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裏切り者

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食後の腹ごしらえにと緩くミホ先生と異世界談義に花を咲かせようとしたのに。
いつの間にか熱中してしまう。

異世界って本当にあるのかな? 
ミホ先生の言うように紙の束の秘密を知れば誰でもあると思うだろう。
でもあれはアークニンが用意したもの。
奴の仕掛けた罠だとしたら? だがそれでもメリットがない。
俺たちが合宿でいつ東境村へ向かうか知らないはず。
現地に行けばそれでアークニンの用が事足りるならそれも納得できるが。

まさかこの中に裏切り者がいるのか?
そいつが俺たちの行動を逐一報告すればあるいは……
もしかしてアークニンはすでに車内にいるとか?
トイレついでに見回った時に怪しい奴はいなかったはずだが。
しかし奴本人でなくても仲間が乗ってるとしたら?
疑い出したらキリがない。

アークニンだってただの良い人の可能性も…… まずないが。
俺はいつの間にか疑心暗鬼に陥ってる。
誰も信用出来なくなっている。

俺たちはもう戻れないところまで来ている。
異世界探索部の者は異世界でどうなろうと本望だろう。
俺は騙されて顧問になりミホ先生は俺に頼まれてと言う経緯があるがそれでも……
しかし二人は違う。俺はタピオカ部を誘い二人を連れてきてしまった。
賑わいの足りない地味な旅が嫌だから無理を言って。
彼女たちに責任を持つのは当然のことだが連れて来たこと自体に問題が。

俺は異世界が身近に迫ったことで浮かれていた。
とてつもない残酷な世界が待ち構えてるとも知らずに。

「青井先生考え過ぎですよ。最近寝れてないのではないですか?
どうもお疲れ気味に見えます。本当に心配。
このままでは異世界、旧東境村にたどり着く前に倒れてしまいますよ」
俺の体を労わってくれる。うんさすがは副顧問に見込んだことだけはある。
そのミホ先生もアークニンの影響を受けいつの間にか異世界肯定派に。

「ミホ先生は何も感じないと? 」
「そんな! 人を何だと思ってるんですか? 私も不安がまず先に来ます。
博士の話では私も貴重なピースみたいですからね」
おいおい本当に話を聞いていたのか?
あそこまで言われてなぜ怒り狂わない?
ただ奴の理想の女性探しをしてるだけ。それに下手な言い訳を重ねてるに過ぎない。
なぜあんな奴信じるんだ? 一ミリだって信じられないよ。

アークニンの妄想の中では俺はいらない存在になる。
それは奴もはっきり言っていた。
奴の仮定の話での現実を受け止めればそうなる。
そうこの中で一番いらないのは俺だ。
ミホ先生と少女たちは異世界の扉の鍵となる。
異世界探索部の二人はどこに異世界の扉があるかを示す役目が。
それがどのようなやり方かまでは不明。
これもすべてアークニンの戯言を真に受けた場合の話。
そもそも異世界があるか不確か。ただ信じるしかない。

だが俺たちは本当に異世界にたどり着いていいのか? 危険ではないのか?
探索の旅が危険ならその後はもっと危険。油断できないだろうな。

「正直不安は誰でも。生徒たちもまだ子供ですしいくら異世界への憧れがあっても。
不安でたまらないはず。それを解消、癒すのが我々大人の役目。
俺たちで全面的にバックアップしていきましょう」
「はい。もちろん」
「そして異世界はアークニンの作り話でいたずら。あり得ない幻想世界。
冷静なあなたなら賛同していただけるかと」
これがミホ先生に言いたかったこと。アークニンに惑わされていけない。
「そうですね。私もこの目で確かめるまでは信じません」
冷静な本来のミコ先生。異世界を信じて疑わない目はもうそこにはない。

「何てね…… 今までのはただの暇つぶしですよ。さあ降りましょうか。
最後の乗り換えだ。遅れますよ」
「もう待って! 」

基本的に面白くするために俺以外目的地を知らない。
ミホ先生も協力者で副顧問ではあるが詳細は敢えて教えないように。
それは楽しみでもあるし恐怖を和らげるためでもある。
詳しいことはすべてこの脳にインプット…… はできないのでノートに。
いわゆるこれが異世界ノートって奴だ。別に何か特別な力が宿っている訳ではない。
ただのタイムテーブル。遅れることも考え柔軟に複数案を記す。
細か過ぎてもダメなので適当、適量。

ミホ先生も異世界までの地図を見たから覚えてるだろうがそれでも旧東境村ぐらい。
生徒たちは何一つ知らない。
それが異世界を探索する旅の醍醐味。
さあ大冒険の始まりだ!

                  続く
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