タピタピクライシス 閉ざされた楽園 美しくも儚い青春残酷物語

二廻歩

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見張り役

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ボロボロで油染みがびっとりついた白い服の二人組。
どうやら船の所有者は彼ららしい。
地元の者と揉める訳には行かないので仕方なく二人を差し出す。

「先生良いんですか? 生徒が困ってますよ」
タオは俺に一緒に謝って来いと暗に言っている。
待ってくれ。それは二人のプライドを傷つけることになる。
だからここは敢えて影ながら見守るべきだろう。
それが男と言うもの。だが決して理解してくれないんだろうな。

「しかし俺は腰が悪くて謝罪が出来ないんだ。情けない先生で済まない」
適当なことを言ってみる。
「登山しましたよ。お婆さんもおぶったりしましたが」
ミコが指摘する。
「そうだよねミコちゃん。ミコちゃんの言う通り」
「ああ。だから恐らくその時に痛めたんだろう」
「はい嘘は良いですから早く行って! 」
アイに突き飛ばされる。
俺一応は尊敬すべき教師なんだけどな。扱いが雑と言うか軽いんだよな。

仕方なく二人に付き添うことに。
面倒で嫌だが仕方がない。
雑な謝り方で余計に怒らせたらまずいしな。
あいつらがしたこととは言え当然ながら監督責任は俺にある。

「申し訳ありませんでした! 」
なるべく心が籠るように大げさにやってみる。
「おいおいお前ら。もっと頭を下げないか! 気持ちが伝わらねえぞ! 」
危ない危ない。怒らせては元も子もない。
だが何だかイチャモンのつけ方がダサいんだよな。
残念な奴らだな。相手はまだまだ子供の高校生なんだから勘弁してやれよな。

「悪いが従ってくれ」
二人は俺に倣って深々と頭を下げる。
角度は四十五度が目安だ。
「申し訳ありません! 」
「お許しください! 」
心を込めて謝罪すればきっと彼らも分かってくれるはず。

「もういいぞ! お前らも充分反省してるみたいだし今回はこれで勘弁してやら。
二度とやんなよ? 次はねえぞ。分かったな? 」
願いと言うかクレームが届いたらしい。
「はい! 」
二人は声を合わせ誓う。
「よし。では二人には罰として船の清掃だ。早く取り掛かれ! 」
こうしてどうにか絶体絶命のピンチから逃れた。
ふうこれで一安心だ。
「はい! 」
嬉しそうに港の方へ走って行った。

いくらオンボロ船とは言えいじくり回したり操縦したいんだろうな。
俺も小さい頃は似た様なものだったから。
だがさすがに盗もうとは思わない。
あれが本当に動くのかは別として気持ちは分かる。
さあここは二人が終わるまでのんびりしてますか。
昨日あんまり眠れなかったからな寝てるか?
いや昼飯を食べるんだったな。
さあ何を食おうか。

「おいあんた! 保護者だからちゃんと見張ってろっての!
次は本当にねいから。もう知らねいぞ! 」
脅しをかける。念を入れる徹底ぶり。
「もちろん分かってますよ」
「しっかりやれよ! 」
そう言うと男たちは去って行った。
うんこれで適当に終わらせても大丈夫。
もちろんこの町を去る気ならだが。
そんな愚かしい選択はしない。
さあ見張りを頑張りますか。
でもあれはどう見ても漁船だったような気がするがな。

男たちが去ると見物人も散って行った。
そうして誰もいなくった。
今までの騒ぎは何だったのだろう?
まあいいプラスに考えよう。
トラブルがあったとは言え町の者と触れ合うことが出来た。
ある程度我々を認識してもらえただろう。 
両方とも素晴らしい進歩。

フィールドワークにしろ探索にしろ地元の人との触れ合いが大事。
彼らと少しずつ距離を縮めて行けば有益な情報も得られるはずだ。
渡しのお爺さんを紹介してもらったように。

それに危険な野蛮人のイメージはなく悪いことをしたから叱っただけだった。
確かに船泥棒は盛大な勘違いだろう。
それでもよそから来た見知らぬ者に警戒するのは理解できる。
明らかにこちらの落ち度であり教育不足。
何だかんだ言って生徒たちを甘やかして来たからな。そのツケが回ったかな。
きちんと謝罪すれば許してくれた訳だしな。少しだけ見直した。
もしかすれば彼らならきちんと説明したら協力してくれるかもしれない。
協力者は多いに越したことはない。

「おい二人ともしっかり最後まで掃除しろよ」
大丈夫だとは思うが念ために釘を刺す。
ここで逃亡されたらたまらないからな。
分かりましたと素直な返事が返って来る。

さあこれでゆっくり出来るぞ。
まずはエネルギー補給だな。
昼にするとしよう。

                 続く
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