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進展なし
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目の前には一枚のイントコインがある。
「これは何だ? ああ…… カズトまたやっちまったのかお前?
もう言い訳できないぞ? 」
盗もうとした罰なのにそこでまた盗むとは呆れる。
何を考えてるんだろうこいつは? 信じられない。
もう目も当てられない。頭が痛いわ。
「何を言ってるの先生? 」
ペットボトルの水を飲み干し薄ら笑いを浮かべるカズト。
これはまったく反省してないな。それかさっきは演技してたかだ。
「しかし盗ったものだろ? 」
「違う! 違う! 掃除してたら見つけたんで。ゴミと一緒にね。
報告したらいらねえからもらっとけってさ。
あの人たちも良いところあるよね。俺見直しちゃったよ」
「そうなんです」
部長も頷く。
確かに奴らは見た目に反して紳士的だ。
決して暴力を振るおうとはしなかった。そこが好印象。
聴衆もそれは同じだった。ただ盛り上がっただけだった。
「偉いぞお前ら! もらえる者は何でももらっておけ!
何の役に立つか分からないからな! 」
イント一枚獲得。
これで合計七枚となった。
「先生セコイ! 」
アイが笑うが俺は探索者の鉄則だと返す。
ハイハイとちっとも理解してくれない。
ふん。そのうち分かるさ。俺の偉大さがな。
何はともあれ無事に二人が戻って来た。
これは実に喜ばしきこと。
ただ喜んでばかりはいられない。こういう時こそ気を引き締めなければな。
慎重にも慎重に。
出来れば引率する者としてはこれ以上トラブルは避けて欲しい。
「二人が戻って来てようやく落ち着きましたね青井先生? 」
「はい。こいつらはまったく…… こっちは生きた心地がしなかったよ。
いつも心配ばかりかけやがって。そうですよねミホ先生? 」
「ええ本当に。でも良かった。ふふふ…… 」
トラブルも解決。和やかな雰囲気に。
「落ち着いたところで今日の目標は…… 」
なぜかいきなりタオが仕切り出す。
「おいおい俺の役目を取るなよ。
いくら部長でも今回の作戦の責任者は俺なんだからな。勝手は許さんぞタオ! 」
「でも先生が…… 」
タオがいじけてしまう。まずいまずい。どうしよう?
「いや言い過ぎた。俺の代わりはお前しかいない」
「もう先生…… 」
そう言ってタオが笑い出す。
ふう危ない危ない。
「青井先生ったら…… 」
ミホ先生も続き皆が笑い出した。
「ははは! 何を笑ってるんだ? 」
何がおかしいのか分からないが取り敢えず笑っておく。
俺だけ乗り遅れてなるものか。
「うわ先生怖い…… 」
アイの軽蔑の目。まったくこいつと来たらまったく。
先生を尊敬してんだかしてないんだか。
アイの告白って何だったの? 夢だったとか? 先生悲しいぞ。
異世界探索隊は町の調査を開始する。
昨日同様タピオカ部と異世界探索部に別れる。
調査にはたっぷり三時間を費やす。
夕方に合流し集落へ。
町の調査にはまだ当分時間がかかりそうだ。
そもそも目的がよく分かってないんだよな。
旧東境村が目的地なのは間違いないんだが。
その手掛かり一つ見つからない。
思うように進まず明日以降に期待と言うことで。
うん。これも仕方ないこと。
ここの者。特に集落の者は積極的に関わってはくれない。
強引に聞き出すしかない。
ただそれで果たして我々の望んだことを得られるだろうか?
見知らぬ土地で勝手も分かってない訳で。
やはりどこか間違ってる。そんな気がしてならない。
安全面も考慮すればこれ以上下手に動けない。
運良く旧東境村が見つかるなどあり得るのか?
それはただの夢物語なのでは?
メモ。
調査により判明したこと。
一、町全体で若い女性が少ない。どこかに留学? 出稼ぎ?
二、若者もいるが多くは子供か老人。若い男はどこへ?
三、常冬地方特有の気候について。
西常冬町にしろ東常冬町にしろ一年を通して寒いと言われている。
その理由はどうやら東の地域から流れ込んだ強烈な寒気によるものではないかと。
そんな風に言われている。
東の地域とは具体的にどこなのか?
当然よそ者には教えられないのだろうが。
それ以上になると皆口を閉ざしてしまう。
まさか旧東境村と関係があるのか?
異世界ノートより。
続く
「これは何だ? ああ…… カズトまたやっちまったのかお前?
もう言い訳できないぞ? 」
盗もうとした罰なのにそこでまた盗むとは呆れる。
何を考えてるんだろうこいつは? 信じられない。
もう目も当てられない。頭が痛いわ。
「何を言ってるの先生? 」
ペットボトルの水を飲み干し薄ら笑いを浮かべるカズト。
これはまったく反省してないな。それかさっきは演技してたかだ。
「しかし盗ったものだろ? 」
「違う! 違う! 掃除してたら見つけたんで。ゴミと一緒にね。
報告したらいらねえからもらっとけってさ。
あの人たちも良いところあるよね。俺見直しちゃったよ」
「そうなんです」
部長も頷く。
確かに奴らは見た目に反して紳士的だ。
決して暴力を振るおうとはしなかった。そこが好印象。
聴衆もそれは同じだった。ただ盛り上がっただけだった。
「偉いぞお前ら! もらえる者は何でももらっておけ!
何の役に立つか分からないからな! 」
イント一枚獲得。
これで合計七枚となった。
「先生セコイ! 」
アイが笑うが俺は探索者の鉄則だと返す。
ハイハイとちっとも理解してくれない。
ふん。そのうち分かるさ。俺の偉大さがな。
何はともあれ無事に二人が戻って来た。
これは実に喜ばしきこと。
ただ喜んでばかりはいられない。こういう時こそ気を引き締めなければな。
慎重にも慎重に。
出来れば引率する者としてはこれ以上トラブルは避けて欲しい。
「二人が戻って来てようやく落ち着きましたね青井先生? 」
「はい。こいつらはまったく…… こっちは生きた心地がしなかったよ。
いつも心配ばかりかけやがって。そうですよねミホ先生? 」
「ええ本当に。でも良かった。ふふふ…… 」
トラブルも解決。和やかな雰囲気に。
「落ち着いたところで今日の目標は…… 」
なぜかいきなりタオが仕切り出す。
「おいおい俺の役目を取るなよ。
いくら部長でも今回の作戦の責任者は俺なんだからな。勝手は許さんぞタオ! 」
「でも先生が…… 」
タオがいじけてしまう。まずいまずい。どうしよう?
「いや言い過ぎた。俺の代わりはお前しかいない」
「もう先生…… 」
そう言ってタオが笑い出す。
ふう危ない危ない。
「青井先生ったら…… 」
ミホ先生も続き皆が笑い出した。
「ははは! 何を笑ってるんだ? 」
何がおかしいのか分からないが取り敢えず笑っておく。
俺だけ乗り遅れてなるものか。
「うわ先生怖い…… 」
アイの軽蔑の目。まったくこいつと来たらまったく。
先生を尊敬してんだかしてないんだか。
アイの告白って何だったの? 夢だったとか? 先生悲しいぞ。
異世界探索隊は町の調査を開始する。
昨日同様タピオカ部と異世界探索部に別れる。
調査にはたっぷり三時間を費やす。
夕方に合流し集落へ。
町の調査にはまだ当分時間がかかりそうだ。
そもそも目的がよく分かってないんだよな。
旧東境村が目的地なのは間違いないんだが。
その手掛かり一つ見つからない。
思うように進まず明日以降に期待と言うことで。
うん。これも仕方ないこと。
ここの者。特に集落の者は積極的に関わってはくれない。
強引に聞き出すしかない。
ただそれで果たして我々の望んだことを得られるだろうか?
見知らぬ土地で勝手も分かってない訳で。
やはりどこか間違ってる。そんな気がしてならない。
安全面も考慮すればこれ以上下手に動けない。
運良く旧東境村が見つかるなどあり得るのか?
それはただの夢物語なのでは?
メモ。
調査により判明したこと。
一、町全体で若い女性が少ない。どこかに留学? 出稼ぎ?
二、若者もいるが多くは子供か老人。若い男はどこへ?
三、常冬地方特有の気候について。
西常冬町にしろ東常冬町にしろ一年を通して寒いと言われている。
その理由はどうやら東の地域から流れ込んだ強烈な寒気によるものではないかと。
そんな風に言われている。
東の地域とは具体的にどこなのか?
当然よそ者には教えられないのだろうが。
それ以上になると皆口を閉ざしてしまう。
まさか旧東境村と関係があるのか?
異世界ノートより。
続く
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