ジミート チート神を探して神々の森へ 追放されし三人の勇者故郷を救え!

二廻歩

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露天風呂で一対一 ヒロイン喪失

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プラスティ―は一体どこへ行くのか?
後をつけることにした。

追跡開始。

プラスティ―は辺りを見回している。
旅館の者にどこかに案内されているようだが……
何を話しているのかここからでは聞き取れない。

「こちらです」

「ここを曲がってまっすぐ行くと見えてきますので。滑りやすくなっているので十分にご注意を」

忙しいのか説明を終えると行ってしまった。

「露天風呂! 露天風呂! 」

上り道を難なく登り切る。
怪我など忘れて露天風呂へ駆ける。

見えてきた。
湯気ではっきりしないがここが目的の露天風呂。

硫黄の臭いが強烈。
これさえなければ完璧なのになあ。

ボコボコと激しい音を立てている。

何度あるのだろう?
40度? 45度? 50度? まさか60度なんてことはないわよね。

熱!
間違えなく50度以上ある。

手で掻きまわして整える。

さあ入りましょう。

きょろきょろ辺りを見回す。
誰も見てないわね? 誰もいないわね?

もちろん湯気でモクモクの今、辺りを見回すにも限界がある。
確認を終え服を脱ぐ。

飛んでいかないように石をのせる。
下着を脱ぎ、たたんでやはり飛んでいかないように石をのせる。

辺りを見回す。
最終確認を終え中へ。

うわ! 熱い! イタタタ……
やはり思っていたよりも熱い。
火傷しないか心配だ。

ふう。気持ちいい。
だいぶ慣れて来たのか熱さも和らいでいる。

やっぱり温泉が一番ね。
足もすぐ良くなるわ。
希望的観測。

ふふふ。あー気持ちいい。
今私は露天風呂を貸し切っている。
本当に来てよかった。
山登りの疲れも足の傷も一気に解消。

至福の時。
このまま続けばどれだけいいだろうか。
旅の目的も忘れててこのまま……

ダメ! 私には使命がある。
村を街を民を地域を悪の手から守らなくてはいけない!

あーあ。面倒くさいなあ。

それだけじゃない。カンをあの女から引き離して何としても……
あらあら。心にもないことを…… ふふふ……

カンも平和も取り戻す!

のぼせちゃったかしら。そろそろ出なくちゃあ。
カンも心配するだろうし。

「うん? 俺がどうしたって? 」

突如後方から男の声がする。

大声を出そうとしたがちっとも声にならない。
「キャ…… 」

「どうしたのプラスティ―? 」
「かか…… カンなの? 」
「うん。当たり前だろう」

いつの間にか侵入していたカン。
やけに冷静な受け答え。

何も感じないのか?
照れを隠しているだけなのか?
それとも本当に馬鹿なのか?

「いつ? 」
「うん? ああ、かき回していただろ。その時すぐに中へ」

辺りを見回していた時にはもう浸かっていたことになる。

「熱くなかったの? 」

「熱いさ。そりゃあね。でも我慢だよ。
そうした方が気持ちよさが倍増する」

「プラスティ―もそうだろう? 」

この非常事態を堂々としているカンは本当に大丈夫なのか?

「ねえカン。一つ聞いても良い? 」
「うん。何だい」

「私は女の子よ? しかもかわいい女の子よ」
「ああ知ってる」
「一緒っておかしくない? 」

鈍感なカンに現状を理解してもらう。

「いいや全然。どこが変なんだい? 」

「他人よ? 」
「仲間じゃないか! 」
「そうじゃないでしょう! 」

カンは鈍感を通り越してバカであることが決定。

「一緒はおかしいでしょう! もう少しで悲鳴を上げる所だったじゃない。
そうなったらあなたは疑われて勇者から愚者へ転落よ! 」

「そうなんだ。知らなかった」
「常識じゃない! 」
「ごめん。そこら辺のことは良く分からなくて。村では気にすることもなかった」

「いつもどうしてたの? 」
「俺一人の時もあればアル―と一緒の時もあってさ」
「うそ? 」
「本当だよ。一緒に入って流し合いっこだって…… 」

衝撃の事実。

またあの女!
流石に真似はできない。

「先に上がって! 」
「ええ? 」
「良いから早く! 」
「分かったよ。先に行くね」

カンが歩き出すのを確認してから急いで出る。

私最大のピンチだと思ってたけど、もしかして最大のチャンスだったんじゃないの。
でも私そんな女じゃない!

後悔と失望が一気に押し寄せてきた。

カンあなたは悪くない。
もちろん私も悪くない。
あの女がいけないの!

夕食。

豪華なブタ料理が出された。
季節の山菜とキノコ鍋。
天ぷら。
川魚の塩焼き。
果物。

食べきれないほどの量。
だが余っても大丈夫。
パックの無尽蔵な腹に消えていく。

ふう。食った食った!

パックは一人陽気にしゃべっている。
「どうしたんすか? 元気ないですよ兄貴? プラスティ―も? 」

気まずい沈黙。

あの後どことなくギクシャクしてしまった。

「俺もう寝るわ」
「そんなあ兄貴。夜もまだ更けてないって言うのに…… 」
「私も今日は疲れたみたい。同じくおやすみ」

「ええ? プラスティ―も? 付き合いの悪い…… 」
「良いからあんたも寝るの! おやすみ」

プラスティ―は自室へ戻った。

当初の予定では三人一緒だったのだがプラスティ―の要望で別れた。

寝る前に手紙を書かなくてはいけない。

愛しのアルーへ。
困った事態になりました。
三人の仲が良くありません。
パックは問題ありません。
しかしプラスティ―との関係が良くありません。
喧嘩をしたわけではないのです。
ただ彼女が口を利いてくれないのです。
どうしたらいいでしょう?
私は何かしたでしょうか?
もちろんこんなことをアル―に打ち明けるのもおかしいですがこれ以上の悪化は避けたいのです。
何かいい案があれば教えてください。
因みに原因は分かっています。
勝手に後をつけて
勝手に一緒に露天風呂へ入ったことが許せないんだと思います。
私はどうしたらいいでしょう?
返事をお待ちしております。
追伸。
アル―も大きかったけどプラスティ―の方がもっと大きかったです。
女の子って分からない。不思議です。

             続く
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