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仲間外れ

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ZERO館。
異世界探索部は四泊以上で異世界探しの旅。
タピオカ部がお洒落なホテルに泊まるのに対して異世界探索部の方は……
山小屋やテントに野宿等もはや旅行とも宿泊とも言えないような過酷な旅。
比較に意味がないのは分かってる。
でも俺には豪華な食事と快適な宿が待っていると信じたい。

異世界が見つかるまで合宿は終わらないそうだ。
要するに生徒たちが満足するまで付き合わされることになる。
これもすべてアークニンによって異世界がグッと引き寄せられたから。
異世界が遠い遠い世界ではなく身近に感じられるようになった。
罪なことをしてくれるぜアークニンはよ。
そんなに簡単に見つかるはずがないじゃないか。本当に子供だぜこいつらは。

合宿には異世界探索部全員の参加が決まった。
ただ三人なので盛り上がりに欠けるかな。
引率含めても五名。大所帯よりは規律が守られるだろうが。
これは何とかしなくては。

現在俺は限定的にだが異世界探索部を中心に見ている。
タピオカ部はミホ先生が担当。
俺が行けないのでこれも仕方ないこと。

異世界探索部の方は部長に任せて隣のタピオカ部に顔を出す。
「台湾旅行かあ。いいな…… 」
俺の行かない旅行で盛り上がられても困るんだよな。
浮かれたタピオカ部の皆を見るの辛い。
ミホ先生も例外なく浮かれている。
分かってるとは思いますが引率だから楽しめないんですよ。
いや楽しんではいけないんだ! それくらいの強い信念を持って臨んで欲しい。
いくら比較的安全だと言っても外国は外国。いつ何が起こるか分からない。
もちろん異世界に比べればマシだが。
特に女性だけでは危険。
そう言ってみるがしっかりした現地ガイドがいるそう。
これは心配のし過ぎかな。
異世界の方も現地ガイドがいてくれると助かるんだけどな。

「青井先生の分まで楽しんできます。ご心配なく」
俺は別にそんなこと気にしてない。ただ皆と台湾旅行に行きたかっただけだ。
ちっとも俺のこと分かってくれないじゃないか。
「やっぱりサマー部の引率をサボろうかな」
何気ない一言をミホ先生は見逃してくれない。
「いけません! 青井先生はサマー部の顧問でもあるんですから」
説得される。もちろん分かってる。冗談に決まってる。
でもあれだけ自慢されて毎日のように聞かされたら心が傾くことだってある。
それを全然理解してくれないんだよなミホ先生は。もしかして鈍いのかな?

「でもさ先生が来ないと盛り上がらない…… ふふふ…… 何てね」
美人姉妹の長女が浮かれている。まったくふざけた奴だ。
浮かれるのは良いが周りが見えなくなっていないか?
「本当に残念です先生」
今度は二女。ちっとも残念がってる様には見えない。俺をからかって遊んでるな。
「お前らサマー部の引率と交換してくれないか? 」
「もう先生冗談はやめて! 何で私たちが訳の分からない部の引率するの? 」
そうは言うがこれは冗談ではない。俺は本気で言ってる。
だがミホ先生も生徒たちも相手にしない。当然か。

「お土産で勘弁してください」
部長に説得されてしまう。
「どうしてもダメか? 」
「一人でどうぞ」
ショートカットの髪を掻く。
先週思い切ってバッサリ切ったらしい。
前の方が断然似合うのに残念だよ。
顧問とは言え生徒の髪型についてとやかく言うつもりはない。
校則に違反しない限り好きにしたらいいさ。
ただ何かあったのか多少気になる。
聞いても赤くなってはぐらかすばかり。
これは失恋でもしたか? それとも決意? 反省? 何となく?

「先生と一緒にサマー部に行きたい人ハーイ? 」
唐突のことで皆固まって手を挙げない。
ただの冗談なのに真に受けて。可愛いところあるぜこいつら。
「先生はっきり言うね。諦めて! 」
美人三姉妹の二女が諭す。
そこまで言わなくてもいいじゃないか。俺が邪魔か?
「ふふふ…… ダメだよ先生」
可愛らしく繕うが笑みが漏れている。堪えきれてないようだ。
旅行が待ち遠しいと見える。
あーあやってられねえ。

「それではミホ先生。引率の件くれぐれもお願いします。
行けたら行きますんでその時はよろしく」
まだ諦めてないぞ。夢の台湾旅行。
「無理なさらないでください。異世界探索部の方もあるんですから。
もちろんサマー部の引率もですが」
言われなくたって分かってるさ。引率はそつなくこなすつもり。
だから俺を仲間外れにしないでくれ。頼むよ。

あー誰でもいい。俺を慕ってついて来るような心優しい子はいないのか?


               続く
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