ジミート チート神を探して神々の森へ 追放されし三人の勇者故郷を救え!

二廻歩

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ジミート チート選びは慎重に

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「ストップ! 」

案内役の狐の足が止まる。

「ここだここだ。着いたぞ! 」

「うわ! 」
「きゃあ! 」

急に止まった為プラスティ―がバランスを崩した。

「危ない! 」
振り返ってギリギリで受け止める。

「ありがとうカン」
「大丈夫? 」
「ええ。でもパックが…… 」

パックは前に倒れるのを何とか堪えたが逆に後ろに転んでしまった。
それでは意味がない。

「パック! 」
「大丈夫っすよこれくらい」

泥と砂をはたき苦笑い。

「おい! フォックス! 」
「うるさい静かにしろ! これ以上騒ぐな! 」

狐はじっとしているように命じた。

生意気な狐。威張り散らし最低だがさっきまでと表情に違いが見られる。

「着いたぞ。大人しくしてろよ! 」
そう言うと前足でその場にいるように命じた。

コンコン
コンコン

性格には似合わない可愛らしい鳴き声を発す。

まるで扉を丁寧に叩くような音。
まさかお伺いを立てているとでも言うのか?

ようやくジミートに辿り着いた?

しかし一向に姿をお現しにならない。
どこだ? どこにいる?

コンコン
コンコン

見えない何者かとコンタクトを取っている狐。
黙って見守るしかない。

話を終えたのか振り返ってこちらに向かってくる。

「ちょっと! 何? 」
「うるさいぞ女! ジミート様のお言葉を伝える」

「ちょっと待ってくれ! ジミートはどこにいる? 」
「馬鹿め! ジミートは本来誰にも姿をお見せしない。だから俺様が代わりを務めるのだ」

第一ジミートの言を要約する。

「我はジミート。我が与えうるのは努力。
即ち努力を続ければ必ず成功する。
何年後、何十年後かには必ず実を結ぶ」

「我のチートを授かるか? 」

「努力のチートね…… 私はパス。カンは? 」
「俺もいいかな。パックは? 」
「努力なんて面倒臭い。それに何年先になるかわからないなんて冗談じゃないっす」

「まったくワガママな奴らだ」

「一つ言っておく。一度拒否したチートは授かることはできない。
また、チートは一人につき一つまでだ」

「よし次に向かうぞ! 」

コソコソ
ヒソヒソ

「ロクなチートじゃないっすね」
「そうね。次も期待できそうにないわね」

「おいそこ! 私語を慎め! ここをどこだと思っている?
俺様の手を煩わすな! 」

生意気で憎たらしい態度は決して改まらない。

第一ジミートから五分も経たないうちにストップ。

今度は誰も倒れずに済んだ。

コンコン
コンコン

「兄貴! 眠いっす」
「堪えろ! チートを授かるまで大人しく頼む」
「ええ? あの狐、態度悪いんだもんなあ」

「こらパック寝るな! 」

パックは横になる。

「気にしない気にしない。もう眠くて」

パックは長旅の疲れからかイビキをかきはじめた。

「おいおいパック! 」

イビキが響き渡る。

狐が戻ってきた。

「おいお前! どこで寝ている! 
ここは神聖な場所。本来ならお前たちなど…… まあいいか」

「ではお言葉をお伝えする。心して聞くがいい! 」

「我はジミート。我が与えるは継続。
即ち、いかに大変であろうと、時間がかかろうと決して諦めない力を与える。
継続のチート」

「我がチートを授けよう。以上」

「授かるか否か? 即答せよ! こちらも忙しい! 」

「どうするカン? 」
「努力の次が継続か。悪くはないけどもうちょっと見たいな」
「賛成っす」

「キープで」
「そうですかでは次の品は…… じゃない! ふざけるな! 」 

「まったくお前らと言う奴らは! 」

狐は呆れたようにこちらを見る。

「仕方ない次だ! 」

第三ジミート。

紫の空と鬱蒼とする緑。

狐は草っぱらの中へ進んでいく。

「おい、ちょっと待ってくれ! 」
「どこに行くの? 道が違うんじゃない? 」

無視して奥へ進む。

再び無言で立ち止った狐。

できるなら何か言ってからにしてもらいたい。

コンコン
コンコン

今度のジミートは話が長い。
二十分近く待たされた。

長いにはそれなりの理由があるに違いない。
これは期待が持てそうだ。

「我はジミート。ハッタリのチートを授ける。
ハッタリとは即ち口から出まかせを発し、相手を煙に巻く。
交渉術にはもってこいであり…… 」

「ハイ次! 」

もう少しまともなチートは無いのだろうか。
この先が思いやられる。

歩き出す。

「うーん」
パックに迷いが生じる。

「いやあ。ハッタリも今考えたら悪くないかもしれませんね」
「今さら言うなよ。でもパックにはちょうどいいかもね」

「そうなんすけどハッタリを続けても何も生まれません。
それじゃあ。虚しいだけですぜ兄貴。やっぱりパスが正解っす」

「分かったよ。とにかく次に期待しよう」

コンコン
コンコン

次のジミートに接触。

ジミートの姿を見ようと、隙をついて狐の後を追っかけるが、まるで気配が無い。

本当に存在するのか?
怪しいものだ。

狐に騙されているのではないか?
からかって遊んでいるのでは?

疑いの感情が芽生える。

狐はけん制するように忠告する。

「おい! 大人しくしていろ! 」

「それからジミートは決してお前らに姿を見せない。
それどころかこの聖域に立ち入られるのを非常に嫌がっておられる。
詮索など無用なことはするな! 」

全てお見通しのようだ。

「よし改めて伝える。

「我はジミート。我のチートは天気。
即ち天候を自由自在に操る。
もしお前が雨男ならば晴れ男にもすることができる。
もちろんその逆も可能」

「我のチートを欲するか? 」

今度の奴は前に比べると幾分マシに思えるが……

「天気はちょと。カンはどう? 」
「うーん。保留かな」
「だから選ばないともう次は無いっすよ。もちろん自分は遠慮します」

さほど魅力的でないチート。
とはいえ、もし他に無ければとりあえず選んでもおかしくはないのだが……

この判断が裏目に出る恐れもある。

次へ。

               続く
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