タピタピクライシス 閉ざされた楽園 美しくも儚い青春残酷物語

二廻歩

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チーム分け

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最寄りの駅からひたすら東へ。
いつも使っている銀色を基調とした電車。
当然ボックス席ではない。

土曜日とあって我々同様観光客の姿が。
もちろん我々はのんびり観光するのではない。
異世界を探す使命を帯びているのだ。

生徒たちは大人しく座っている。少しの間皆の前に立つ。
落ち着いたところで声を抑え話す。
「いいか? まずは旧東境村がどこにあるのか?
または実在してるのかどうかを現地の人に聞くんだ。
ただし相手を見極めろ。騙されて嘘を吐かれるならまだマシだ。
命の危険だってある。充分注意しろ。分かったな? 」
聞き込み調査。聞き込みは基本中の基本。
フィールドワークにも欠かせないもの。
何も警察や探偵の専売特許ではない。
ただ警察と違って何の権力もないので相手にされないが。
だからこそ長い間かけてじっくり信頼関係を築くことが重要。

「聞こえません! 」
真面目に手を挙げる部長と釣られただけのアイ。
騒音で聞き取り辛いそうだ。
だが大声で話せば周りに聞こえてしまう。
これはとても重要な情報。特に旧東境村等の地名は下手に漏らせない。
俺たちを狙ってる奴はいないとは思うが慎重になる。
難しいんだよな。自然な方が良い気もするし怪しまれても警戒すべきか。
結局迷って中途半端になってしまう。

「取り敢えず二手に分かれる。俺とミホ先生のどちらかに三対四で。
よし今のうちに決めてしまおう。俺のチームに入りたい奴は手を挙げろ! 」
ここで声を張る。チーム分けは機密情報ではない。
あれ…… おかしいな誰も手を挙げない。これは一体どう言うことだ?
嫌な予感がする。物凄く嫌な予感が……

「ではミホ先生のチームに入りたいものは? 」
「はい! 」
部長君に釣られて全員が。見事に一対六に別れた。

「先生…… もういいのかな…… 途中下車しようかな」
つい虚しくなる。ここまで不人気とは。いやミホ先生の人気があるだけだが。
うん。褒め称えよう。
「ははは…… いやミホ先生には敵いませんね」
そうだろうな。面倒見もいいし憧れだろうな。
真面目過ぎるのが玉に瑕だが。

「ほら皆…… 」
ミホ先生に気遣われて嬉しいような悲しいような。
「冗談だって先生! 」
アイが手を挙げる。これであと一人いればいい。
うんうん嬉しい。涙が出そうになる。これってもしかして悲しみの涙?
「もう先生仕方ないな」
真面目なタピオカ部の部長が手を挙げる。
これでどうにかチーム分けの形が取れる。

Aチームは俺とタピオカ部の二人。
Bチームはミホ先生と異世界探索部の三人。
綺麗に別れた。バランスも良い。

「よしチームごとに並び直せ! 」
せっかく自由に座っていたが無理矢理チームごとに。
周りの迷惑を考えずに動き回ってしまった。
これはちょっとまずかったな。次回からは気をつけよう。

車内で今日一日の予定を確認。
俺を含め全員経験が不足している。
タピオカ部の二人は当然のことながら異世界探索部の三人も。
彼らは異世界探索として調査に赴いたが大したことはしてなかった。
アークニンの館ぐらいで大した差はない。
それでも多少は慣れてるので違いは出てくる。

ガタンゴトン
ガランゴロン

電車は東へ。
八月に入り学校もおやすみに入りあちらこちらで若者の集団が見られる。
どこに行くのだろう? 
我々も同様に思われてるんだろうな。
だがそれは違う。
彼らはどこかへ。少なくても受け入れるところがあるだろう。
それが山小屋でも南の島でも。外国でも。
だが俺たちは違う。目的地などない。
あるのは存在するかも分からない旧東境村。
それだって本当の目的地ではない。
我々は旅立つのだ。まだ見ぬ夢。異世界へ旅立つのだ。

その辺の観光旅行とは訳が違う。
規模もスケールも違うし何から何まで違う。
それを自覚してる者は何人いるだろうか?
合宿の延長だと思ってないだろうか?
異世界へ行く者。異世界を目指す者は選ばれた者なのだ。
おっとこれではアークニンのようではないか?
ははは…… 少々浮かれているのだろうな。
俺こそ覚悟も自覚もない。

電車がスピードを緩める。
「そろそろ降りるぞ」
「もう着きましたか? 」
部長以上に張り切っているカズト。
焦ってはいないだろうか?
「あのな…… 」
呆れるぜ。そんな早くも簡単にも着くはずがない。
「乗り換えるだけだ。今日はこのままだと移動だけで終わるかもな」

急いで皆を促す。

                  続く
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