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扉の向こう側
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タピオカ部は本日より本格的な活動を開始する。
「先生は甘い方がいいですか? 」
新入生の大人し目な子が恥ずかしそうに。何とも初々しい。
「うーん。そうだな。甘い方が良いかな。でも甘すぎるのはなしにしてくれよな」
きちんと伝わったかな?
スイーツと言ってやたら甘い菓子を勧める子もいるけどそれはちょっと。
単純に甘いだけがスイーツではない。
どうアドバイスしていいか悩んでいると次々に質問が飛ぶ。
「タピオカミルクティーに一味追加したいんですが何がよろしいですか? 」
「季節のもの。今だったら例えば…… 」
「タピオカはどれくらい入れたらいいでしょうか? 」
「うーんそうだな。適量にしなさい。分からなければ部長に相談するといい」
俺に聞いてどうする? タピオカについては素人だぞ?
引き継いだ資料にも目を通したが何が何やら。
それにしても皆しっかり取り組んでるな。
タピオカ部なんてふざけた感じだから適当に遊んでるとばかり思っていたが。
勝手な思い込みだったらしい。
これなら俺が熱血指導しなくてもいいかな。
皆熱心だから感心するよ。さすがは女の子って言ったら今はまずいんだっけ。
サマー部との掛け持ちは大変だが生徒の想いに応えてやるのも悪くない。
「先生! 先生! 」
ボケっとするなと言われてしまう。
ははは…… こっちが叱られてどうする。
俺こそ気合いが足りない。ちっとも入ってない。
「あの先生…… あちらはよろしいんですか? 」
責任感の強い比較的真面目な部長が扉の方に視線を向ける。
はあ何を言ってるんだこの子は? そこに何があると言うんだ。
どうせ使われなくなった準備室か何かだろ。
俺を脅かそうとしてもそうはいかない。
この旧校舎<ZERO館>ではその手の噂が囁かれている。
学園七不思議だとか。
俺が教えてもらったのはスケルトンの亡霊。
何でも二階でスケルトンが動き回ったって話。
嘘に決まってる。または誰かのいたずらだろう。
ただそれには続きがあってスケルトンはどうも召喚されてるのではないか。
それを目撃したと言う女子生徒がそのまま行方不明だとか。
穏やかじゃないがそれだったら誰が知り得たんだ? からくりが透けて見える。
ただここ一ヶ月はスケルトンの亡霊の目撃情報がピタッと止んだ。
食われたとか旧校舎を離れ逃げ回ってるとか。
開かずの扉に呑み込まれたのではないかなどなど。盛り上がりを見せている。
俺は大人だから怖くないけどつまらない噂流すなよな。
あれおかしいな? 足が震えてるぞ。
うう…… もうダメだ! 告白する。俺はその手の話に弱い。
いや強い奴は居ない。ただやせ我慢してるだけだ。
部長の指摘を受け開かずの扉へ。
「この扉が何か? 」
脅かすつもりなのかはっきりしない。
「ですからもう一つを見てあげなくてよろしいのですか? 」
サマー部のことを言ってるのだろうか?
「大丈夫だよ。あっちは曜日が違うし一週間に一度だから。
心配してくれるのは有難いが問題はないさ」
「はあ? だって掛け持ちしてますよね? 」
まだしつこく迫る。まさか俺にもう出て行ってもらいたいのか? 邪魔か?
確かにタピオカの知識はさほど。それも今からでも勉強して極めて行けばいい。
生徒と共に成長して行ければと思っている。
どうもそれではダメらしい。注文の多い子たちだ。
「そう。サマー部だな。よく知ってるな? 」
「はあサマー部? 」
また否定する。どうも部長とは噛み合わない。
「だから掛け持ちですよ先生」
「サマー部だろ? 」
「そんなおかしな部知りませんよ! 」
面と向かって言われると何も言えなくなってしまう。
おかしな部だとは思ってるがそれならタピオカ部だって負けないぐらいおかしい。
個性的ってことで妥協しよう。
「じゃあ何だ? 」
「本気で言ってます? こっちこっち」
またいたずらでもして俺をからかう気だろう? もうその手は食わないぞ。
部長がこれでは先が思いやられる。しかも真面目な振り。始末が悪い。
うん? 一体何なんだよ? 俺だって暇じゃない。
まさかその扉開くのか?
部長の指し示す扉の向こうは恐らく昔使われていた部室。
何だか得体のしれないおかしなクラブだったような……
まさか…… そんなはずない!
「忘れちゃったんですか? 」
憐れむような眼で見る。止めてくれ! 俺は正常だ。
そもそも意味不明だ。忘れるとは知っていた。記憶にあったと言うことになる。
だが俺はこのZERO館には今日初めてやって来た。
昨年からその存在だけは噂で知っていたが用もないのに立ち入ったりはしない。
続く
「先生は甘い方がいいですか? 」
新入生の大人し目な子が恥ずかしそうに。何とも初々しい。
「うーん。そうだな。甘い方が良いかな。でも甘すぎるのはなしにしてくれよな」
きちんと伝わったかな?
スイーツと言ってやたら甘い菓子を勧める子もいるけどそれはちょっと。
単純に甘いだけがスイーツではない。
どうアドバイスしていいか悩んでいると次々に質問が飛ぶ。
「タピオカミルクティーに一味追加したいんですが何がよろしいですか? 」
「季節のもの。今だったら例えば…… 」
「タピオカはどれくらい入れたらいいでしょうか? 」
「うーんそうだな。適量にしなさい。分からなければ部長に相談するといい」
俺に聞いてどうする? タピオカについては素人だぞ?
引き継いだ資料にも目を通したが何が何やら。
それにしても皆しっかり取り組んでるな。
タピオカ部なんてふざけた感じだから適当に遊んでるとばかり思っていたが。
勝手な思い込みだったらしい。
これなら俺が熱血指導しなくてもいいかな。
皆熱心だから感心するよ。さすがは女の子って言ったら今はまずいんだっけ。
サマー部との掛け持ちは大変だが生徒の想いに応えてやるのも悪くない。
「先生! 先生! 」
ボケっとするなと言われてしまう。
ははは…… こっちが叱られてどうする。
俺こそ気合いが足りない。ちっとも入ってない。
「あの先生…… あちらはよろしいんですか? 」
責任感の強い比較的真面目な部長が扉の方に視線を向ける。
はあ何を言ってるんだこの子は? そこに何があると言うんだ。
どうせ使われなくなった準備室か何かだろ。
俺を脅かそうとしてもそうはいかない。
この旧校舎<ZERO館>ではその手の噂が囁かれている。
学園七不思議だとか。
俺が教えてもらったのはスケルトンの亡霊。
何でも二階でスケルトンが動き回ったって話。
嘘に決まってる。または誰かのいたずらだろう。
ただそれには続きがあってスケルトンはどうも召喚されてるのではないか。
それを目撃したと言う女子生徒がそのまま行方不明だとか。
穏やかじゃないがそれだったら誰が知り得たんだ? からくりが透けて見える。
ただここ一ヶ月はスケルトンの亡霊の目撃情報がピタッと止んだ。
食われたとか旧校舎を離れ逃げ回ってるとか。
開かずの扉に呑み込まれたのではないかなどなど。盛り上がりを見せている。
俺は大人だから怖くないけどつまらない噂流すなよな。
あれおかしいな? 足が震えてるぞ。
うう…… もうダメだ! 告白する。俺はその手の話に弱い。
いや強い奴は居ない。ただやせ我慢してるだけだ。
部長の指摘を受け開かずの扉へ。
「この扉が何か? 」
脅かすつもりなのかはっきりしない。
「ですからもう一つを見てあげなくてよろしいのですか? 」
サマー部のことを言ってるのだろうか?
「大丈夫だよ。あっちは曜日が違うし一週間に一度だから。
心配してくれるのは有難いが問題はないさ」
「はあ? だって掛け持ちしてますよね? 」
まだしつこく迫る。まさか俺にもう出て行ってもらいたいのか? 邪魔か?
確かにタピオカの知識はさほど。それも今からでも勉強して極めて行けばいい。
生徒と共に成長して行ければと思っている。
どうもそれではダメらしい。注文の多い子たちだ。
「そう。サマー部だな。よく知ってるな? 」
「はあサマー部? 」
また否定する。どうも部長とは噛み合わない。
「だから掛け持ちですよ先生」
「サマー部だろ? 」
「そんなおかしな部知りませんよ! 」
面と向かって言われると何も言えなくなってしまう。
おかしな部だとは思ってるがそれならタピオカ部だって負けないぐらいおかしい。
個性的ってことで妥協しよう。
「じゃあ何だ? 」
「本気で言ってます? こっちこっち」
またいたずらでもして俺をからかう気だろう? もうその手は食わないぞ。
部長がこれでは先が思いやられる。しかも真面目な振り。始末が悪い。
うん? 一体何なんだよ? 俺だって暇じゃない。
まさかその扉開くのか?
部長の指し示す扉の向こうは恐らく昔使われていた部室。
何だか得体のしれないおかしなクラブだったような……
まさか…… そんなはずない!
「忘れちゃったんですか? 」
憐れむような眼で見る。止めてくれ! 俺は正常だ。
そもそも意味不明だ。忘れるとは知っていた。記憶にあったと言うことになる。
だが俺はこのZERO館には今日初めてやって来た。
昨年からその存在だけは噂で知っていたが用もないのに立ち入ったりはしない。
続く
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