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二人の行方

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三日目。
集落に広がるのんびりとした雰囲気。
うーん眠い。朝っぱらから付き合わされたから。眠くて眠くて。
このまま何事もなく進んで運よく旧東境村に行けたらな。
そして奇跡的に異世界を発見出来たら。
ははは…… そんな甘くないか。
東へ進めば進むほど日が経てば経つほど危険は増していく。
我々は恐ろしい世界にもう足を踏み入れている。

昨夜ぬえさんがぽろっと口にした言葉が頭から離れない。
『旧東境村へ行けば山姥などかわいいものだ』とはどう言う意味だったのだろう?
まさか地獄がもう目の前に迫ってるのか?

「よし行こう! 」
もう飽きたとさっさと片付けだす名人。
「もう少しいいでしょう? 」
「いや諦めろ! もう二度と巡り会えはせん! そう簡単なものではない。
奴だって警戒してるはず。悪いことは言わないから諦めるのだ」
名人に諭される。
だが頭では分かっていても次は釣れるのではないかとやめられない。
まだまだだと粘るが名人はやめておけと言うのみ。
俺にはツキがある。だから必ず釣れるはず。
そう思うとどうしてもやめられない。

「そうですね。そろそろ終わりにしようかな…… あと一回! 」
「ははは…… 本当に諦めの悪い奴じゃのう」
呆れられてしまう。
「でも…… まだ時間ありますし…… 」
「ほれ行くぞ! 」
名人に引っ張られるも振り解く。
「もうちょっとだけ! お願いですから! 」
つい熱くなってしまう。もう自分ではどうすることも出来ない。
「仕方ない。もう少しだけじゃぞ」
名人が折れる。

やった。これで心置きなく釣りが出来る。
さあ掛かって来い俺の巨大魚! 絶対に釣り上げてみせる! 
いつの間にかただの格闘フィッシングに変わったような気もするがまあいいか。
のんびりと釣りを楽しもう。

「先生。青井先生! 」
遠くから俺を呼ぶ声がする。
だが今振り向いてなるものか。
もう少しで釣れるんだからそれまで待っても罰は当たらない。

「呼ばれておるが…… 」
「聞こえません! 」
「はあ…… では先に行かせてもらうぞ。お疲れ様」
薄情にも置いて行く。まあ仕方ないか。
さあ続けるぞ。釣り続行!

だが集中できない。何と言っても呼ばれてるのだから。
しかも幽かに届く程度ではなくはっきり聞こえるほど。
当然無視するがそれでも声は近づき強くなっていく。
まるで耳に直接語りかけるような感覚。
もう耳を塞ぐしかないぐらい。そうでなければ観念して釣りをやめるか。
アタリもない。もう潮時だな。

「青井先生? 青井先生ったら! 」
クソ! 何てタイミングで来るんだ。
振り返るとミホ先生の姿が見えた。
分かってたよさっきから。でも敢えて聞こえない振りをしていた。

絶対に一匹釣り上げてやる! もう幻の魚でなくていい。
大きくなくていい。可愛らしいのだって構わない。
一匹は釣り上げたんだから。でもバケツには水しか。
釣れないなんて情けない。時間の無駄だと思われる。
生徒にどう言い訳すればいいのやら。そのことばかりが頭にある。
しかも決して頭から離れない。
ああもう嫌だ。嫌だ。俺なんてただのダメ教師さ。
へへへ…… もういいや。
ようやく諦める決心が着いた。

「もう! 青井先生ったら! 」
怒ってるだろうな。そのまま横に腰掛けたよ。
「ああミホ先生おはようございます。どうしたんですか? 」
この際だから聞こえなかったことにしよう。
無理があるだろうがミホ先生なら大丈夫。いつだって俺の味方だから。

「青井先生。ちゃんと話を聞いて! 生徒たちはどうしたんですか? 」
昨夜は男女に別れて泊まった。
だから俺は二人の世話を任されている。
「実は…… 二人は…… 喰われてしまったんだ! 」
「何ですって? 本当ですか? 」
「それが…… あの家は元々山姥が住んでいまして…… 
無力なただの人間ではどうすることも出来ずに俺は命からがら逃げて来たんです。
残念です。本当に無力な自分を呪います」
「そんな冗談ですよね? 冗談? 」
ミホ先生は可愛らしいな。うん信じちゃってるよ。
「はい冗談です! 二人にはミッションを! 」
「青井先生! 」
怒り狂うミホ先生。これはピンタが飛んでもおかしくない。
「まあまあ軽い冗談ですから。今のところ問題ありません」

「それでどこへ? 」
朝早くに別れ買い出しをしてもらっている。
そう言えば今二人はどうしてるだろう?

                 続く
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