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孤立無援

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「青井先生…… 」
最悪のタイミングで副顧問のミホ先生が姿を見せる。
もう気がつかなかった振りで誤魔化そう。
いくら白々くてもごまかすしかない。
出来るかな…… うん無理そうだ。
冷静なら説得も出来ただろう。だが興奮状態では言い訳は通用しない。
まずは落ち着かせてから。話はそれからだ。

「いつもこのようなことをしてるのですか? 」
赤面して怒りが見え隠れ。もう限界は近い。ばれてしまったか?
俺は怒らせてしまった。この学校で出会った唯一のまともな人に。
いつもの優しいミホ先生とは明らかに態度が違う。様子がおかしい。
絶対に勘違いしてるぞ。

何か手を打たなければ副顧問就任も幻となる。
そうなれば疲労と苦悩は解消されぬまま続く。
生徒たちの為にも何としても引き止めねば。
だがその生徒たちが非協力的であり破壊的であるから大問題。
明らかに面白がって俺を嵌めようとしている。

「怒らないで。怒らないでくださいよミホ先生。
先生と生徒のちょっとしたお遊びですよ。そうだろなあ皆? 
真剣に捉えたら負けですよ。俺だって本当に困ってるんですよ」
正直に事実を話すが誤解は解けそうにない。
呆れたミホ先生に何を言っても通じない。
冗談や悪ふざけだといくら説明してもムダ。
怒り沸騰中のミホ先生。

「青井先生! 」
「ほら皆からも何か言ってやってくれよ。誤解したままではやりずらいだろ? 」
だが誰も反応しない。
いつも悪ふざけしながら笑っている美人三姉妹。
元凶の三姉妹が真剣な表情のまま下を向く。

嘘だろ? 見捨てやがった。
「おい! それはないよ! 先生だけ悪者にするのは納得できない」
だが誰一人として表情を崩さない。
「おい君! 頼むよ」
着替え中の生徒に懇願する。間抜けな展開。

「青井先生には失望しました! それから強要はよくありませんよ」
嘘だろ? こんな展開ありかよ? 俺が何をした?
ただ間違って着替えてるところにお邪魔しただけじゃないか。
もっと叫んでいいんだぞ。もっと物を投げたって構わない。
お願いだから何か言ってくれ。俺の立場が……
ミホ先生に誤解されるぐらいなら受け入れるよ。
孤立無援で一人焦りに焦る。

「どう言うことですか青井先生? 」
「どう言うことでしょうミホ先生? 」
質問に質問で返し余計に信用を失う。
俺を信じて欲しい。いつも信じていてくれたじゃないか。
どんなに叫ぼうと耳に届かない。
俺だけ悪者にされた。なぜこうなった?
どこを間違えた? 確かに毎日のことで麻痺していたのだろう。
俺が調子に乗っていたのも認めよう。
だがやはり俺だけのせいじゃない。
皆の共同芸術ではないか。それくらい理解してるものだとばかり。

「ちょっと待ってくれ! いつものことだろ? 
なあ早く言ってくれないと変態教師のレッテルを張られてしまう。ああ…… 」
泣き落としで訴えかける。この手は使いたくなかったな。
生徒から信頼を失うので最後の手段。特別な時に発動する。それが今?
それでも冷酷な生徒は誰一人表情を変えない。
俯いて涙を流す者まで。俺が泣きたいよ。
演技力は抜群。タピオカ部など辞めて演劇部に入ればいい。
しかも一人ではなく全員で。一糸纏わぬ…… ではなく一糸乱れぬチームワーク。

「青井先生? 強要はいけません」
どうして俺を信用してくれないんだ?
いつも俺がセクハラしてるとでも? とんでもない勘違いだ。
ミホ先生は俺を誰よりも理解してくれるものだとばかり。
だが実際は違った。おかしな正義感に凝り固まった人だった。
「おい皆嘘だろ? 先生悲しいぞ。英語の点をさ…… 」
なおも泣き落とし。少々情けないがミホ先生にも有効だからな。

「もうしょうがないな先生! 」
部長が堪えきれずに。
「そうだね。許してあげようか」
「うん。先生だけが悪いんじゃないもんね」
美人三姉妹の二人が口を開く。
優しいと勘違いしてはいけない。
奴らは俺を犯人に仕立て上げて陰で笑っている。
そう言うどうしようもない人間だ。
いくらきれいで魅力的に見えても心まできれいとは限らない。
美女とは本来どす黒い闇を抱えてるもの。
それは痛いほど実感してる。だとしてもここまで酷くしなくてもいいじゃないか。
俺たちは仲間。教師と生徒なだけでなく運命共同体なのだから。

                   続く
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