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異世界探索部

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俺はこのZERO館には今日初めて来た。
昨年からその存在だけは知っていたが用もなく立ち入ったりはしない。
「思い出してください先生! 」
どうやら本気らしい。彼女曰く俺が間違ってるのだとか。
どこが間違ってる? 何がいけない?
いけ…… イケ…… イケニエ?
まずい。己をコントロール出来ないあまりおかしなことを呟いてしまう。
何とか平常心を保たねばどうにかなってしまいそうだ。
恐怖体験に言葉を失う。
 
「そんな…… ここはまさか…… そんな馬鹿な! 」
「そうです。この部屋は先生が掛け持ちするクラブ。異世界探索部の部室です」
「異世界? 探索部? 」
聞いたことも見たこともない。未知の世界。ああだから異世界なのか。納得。

まさか女子風呂でも覗く気か? 女子風呂はまさに新世界との名言が。
それともクスリでも飲んでハイにでもなろうと? ダメだよそれは犯罪です。
後は…… 秘境でも探すとか? 宝探し的な? 徳川の埋蔵金。
ダメだ頭がグチャグチャ。もうついていけない。
脳が考えることを拒否しようとしている。それくらい危険な状況。

「大丈夫ですか先生? 」
「ああ気にするな。あまりの出来事に脳が追い付かないだけだ。
どうにか整理してるが一度記憶を消去しなけば復活は難しいかもしれないな」
学園七不思議が可愛らしく思えるほどの衝撃。
一度きれいさっぱり忘れられたらどれだけいいだろう?

『異世界探索部』
紹介してもらって悪いがまったく記憶にない。一ミリもない。
「先生? 青井先生? 」
「異世界探索部? 何だそれは? つまらない冗談で教師をからかうんじゃない!
第一そんな話聞いてないぞ! 」
あまりにもふざけ過ぎてるのでつい強く否定してしまう。
これが彼女の下手な冗談ならもっと軽く笑い流すべきだろう。
それが大人の余裕で。尊敬もされるはず。
だが荒唐無稽過ぎてさすがに苛立ってしまう。もう我慢の限界。

「冗談ではありません! そもそもスケルトンから引き継いだんでしょう? 」
スケルトンとは前顧問の愛称だ。今は俺にすべて任せイギリスにいる。
本人の前では口が裂けても言えないが部員のみならず全校生徒から呼ばれている。
部長もついポロっと出たのだろう。まあ仕方ないさ皆言ってる。
教員の間でもスケルトンは定着。よく考えれば何て酷い学校なのだろう。
変化してタピオカスケルトンだとかタピスケなどと呼ばれるように。
陰で言うんだから生徒も教員も大差ない。

俺はてっきり単なるタピオカ好きのガリガリ目つき悪い爺からだと思っていた。
何かおかしいなと思っていたんだよな。
だから実際にタピオカ部が存在するとはスケルトンから聞くまで信じられなかった。
ただ問題はそんなことではない。そのスケルトンが秘密にしていた存在。
即ち異世界探索部。
敢えて教えなかった異世界探索部と言う存在。

「ちょっと待ってくれ! 本当に俺は聞かされてないぞ! 」
今の今まで知らなかった。そう言えばさっきチラッとその存在に気づいたような……
まさか本当に存在するのか?
タピオカ部よりも存在を知られていない秘密のクラブ。異世界探索部。
インパクトのある名ではあるが知らないものは知らない。

「聞くも聞かないもありませんよ。ねえ皆? 」
副部長が話に加わる。
「そもそもタピオカ部と異世界探索部はセットみたいなものです。
生前よりスケルトンは二つの部の顧問をしておりました。
まさか本当に引き継ぎの時に聞かされなかったんですか? 」
副部長はタピオカに詳しく今部長をサポートしてるが二人の仲は決して良くない。
対立することもあるとスケルトンが…… ああ俺も言ってるや。
部長が真面目で部をまとめ副部長は頼れる専門家。

「君! いや君たち! スケルトンはまだ亡くなってない。縁起でもない。
ただ遠い世界の住民になっただけだろう? 違うか? 」
敢えて確認する必要もない。スケルトンから一週間に一回は連絡がある。
今もイギリスで羽根を伸ばしている。優雅なものだ。
一週間に一回とは心配のし過ぎではと好意的に受け止めていた。
だが違った。生徒想いの教師などでなくまだ気づいてないかの確認だったのだろう。

理想的なタピオカ部で王国を築く予定がどこで狂い始める。
とんでもないものを引き受けてしまった。
やはりスケルトンは重大な隠しごとをしていた。

あーあやってられない。
タピるだけだと思ったのに!
                     続く
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