずだ。

酔っぱらいは直ぐに横になる。

飯を終え今後を話し合う。

ここの者は何を恐れているのか口が堅い。
結局この店でも有力な情報は手に入らなかった。

「どうしましょう兄貴? 」

「プラスティ―のチートを使おう。
我々を大王鬼神の元へ導いてくれ」

「ちょっと待ってよ! これは民衆を導くためのチート。
無闇に使うことはできない! 」

「分かってるよそんなこと。でもその民衆が連れ去られた。
彼らを救いだすことが第一だ。
その後導けばいいさ。好きなだけね」

「もう! 仕方ないわね」

カンたちはプラスティ―の導きによって大王鬼神の元へ向かう。

徒歩で向かう。

「ええ? 徒歩は勘弁! 」

馬車を所望す。

もちろん馬車など通りかかることもなくひたすら歩くことになる。

五キロごとに休憩を挟み無理のない道のり。

旅は終着点に向かってひたすら進んでいく。

                      続く
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