ジミート チート神を探して神々の森へ 追放されし三人の勇者故郷を救え!

二廻歩

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抱擁キャンプ 二人の距離ゼロメートル

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夕暮れ時。

パック流の自己紹介。
「済まない。俺はこの辺りで兄貴たちと悪さを働いた。兄貴たちについて回っていたがもうどこかに行っちまった。だから一人で続けていたんだ」

「もう二度とやらないと誓うな? 」

「ああ、誓う。俺は村から追い出されて今まで過ごしてきたがこうするしか生きる術がなくて。反省してるんだ。だから俺を連れて行ってくれ! 」

「そこまで言うなら仕方がない。プラスティ―は? 」
「いいわ。私も故郷から追い出された口だから気持ちが分かる」

「それを言うと俺は二度も追放されたんだけどな」
「兄貴は二度ですか。それはスケールがデカイ。敵いませんよ」

「よし行こう! 」
三人は歩き出した。

日暮れが近い。
うっそうとした緑が黒ずんでいく。

もう危機は脱した。
パック以上の奴は現れないだろう。
逆に言えばパックが俺達を守ってくれる。
心強い限りだ。

「ねえ」
プラスティ―が心配そうに肩を掴む。

「今夜どうするつもり? 」
「俺に言われても…… 野宿しか思いつかない」
「私は嫌よ! 」

「いや、無理してついてこなくてもいいさ」
「そうじゃないでしょう! 」
「ワガママだなあ」

「早くしないと真っ暗闇よ」
「兄貴。どうします? 」

決断を迫る。以外にも人任せな二人。

どうするべきか迷う。

「ちょっと! 早くしてよ! 」
「そうは言っても…… 人の気配もないこんな山道。野宿以外有り得ない! 」

「兄貴。でしたら俺たちが寝床にしているテントがありますが…… 」
「早く言いなさいよ! まったくもう! パックに賛成」
「そうだな。でもさあ戻ってくるなんてことないの? 」
「大丈夫っすよ。今は一人で使っていますから」

登山には遠回りのルートだがパックの住み家へお邪魔する。

到着。

「ここですよ。ほらこのテント」
「えらいわよパック! 」

二人の間のわだかまりも消えたようだ。
ようやく本当の意味で仲間となったのかもしれない。

このはぐれ部隊はどうなっていくのか?

「さあごはんにしましょう! くっさ! 何これ? 」

テントは男の一人暮らしとあり豪快と言うかワイルドというか。
基本的にゴミが散乱している。
臭いも強い。

「こんなところ絶対無理! 」
「プラスティ―! 」

「兄貴たちはそちらに寝てください」
予備のテントを広げる。

いつでも仲間が帰ってきてもいいようにパックが盗んできたものだ。

「これはどこからパックさん? 」
「近くの街の雑貨屋からの頂きものです」

「もうやめましょうね」
「そうだぞパック! 」
「兄貴が言うのでしたらもちろん従います」

とりあえず今日の寝床を確保した。

パックの作ってくれたカレーを頂く。
パックは一人が長いため何でもできる。見た目に反して器用だ。
まあ、仲間たちに教育されたのかもしれないが……

「パックお代わり」
「もうありませんよ」

三人はカレーを平らげるとたき火で暖を取る。

いくら秋でまだ温かいとはいえ山は気温の変化が激しい。特に夜はえらい冷え込む。

「ねえ。カンはどこから来たの? 」
「それは俺がどこから追い出されたかってこと? 」
「素直に言いなさいよ」

「俺はサウスドコダから来た」
「奇遇ね。私も隣のドコダ村からよ」
「自分はイーストドコダっす」

「イーストドコダ? 前回お世話になった村だ。お爺さん一人だけだった」
「ああ、まだあの爺さん生きてたのか。懐かしい」

「確か火事か何かで? 」
「ああそうっす。村が襲われ火を放たれました」

「パックも大変な思いしてたのね。可哀想に」
「まあ昔のこと。気にして無いっす」

パチパチ
火が爆ぜる。

夜行性の動物がそろそろ捕食に動き出す時間。

火を絶やさない。

カンにとっては嫌な思い出。
パックとて同じだろう。

しかし火が無くては生活ができない。
生きていけない。

「プラスティ―はなぜ追い出されたの? 」
「そんなこと聞く? まあいいわ。教えてあげる」

「私、実はシャーマンだったの」
「シャーマン? 」

聞きなれない単語。まあさほど知識があるわけではないが。

「えっとシャーマンって何? 」

「馬鹿だなあ兄貴も。邪魔って言ったっんすよね。
村の皆から邪魔者扱いされてたんすよきっと」

「邪魔者扱いされていたのはあんた! 現に今でもお邪魔虫じゃない! 」

「シャーマンって言うのは神のお言葉を聞き皆に伝える。尊い存在。もちろん村の皆から慕われたわ。でもね時の権力者から嫌われてはお終い」

「性格の問題? 」
「失礼ね! 綺麗で礼儀正しい姫様と呼ばれていたわ」

「それならなぜ? 」

「村が疲弊してたから。穀物が不足。民が飢えてしまった。
上は資源獲得に乗り出してね。でもそんなのすぐには無理。
いくら不可能って言ってもその力で何とかしろだもの。嫌になっちゃう」

それは確かに。

「お告げはこう。再び戦禍が訪れる。備えをするように。
もちろんその事は伝えた。でも今は資源。新しい資源を獲得するんだって。
しつこく忠告してもダメだった。上は興味が無い。
それどころか私を邪魔者のように扱うようになった」

「それで最後のお告げを終えて村を飛び出したの。
たぶんもう私の居所はどこにもない」

「それは大変だったね。お告げは何て言ってたの? 」

「すぐに村を出てドコダ山に向かえ。途中で勇者に遭遇するから力を貸して貰えって。すぐにあなただって分かった」

「自分もいるっす」
「あんたはただ襲っただけでしょう! 」

プラスティ―の目的が分かった。

「俺もチートを授けてもらいに山に行くのさ」

「まあ、とにかくドコダ山ね。
さあ寝ましょう。明日も早いみたいだし」

パックが見張りに着いた。
危険があれば知らせるそうだ。

俺とプラスティ―は先に寝かせてもらう。

テントで横になる。

風呂は今日は無理そうだ。
臭くないか心配だ。

おやすみと言ってプラスティ―が横を向いた。

まさかこんな事態になるとは……
プラス思考で行かなくてはいけない。

仲間ができたのだ。

そうだ手紙を書かなくては…… いやもう今日は遅い。明日にしよう。

隣が気になってなかなか寝つけない。

プラスティ―が寄ってきた。

「ちょっと…… 」
「寒いの! 少しの間だけお願い! 」

「仕方ないなあ」

二人は抱き合って寝る事にした。

「まだ寒いかい? 」
「大丈夫。あなた異常に温かいのね。助かるわ」

「いや、なんて言うか初めてだから緊張する…… 」

「プラスティ―? 」

グウ― グウ―
寝息を立てて眠ってしまった。

「おやすみ」
マナーとして額にキスをする。
彼女は気が付いただろうか?

外ではパックの雄たけびが聞こえる。

果たして本当に眠れるのだろうか?

                続く
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