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異世界の地図(本物)
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アークニン博士の後に続いて隣の博物館へ。
一階の展示室。
所狭しと展示物に資料が。
今までのアークニン博士の功績が事細かに紹介されている。
そこにはフィールドワークで得た貴重な資料も。
ほとんどが異世界に関するものだが稀に大発見も。
その一つとして新種の生物を発見。
ジャングルの奥地でアークニンが発見したと言われる虫。
その名もアークニン虫。ごく小さな虫でハエや蚊の半分ほどの大きさ。
吸血はしないが卵を産み付ける習性がある。
今のところ人間には害はないものの進化すればあるいは。
アークニン虫の発見は世界に何をもたらすのか?
厳重に周りを囲んでいる展示物。
ショーケースに収められている展示物は何と…… 分からない。
これが何なのか誰にも分からない。
生徒に確認するも首を振るばかり。
部長も諦め顔。
ミホ先生は汚らわしいものを見るような目で睨みつける。
心底拒絶してるのが分かる。嫌なんだろうな。
俺は絶句したままアークニンの解説を待つ。
「博士! このゴミは何ですか? 」
すかさず部長が質問をする。
「このゴミはな…… ゴミとは何だ! これは大変貴重なものなのだぞ! 」
釣られたとは言え自分でゴミだと認めたくせに怒るんだから大人げないよな。
ケースの中身は紙の束のようで黄色く変色しており何かまったく見当がつかない。
これは紙の束以外の何物でもない。
紙をじっくり観察してみても何か映ってる訳でもなく何か書かれてる訳でもない。
一体何なんだこれは? これが奴が見せたがったお宝? 俺にはまったく。
アークニンの正気を疑うレベル。
「博士! 」
「アークニン! 」
「うむ。これが何かは実は私にも分からない」
真剣な表情で言うものだからこけそうになる。
「はあ? ふざけてるのかアークニン? やっぱりただのゴミじゃないか! 」
「まあ落ち着け。今はまだこれが何かは残念ながら私にはまったく。
この意味か分かるかな? 」
常に生徒たちにプレッシャーをかける。癖みたいなのだろうな。
特別講師としてなら有能かもしれないが教える内容が異世界のみだからな。
訳の分からない質問で動揺を誘い自分の思い通りにコントロールしようとする。
侮れないマッドサイエンシスト。
誰も答えられない。当然だ。ただのゴミだからな。
それをあたかも宝のように大事そうに保管してるから勘違いされるのだ。
「良いだろう。順を追って話す」
ショーケースの鍵を開け中身を取り出す。
全体的に黄ばんで薄汚れた書物。正確には紙束。
館長が取り扱いには充分注意するように念を押すも誰も触ろうともしない。
それだけ神聖で神々しいのではなくただ単に触りたくないだけ。
「異世界研究に没頭していたある日私は貴重な情報を得た。
それは一人の女性の手柄と言える。いや夫婦の手柄だろう。
彼女は何を隠そう異世界探索者の妻。
大金を投じ異世界研究してると思わなかった彼女は行方不明の夫の帰りを待った。
妻には金の発掘調査と偽って。同志にはこのような言い訳する輩が多い。
仲間と妻を騙した男はついに異世界を発見。
もちろん公式記録には記載がない。
だからまだ異世界は発見されていない。
彼の偉大な功績は我々が語り継ぐべきだろう」
「ああ質問は後だ。続けるぞ。
異世界を発見した男は何年かして発見される。
妻は何年経過したかまでは正確には覚えてないそう。
それはそうだろうな。音沙汰なしでは死んだと思われても仕方がない。
ただ死亡扱いを受けてないのでそれほど経ってないのだろう。
「いいか。ここからが重要なところだ。聞き逃すなよ。
夫発見の知らせは意外なとこから。
アメリカ。パスポートも失くし入国手続き出来ずにスパイ容疑を掛けられ投獄。
しかしその直前にその紙の束と共に一枚のメモを日本にいる妻の元へ送る。
どうやらお世話をした者がいたかワイロを渡したか。無事に妻の元へ届いた。
だからこそ妻も会いにわざわざアメリカへ。結局会えずに帰国。
それ以上のことは語ってはくれなかった」
「おいまさかこの紙の束が男が送ったものだと言いたいのか? 」
「そうだ。私も研究を尽くしたが未だに謎の解明には至っていない。
しかし異世界の地図だと考えられる」
異世界の地図? もう完全にイカレテやがるぜ。
アークニンにはもうついて行けないよ。
続く
一階の展示室。
所狭しと展示物に資料が。
今までのアークニン博士の功績が事細かに紹介されている。
そこにはフィールドワークで得た貴重な資料も。
ほとんどが異世界に関するものだが稀に大発見も。
その一つとして新種の生物を発見。
ジャングルの奥地でアークニンが発見したと言われる虫。
その名もアークニン虫。ごく小さな虫でハエや蚊の半分ほどの大きさ。
吸血はしないが卵を産み付ける習性がある。
今のところ人間には害はないものの進化すればあるいは。
アークニン虫の発見は世界に何をもたらすのか?
厳重に周りを囲んでいる展示物。
ショーケースに収められている展示物は何と…… 分からない。
これが何なのか誰にも分からない。
生徒に確認するも首を振るばかり。
部長も諦め顔。
ミホ先生は汚らわしいものを見るような目で睨みつける。
心底拒絶してるのが分かる。嫌なんだろうな。
俺は絶句したままアークニンの解説を待つ。
「博士! このゴミは何ですか? 」
すかさず部長が質問をする。
「このゴミはな…… ゴミとは何だ! これは大変貴重なものなのだぞ! 」
釣られたとは言え自分でゴミだと認めたくせに怒るんだから大人げないよな。
ケースの中身は紙の束のようで黄色く変色しており何かまったく見当がつかない。
これは紙の束以外の何物でもない。
紙をじっくり観察してみても何か映ってる訳でもなく何か書かれてる訳でもない。
一体何なんだこれは? これが奴が見せたがったお宝? 俺にはまったく。
アークニンの正気を疑うレベル。
「博士! 」
「アークニン! 」
「うむ。これが何かは実は私にも分からない」
真剣な表情で言うものだからこけそうになる。
「はあ? ふざけてるのかアークニン? やっぱりただのゴミじゃないか! 」
「まあ落ち着け。今はまだこれが何かは残念ながら私にはまったく。
この意味か分かるかな? 」
常に生徒たちにプレッシャーをかける。癖みたいなのだろうな。
特別講師としてなら有能かもしれないが教える内容が異世界のみだからな。
訳の分からない質問で動揺を誘い自分の思い通りにコントロールしようとする。
侮れないマッドサイエンシスト。
誰も答えられない。当然だ。ただのゴミだからな。
それをあたかも宝のように大事そうに保管してるから勘違いされるのだ。
「良いだろう。順を追って話す」
ショーケースの鍵を開け中身を取り出す。
全体的に黄ばんで薄汚れた書物。正確には紙束。
館長が取り扱いには充分注意するように念を押すも誰も触ろうともしない。
それだけ神聖で神々しいのではなくただ単に触りたくないだけ。
「異世界研究に没頭していたある日私は貴重な情報を得た。
それは一人の女性の手柄と言える。いや夫婦の手柄だろう。
彼女は何を隠そう異世界探索者の妻。
大金を投じ異世界研究してると思わなかった彼女は行方不明の夫の帰りを待った。
妻には金の発掘調査と偽って。同志にはこのような言い訳する輩が多い。
仲間と妻を騙した男はついに異世界を発見。
もちろん公式記録には記載がない。
だからまだ異世界は発見されていない。
彼の偉大な功績は我々が語り継ぐべきだろう」
「ああ質問は後だ。続けるぞ。
異世界を発見した男は何年かして発見される。
妻は何年経過したかまでは正確には覚えてないそう。
それはそうだろうな。音沙汰なしでは死んだと思われても仕方がない。
ただ死亡扱いを受けてないのでそれほど経ってないのだろう。
「いいか。ここからが重要なところだ。聞き逃すなよ。
夫発見の知らせは意外なとこから。
アメリカ。パスポートも失くし入国手続き出来ずにスパイ容疑を掛けられ投獄。
しかしその直前にその紙の束と共に一枚のメモを日本にいる妻の元へ送る。
どうやらお世話をした者がいたかワイロを渡したか。無事に妻の元へ届いた。
だからこそ妻も会いにわざわざアメリカへ。結局会えずに帰国。
それ以上のことは語ってはくれなかった」
「おいまさかこの紙の束が男が送ったものだと言いたいのか? 」
「そうだ。私も研究を尽くしたが未だに謎の解明には至っていない。
しかし異世界の地図だと考えられる」
異世界の地図? もう完全にイカレテやがるぜ。
アークニンにはもうついて行けないよ。
続く
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