163 / 171
追い駆けられて
しおりを挟む
別行動のイセタンとカズトの二人と合流。
「だから先生早く! 」
カズトは怯える。一体何をそんなに焦る必要があるんだ。
間抜けな思いつきでダイブしたことを咎められるとでも思ったのか?
「待ちなさい。まだ擦り傷が…… 」
負傷者の手当てはまだ終わらない。と言ってもダイブした時のカスリ傷だが。
まったく願いが叶ったんだから大人しくミホ先生に介抱してもらえよな。
付き合いの長い俺だってまだそんな風に甲斐甲斐しくしてもらったことないのに。
そうか…… 平和だったから。
いくら合宿とは言え見知らぬ土地で怪我をするなんてそうそうないからな。
ふういい加減疲れたよ。学園生活は楽しかった。
もう戻れぬ日常を懐かしむ。
おっと…… 俺が感傷的になってどうする?
生徒を導かなければならない立場なんだぞ。
気をしっかり持たなければ。
ざわざわ
ざわざわ
「騒がしくするんじゃないお前たち! 」
あれ騒がしい? どう言うことだ?
どちらかと言えば大人しい方の二人。
なぜこんなにも騒々しんだ? 訳が分からない。
「おいお前ら! そいつらを引き渡せ! 」
頭に血が上った数人の男たちが息を切らして迫る。
まさか本当にトラブルを起こしたのか?
てっきりふざけてるのだとばかり。きちんと聞いてやるべきだった。
あいつらはさすがに観光客じゃないから地元の者だろう。
まったく奴らを怒らせて良いことなど一つもないのに。
子供のしたことだからは通用しないよな。あの怒り方では。
どうやって穏便に済ますか。もうそれで頭が一杯。
「この二人が何か? 」
逃げるべきか? 今逃げればどうにか…… ダメだ。見られている。
それに二人だけなら逃げられてもミホ先生たちは無理だ。捕まっちまう。
ここは大人しく引き渡すしかなさそうだ。
しかし奴らは一体何をしたんだ?
「こいつらは俺らの船を盗もうとしやがった。
お仕置きせにゃ。早く引き渡さんか! 」
この中で一番冷静な男が交渉役。
どう見ても不適格に見えるが他の奴らよりは冷静だそうだ。
「構わずにやっちまおうぜ! 」
野蛮な連中が騒ぎ出した。
どうする? どうすればいい?
彼らが騒ぎ立てるものだから近くの者が集結しだした。
恐らく娯楽の少ないこんな山奥では格好の見世物。
当然俺たちは敵。この地域に害をもたらす悪魔の使いだとでも思っているのだろう。
いいぞいいぞと無責任に騒ぎ立てる輩。
こんな時はどうすべきか? 失敗は許されない。
これではますます逃げられない。
隙を突いての電撃作戦は選択肢から消える。
ザワザワと人だかりができる。
若者もいるにはいるじゃないか。
こんな時にいなくたっていいんだけどな。
老人主体なら戦っても逃げても何とかなったがこれではもう話し合いしかない。
温厚な人々だと願うしかない。
「ほら何をやってるんだ! 」
「そうだそうだ。早くしろよ! 」
何度も言うがここにいる者は全員敵。
俺たちがそう思わなくてもあちらは思っている。
しかも盗みを働いたんじゃ言い訳のしようもない。
町の人からのイメージダウンは文字通り命取りになる。
慎重にも慎重に。対応を誤ればこいつら全員が暴徒化して襲ってくるだろう。
そんな恐ろしい未来も見えなくもない。
ふう暑いな。それにしても暑い。
もう興奮して体中が熱く燃える。そんな気分。
まるで俺に正面から戦えと言ってるようだ。
しかし俺はただの英語教師。体力に多少自信がある程度。
こっちの戦力は疲れ切った異世界探索部の二名。
ミコが意外にも戦力になるかもしれないが。やはり未知数だ。
「早くしろって! 」
催促される。
うん? これはまだ俺たちの真の目的に気づかれてないってことだよな。
こんな状況だが一安心。目的に気づかれて取り囲まれるのだけは避けねば。
切り抜ければもしかしたら……
「おいお前ら何をしたんだ? 」
引き渡す前に念の為に話を聞く。誤解があったかもしれないからな。
二人が船を盗むメリットがどこにある?
操縦も出来ないだろうし燃料だってあるかどうか。
「別に何も…… 」
「ウソをつけ! 船を盗もうとしたって言ってるぞ? 」
この状況でシラを通すんだったらお前らが交渉しろよな。
「それは…… 動くかどうか確かめてたんだよ。
動くようだったら借りようとして…… こいつがそう言うから」
イセタンがカズトのせいにする。その可能性の方が高いが同罪だろう。
「ふざけるな! 俺は冗談で。そしたら部長が…… 」
「そんなことない! 」
醜い擦り付け合いが始まる。
お互いに相手のせいにして自分は悪くないと言うスタンスを取る。
まったく呆れるな。反省もしないで人のせいにしてどうする?
「うるさい! 二人でやったことだから二人できちんと謝罪してこい! 」
突き放す。なぜ俺がこんなアホなことで巻き込まれなければならない?
「分かったら早くしろ! 」
「はーい」
何て言ってもまだ高校生。聞き分けは特にいい方。
ボロボロの油染みがびっとりついた白っぽい服の二人組。
船の所有者はどうやら彼ららしい。
続く
「だから先生早く! 」
カズトは怯える。一体何をそんなに焦る必要があるんだ。
間抜けな思いつきでダイブしたことを咎められるとでも思ったのか?
「待ちなさい。まだ擦り傷が…… 」
負傷者の手当てはまだ終わらない。と言ってもダイブした時のカスリ傷だが。
まったく願いが叶ったんだから大人しくミホ先生に介抱してもらえよな。
付き合いの長い俺だってまだそんな風に甲斐甲斐しくしてもらったことないのに。
そうか…… 平和だったから。
いくら合宿とは言え見知らぬ土地で怪我をするなんてそうそうないからな。
ふういい加減疲れたよ。学園生活は楽しかった。
もう戻れぬ日常を懐かしむ。
おっと…… 俺が感傷的になってどうする?
生徒を導かなければならない立場なんだぞ。
気をしっかり持たなければ。
ざわざわ
ざわざわ
「騒がしくするんじゃないお前たち! 」
あれ騒がしい? どう言うことだ?
どちらかと言えば大人しい方の二人。
なぜこんなにも騒々しんだ? 訳が分からない。
「おいお前ら! そいつらを引き渡せ! 」
頭に血が上った数人の男たちが息を切らして迫る。
まさか本当にトラブルを起こしたのか?
てっきりふざけてるのだとばかり。きちんと聞いてやるべきだった。
あいつらはさすがに観光客じゃないから地元の者だろう。
まったく奴らを怒らせて良いことなど一つもないのに。
子供のしたことだからは通用しないよな。あの怒り方では。
どうやって穏便に済ますか。もうそれで頭が一杯。
「この二人が何か? 」
逃げるべきか? 今逃げればどうにか…… ダメだ。見られている。
それに二人だけなら逃げられてもミホ先生たちは無理だ。捕まっちまう。
ここは大人しく引き渡すしかなさそうだ。
しかし奴らは一体何をしたんだ?
「こいつらは俺らの船を盗もうとしやがった。
お仕置きせにゃ。早く引き渡さんか! 」
この中で一番冷静な男が交渉役。
どう見ても不適格に見えるが他の奴らよりは冷静だそうだ。
「構わずにやっちまおうぜ! 」
野蛮な連中が騒ぎ出した。
どうする? どうすればいい?
彼らが騒ぎ立てるものだから近くの者が集結しだした。
恐らく娯楽の少ないこんな山奥では格好の見世物。
当然俺たちは敵。この地域に害をもたらす悪魔の使いだとでも思っているのだろう。
いいぞいいぞと無責任に騒ぎ立てる輩。
こんな時はどうすべきか? 失敗は許されない。
これではますます逃げられない。
隙を突いての電撃作戦は選択肢から消える。
ザワザワと人だかりができる。
若者もいるにはいるじゃないか。
こんな時にいなくたっていいんだけどな。
老人主体なら戦っても逃げても何とかなったがこれではもう話し合いしかない。
温厚な人々だと願うしかない。
「ほら何をやってるんだ! 」
「そうだそうだ。早くしろよ! 」
何度も言うがここにいる者は全員敵。
俺たちがそう思わなくてもあちらは思っている。
しかも盗みを働いたんじゃ言い訳のしようもない。
町の人からのイメージダウンは文字通り命取りになる。
慎重にも慎重に。対応を誤ればこいつら全員が暴徒化して襲ってくるだろう。
そんな恐ろしい未来も見えなくもない。
ふう暑いな。それにしても暑い。
もう興奮して体中が熱く燃える。そんな気分。
まるで俺に正面から戦えと言ってるようだ。
しかし俺はただの英語教師。体力に多少自信がある程度。
こっちの戦力は疲れ切った異世界探索部の二名。
ミコが意外にも戦力になるかもしれないが。やはり未知数だ。
「早くしろって! 」
催促される。
うん? これはまだ俺たちの真の目的に気づかれてないってことだよな。
こんな状況だが一安心。目的に気づかれて取り囲まれるのだけは避けねば。
切り抜ければもしかしたら……
「おいお前ら何をしたんだ? 」
引き渡す前に念の為に話を聞く。誤解があったかもしれないからな。
二人が船を盗むメリットがどこにある?
操縦も出来ないだろうし燃料だってあるかどうか。
「別に何も…… 」
「ウソをつけ! 船を盗もうとしたって言ってるぞ? 」
この状況でシラを通すんだったらお前らが交渉しろよな。
「それは…… 動くかどうか確かめてたんだよ。
動くようだったら借りようとして…… こいつがそう言うから」
イセタンがカズトのせいにする。その可能性の方が高いが同罪だろう。
「ふざけるな! 俺は冗談で。そしたら部長が…… 」
「そんなことない! 」
醜い擦り付け合いが始まる。
お互いに相手のせいにして自分は悪くないと言うスタンスを取る。
まったく呆れるな。反省もしないで人のせいにしてどうする?
「うるさい! 二人でやったことだから二人できちんと謝罪してこい! 」
突き放す。なぜ俺がこんなアホなことで巻き込まれなければならない?
「分かったら早くしろ! 」
「はーい」
何て言ってもまだ高校生。聞き分けは特にいい方。
ボロボロの油染みがびっとりついた白っぽい服の二人組。
船の所有者はどうやら彼ららしい。
続く
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる