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ミホ先生引き止め作戦

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ミホ先生の視線が刺さる。
うん俺何か変なこと言ったっけ? 
ただミホ先生の為を思っていろいろと提案しただけだが。
それが裏目に出た?

「なぜ着替えが? 」
疑問をつい口にしてしまう悪い癖の持ち主。それがミホ先生だ。
このままでは家に隠されてる美人三姉妹の二人の私物が見つかってしまう。
あいつら人の迷惑も考えずに勝手に置いて行くからな。

疑われたか? それともただ迷ってるだけか? 
まあ当然だよな。疑うのが普通さ。
一人暮らしだと知ってるもんな。
毎週金曜日に遊びに来る者が置いてってるとは口が裂けても言えない。
正直に話せば俺は嫌われるだけでなく教師を辞することになる。
だがどうしても言いたくて言いたくてたまらなくなる時がある。
楽になりたいと身勝手な自分。告白する誘惑に負けそうに。
その時は治まるまで必死に堪える。

「ああ妹が…… たまに遊びに来るんです。ははは…… 」
「妹? 末っ子と伺いましたが? 」
怒りの表情を浮かべる。うわ…… 早まってはいけない。
今懸命に言い訳を考えてるのだから。
「いや…… 本家の方の…… 」
「本家? 」
「違うんです。実は妹がいるんです。恥ずかしくて隠してました」
危ない危ない。サプロウタだから当然三男だが。
兄弟について詳しく彼女に語ったことあったっけ?

「妹さんのお名前は? 」
追及を緩めたかに見えたがそう甘くないらしい。これはまずいぞ。大ピンチだ。
「まだ考え中でして…… 」
「はあ? 」
「いえその…… イマジナリーと申しましょうか。想像上の…… 」
「青井先生! 正直にお願いします! 」

まずいな。いや待てよ。美人三姉妹だと言わなければいいのか。
ワイルドな俺は女には不自由してないのさ。ははは……
無理だ。それではどっちみちミホ先生に嫌われる。見捨てられる。
今までの関係が終わり副顧問さえ辞めるかもしれない。
どうにかミホ先生に支えられ教師を続けて来れたのに。
その支えを失う訳にはいかない。

これはダメだ。もう終わり。ここは誤魔化そう。
「そんなことよりもミホ先生には泊まってぜひお手伝い願います。
生徒の為にも。ね! ね! 頼みますよ」
誤魔化しつつ強引に引き止める。
本当なら金曜日のことがばれないようにお引き取り願いたい。
でもこの最大にチャンスを逃してなるものか。
ばれたらその時はその時。味方になってもらえばいいさ。
ミホ先生ならきっと分かってくれるよね…… たぶん?

「それは困りましたね…… 」
ミホ先生が悩んでいる。しかも俺のことで頭一杯に。
うんそれでいい。どうなろうと彼女の頭をすべて俺で満たしてしまえばいい。
当然彼女の気持ちを最大限に尊重しつつではあるが。
「うーん。本当にどうしましょう? 」
もういいだろ? 悩んでる振りはそれくらいで。本当はもう決心ついてるんだろ?
自分に正直にならなければダメだ。それがあなたの為になるのだから。
もちろん最終的には俺の為になるのだが。

迷ってなかなか決心がつかないらしい。仕方ない。ここは最後のひと押し。
クロージングでフィニッシュと行こう。
どんな販売員もこのクロージングで失敗すれば目の前の顧客は逃げて行く。

「泊まって行きましょう。合宿だってもうすぐ。
どこでも泊まれるようにしておかないと。どこでも寝れるようにもね。
山小屋やテントなどまだ良い方だと思いますよ。野宿だってあり得ます。
体を温め合って寝ることだって。全滅して一人になる場合だって。
常に俺が助けられる保証はありませんよ」
卑怯で汚いのは自覚してる。それでもミホ先生が欲しい。
これはもしかすると美人三姉妹にでも毒されたか?
俺はもうただの変態教師に成り下がったらしい。

ついに最後の扉が開く時。
「まだ決心が…… 」
「もし得体の知れない旧東境村で泊まることになったらどうするんです?
我々の旅は大変ハードになるはず。だからこそ今から慣れさせた方がいい。
これはミホ先生の為に言ってるんです。俺は受け入れる覚悟がありますから」
これで完璧だ。ミホ先生だってここまで言われたらノーとは言えまい。

「ふう…… そうですね。青井先生に従いましょう。
それではそろそろ始めましょうか? 」
ついに決断した。そうそれでいい。
静寂が嫌でつけてただけのテレビを消し立ち上がるミホ先生。
勝手に消さないで欲しいな。

俺たちはこの後どうなってしまうのだろう?


                   続く
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