ジミート チート神を探して神々の森へ 追放されし三人の勇者故郷を救え!

二廻歩

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真実 敵の正体

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最後のチートを求めて歩き出す。

狐は無言で先を急ぐ。
チート神のエリアまでもう少しのところまでやってきた。

目の前にまで迫った伝説のチート神。
見ることまではできないが確かに感じる。
ただ今はまだ…… 戻られていないのだが。

「ストップ! 」
狐はそう言うと待つように指示した。

コンコン
コンコン

ジミートの言を伝える。

「我はジミート。我のチートは引力なり。
ありとあらゆる物を引きつける。
即ち強運のパワーを手に入れる事が出来る。
ただしそのためには試練を受け入れねばならない。以上」

「試練? 」
「ああ。大したことではない」

「この壺をやる」
狐はどこからともなく取り出してきた。

「壺? 兄貴! 」

「どうしろと? 」
「なーに。簡単だ」

「その壺を毎日磨け! 」
「薄汚れたその壺を毎日ピカピカになるまで磨くのだ。
そうすればどんどん運気が上がっていく。
後はお前の努力次第だ」

パックは壺磨きの修行に取り組むことを決意した。

「兄貴! 自分自分…… 」
「良かったなパック! 頑張れよ! 」

これでようやく全員がチートを授かった。

「よしもういいな?
俺はもうここまでだ。
後は好きにしろ! 」

三人を残し狐は姿を消した。

「狐は最低な奴だったけどきちんと役割を果たしてくれた。
感謝しなきゃな」

「そうっすね。いかれた奴だがポイントはしっかり押さえてましたしね」

「そう? ただのいやらしい獣じゃない」
「言い過ぎだよプラスティ―」

「あなたたちは害が無いからいいかもしれないけどこっちは散々いびられて脅かされて最後にはあんな恥ずかしいことさせられてとんでもない目に遭ったんだから! 」

プラスティ―は元気になったものの納得がいっていないご様子。

まあ本来チートを授かるとは特別なことでそれなりの代償が伴うのが当たり前なのだが。まあ理解しようにも感情が邪魔をするのだろう。

「またやってもいいっすけどね」
「パック! 」

「あんたは壺を渡されただけでしょう! 」
「いや、自分は…… でも兄貴が…… 」

「そうそう俺も裸にされちまって恥ずかしい思いをしたよ。
だからプラスティ―の気持ちが良く分かる」

「カン…… 」
「男でしたからね兄貴は」
「まったくちっとも理解してくれないんだから! 」

「プラスティ―怒るなよ」
「そりゃあカンは何の問題もないでしょうけど」

「いや、やっぱり恥ずかしいよ。
体も大きくないし下もまだ全然だし。
筋肉は多少ついたもののまだ見せられる体にはなってない。
それから…… 」

「とにかくあの狐は最低でどうしようもない獣」
「まあそこまで…… 」

「そうっすよ。役には立ったと思いやす」

ガサガサ

気配?

「いやー。褒め慣れてなくてね。なかなか出づらい状況だったんが放っておくわけにもいかない」
狐が戻ってきた。

忘れ物。
「これをお前たちにやるよ」

漆黒の羽。
カラスの羽のようだ。

「お前らここからどうやって帰るつもりだった? 」

「辿った道を戻るかな」

「それしかないじゃない! 」

「確かに。だが時間がかかるぞ」
「いいすっよ。別に。問題ない」
「馬鹿者! 時間がもったいないと思わないのか? 」

「あら、その言い方だと他にも方法があるみたいね? 」
「この羽根を使えば一っ跳びだ」

レアアイテムゲット。

「いいか。手をつなぎ目を瞑れ。
次の瞬間には神社だ」

「便利だね」
「そうっすね兄貴」

「本当はな放置して通常のルートを逆走させるつもりだった。
しかしそうも言ってられなくなった。なぜか分かるか? 」

「プラスティ―に特別な感情でも湧いたとか? 」
「ああそうだと冗談は言ってられない」

「何よそれ! 失礼ね! カン! 」
「怒るなよ。怒るならあっち」

「見ちまったからですか? 」
「違う! 」

「好評価をもらったからとか? 」
「いやいや。お前ら如きの評価などどうでも良い」

「じゃあ何なのよ? 」
「分からないのか? 女よ! 」

「もしかして…… 危機が迫っている? 」
「そうだ。これも本来ならば禁じられているのだが緊急事態だから許されるだろう」

「いいかよく聞け! 」

「温泉郷も神々の森も最大の危機に陥っている。
詳細は言えぬがドコダ地域全体が標的となっている。
もう一日もない。
詳しくは戻って神代の爺にでも聞いてみろ」

「しょうがないはねえ。カン。お礼を言っておいて」
「俺が? 」

「フォックス今までありがとう。今すぐ戻るよ」
「早くしろ! 時間が無いぞ! 残された時間は僅かだ」

三人は手をつなぎ目を瞑ると漆黒の羽を掲げる。

「さらばだ! 」

三人の姿は聖地ジミートから消え去った。

「ふん、馬鹿め! 期待はせんぞ! 」

フォックスはジミートのお世話に戻った。

神社にて。

目を開ける。

いつの間にか神社の境内に突っ立っていた。

神主の爺が凄い勢いで駆けてきた。

「お前さん方は? 」
「この壺はどうでしょう? 」
「要らるわ! 帰ってくれ! 」

「そう言わずに。ちょっとだけでも」
「勧誘は迷惑じゃ! 立ち去れ! 」
「ヒイイイ」

「何をさせる! 戻って来て早々ふざけおって! 」

「爺さん。元気だったか? 」
「無礼者は良いとしてどうだ授かったのか? 」
「全てご存知のようですね」

「ああ、目的はチート。薬草探しは嘘。それくらい見破れないでどうする」

「それでお爺さん」
「おお分かっておる。話は中でゆっくりしよう」

爺はリサイクル卿が来たこと。
ドコダ地域全体に最大の危機が迫っていること。
近年起きている勢力争いの結末などを話して聞かせた。

「そうですか。父がここへ」

「隠れていろと言っていたがどうする? 」

「戦います」
「そうね。私もその為に来たようなものだもの」
「兄貴が言うなら自分も戦います」

「そうか。頼もしい若者だ。
では合流するといい。
ドコダ山付近で戦いが始まっているはずだ」

「ここの人は? 」

「大丈夫じゃ。皆を神々の森付近に集結させた。
もし何かあれば避難するように命じている」

「お爺さんはどうするの? 」

「儂はこの神社と共にする。
もし儂に万が一のことがあったら令司に任せているから心配ない」

「でも…… 」
「避難しようぜ爺さんも」
「有難いが気持ちだけ受け取っておこう」

「それで一体何が迫っているの? 」
「覚えているかこ奴の村が焼かれた経緯を? 」

パックを指す。

「爺さん何を言ってんだ。火事じゃないのか? 」

当時パックは家で眠っていた。
村人全員が朝を待っていた時。
未明に火の気が上がった。

いち早く気が付いた隣の爺に叩き起こされて難を逃れたパック。
家族も友達も村も全て焼かれた。

「思い出したくねいですぜ。兄貴! 」
「パック! しっかりしろ! 」

残ったのは二人だけ。

「あれおかしいぞ? 焼かれたと言ってたけど家はきちんと残っていたような気がする。それに実際一晩お世話になったしなあ」

「パックは戻ったことは? 」

「いやもうダメだと。村を離れてからは一度も。あの日から一度も戻ってやしません。すぐに兄貴たちと出会いましたから」

「まあ、混乱しているようなのでこれ以上苦しめるのも良くない。お前は少し席を外してくれないか」

パックはボトルと境内へ。

「改めて伝える」

「まずその当時この世界を支配していたのはどこぞの領主であった。

争いは激化し民は疲弊すると平和な世界を望むようになった」

「そこに救世主のように現れたのが大王鬼神。
数ある地域をまとめ上げ一つの国ができた」

「天下統一を成し遂げた」

「平和な世界がもたらされた。誰もがそう思った。
しかし大王鬼神は邪悪な心で満たされていた」

「大王鬼神は年に一度大食期を迎える」
「大食期? 」

「分かりづらいのはぼやかす為。
大食期など使わずともよいがまさか無尽蔵に民を食い尽くすなどと信じられないような非道な行為をどう言っていいやら」

「まさか満足するまで食い続けるとでも…… 」
「ああ、信じたくない気持ちも分からないではないが真実とは実に恐ろしものよ」

「まさかね。そんな相手と戦うの? 」

「大丈夫。奴は自分の城で獲物が来るの待っている。
部下にその回収を任せている。
だから不死身の奴と戦わずに済む」

「守り切ればいいだけだ。
我らの力を見せつければよい」

「問題ない? 」
「ああ、まったく問題ない」

「でもなあ…… 」
「恐れるな! さあこの剣を持って立ち上がれ勇者たちよ! 」

「はあ? 」

「いやいや、最後のは冗談じゃ」

「武器も防具もここにはない。
もし戦うつもりならリサイクル卿の部隊に合流せよ」

「分かりました。すぐにでも向かいます。そうだよね? 」
「ええ、リーダーなんだからしっかり」

「兄貴お供させていただきます! 」
ちゃっかり戻っていたパックは良く分からずとも賛成する。

「よし、行くがよい! 勇者たちよ! 」

「はは! 」

カン、プラスティ―、パックの順に歩みを進めた。

こうして戦地に赴く三人。

引き返すことのできない地獄の片道切符。

もう戦は開始されている。

最終章へ。

                  続く
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