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例の件
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ランチタイム。
弁当から興味のない栄養学の話になったのでさりげなく話題を変える。
「そうだ。例の件考えて頂けましたか? ぜひあなたに…… 」
今人生の重要なターニングポイントを迎えている。
ここで間違えれば取り返しのつかない事態に。一生後悔するだろう。
何度迫っても態度を保留する彼女。
即決しろとは言わない。でも時間もあげた。早く返事がもらいたい。
どれだけ焦らすのか。今回だって……
「ごめんなさい。まだ決めかねてるんです」
ほらやっぱり。ここまで来て断る理由が見当たらない。彼女は乗り気じゃない。
どうしてこんなにも必要としてるのに。気持ちに応えて欲しい。
正直に言って欲しい。俺のことは嫌いか? それとも他に理由が?
だったらいいさ。他の人にでも……
もちろん代わりなどいるはずがない。
それなのについ大人げないことを思う。
いやいや…… 思う分には問題ないよな?
言葉にした瞬間に嫌われてしまうだろうが。
これだから女性の気持ちはおろか人の心を理解できないんだろうな。
ああ…… よくやれてるよ教師なんて。
優柔不断な彼女にイライラが募る。それをどうにか抑えてる。
大人だからな当然だな。でもやっぱり我慢したくない。
やはり栄養不足。ビタミン不足かな。
「済みません。強引でしたね。この件はなかったことに…… 」
これが大人。大人の引き際。しつこくしない。
これ以上粘っても色よい返事は期待出来ないだろう。仕方がない。
もう引きずるものか。次だ次。
ポジティブに行こう。ポジティブに。落ち込む必要はないさ。まだ当てはある。
俺の体が壊れる前にどうにか最高のパートナーを。
「あの…… 私で本当によろしいのですか? 」
まだ俺の心を弄ぶ気か? 見た目に反して無神経な人だ。
それとも優柔不断なだけ? そうだよな。彼女は本当に良い人だもんな。
俺とは違う。名家のお嬢様。それだけに人の気持ちに疎いところがある。
人のこと言えないけど。まあそれはお似合いと言うことで。
名家のお嬢様か……
ただの噂だが案外本当なのかもしれないな。いくら迫ってもかわされる。
幼き頃から身についたであろうかわし方は完璧だった。
「それは当然じゃないですか! あなた以外誰がいるんですか? 」
強く推してみる。それでもまだ首を縦に振らない。
頑固で自分を曲げられないらしい。
それはそれで立派だけど迷惑になることもある。
もう少し。もう一歩で達成すると言うのに。
だが彼女はまだ悩んでいるようだ。
マリッジブルーか?
仕方ないさ。強制はさせられない。
「では前向きに検討しますね」
どうやらまだどうにか望みがあるらしい。
完全に糸が切れたかと思ったがまだ繋がっている。
俺たちの間の赤っぽい細い糸がギリギリ。
少しでも動かせば思いは遠くの空へ。
「ぜひお願いします。無理にとは言いません。ははは…… 」
ランチタイム終了。
そろそろ向かわなければ生徒に告げ口される。
そうなったら私立だから容赦なく切り捨てられるだろう。
勤務態度は真面目で通している。
ただ病気療養中だった身。その間は皆に本当に迷惑を掛けた。
これ以上はさすがに掛けられない。
チャイムが鳴る。
「ああもうこんな時間! 先生! 先生! 準備! 準備! 」
「ふあーい。それでは」
大欠伸を噛み殺しどうにか立ち上がる。
午後の授業って眠いんだよね。
生徒なら寝てればいいが俺は教師だしな。
自習にでもするか? それとも……
放課後。
<ZERO館>
今日もまた始まる無意味な悪ふざけ。
「早く! いい? 」
「ホラ! すぐに来ちゃう。ホラ! ホラ! 」
コツコツ
コツコツ
廊下を歩く音が聞こえる。
いつも一定の足音。
立ち止ることもなく急ぎ足になることもなく常に一定。
コツコツ
コツコツ
向かってくる音。
足音が止まる。
一拍置いてから取っ手に手がかかる。
ガラガラガッシャーン
勢いよく扉が開く。
壊れてしまうのではと思うぐらいの強さで。
一切の加減をしない。
これでぴくっと驚く者も僅かながら。
だがほとんどが笑みを湛えている。
男が入って来た。
キャア!
キャア!
ギャアア!
悲鳴に合わせて部屋にあるものが次々投げられていく。
キャア!
ギャアア!
部屋では数名の女子が着替えの最中だった。
続く
弁当から興味のない栄養学の話になったのでさりげなく話題を変える。
「そうだ。例の件考えて頂けましたか? ぜひあなたに…… 」
今人生の重要なターニングポイントを迎えている。
ここで間違えれば取り返しのつかない事態に。一生後悔するだろう。
何度迫っても態度を保留する彼女。
即決しろとは言わない。でも時間もあげた。早く返事がもらいたい。
どれだけ焦らすのか。今回だって……
「ごめんなさい。まだ決めかねてるんです」
ほらやっぱり。ここまで来て断る理由が見当たらない。彼女は乗り気じゃない。
どうしてこんなにも必要としてるのに。気持ちに応えて欲しい。
正直に言って欲しい。俺のことは嫌いか? それとも他に理由が?
だったらいいさ。他の人にでも……
もちろん代わりなどいるはずがない。
それなのについ大人げないことを思う。
いやいや…… 思う分には問題ないよな?
言葉にした瞬間に嫌われてしまうだろうが。
これだから女性の気持ちはおろか人の心を理解できないんだろうな。
ああ…… よくやれてるよ教師なんて。
優柔不断な彼女にイライラが募る。それをどうにか抑えてる。
大人だからな当然だな。でもやっぱり我慢したくない。
やはり栄養不足。ビタミン不足かな。
「済みません。強引でしたね。この件はなかったことに…… 」
これが大人。大人の引き際。しつこくしない。
これ以上粘っても色よい返事は期待出来ないだろう。仕方がない。
もう引きずるものか。次だ次。
ポジティブに行こう。ポジティブに。落ち込む必要はないさ。まだ当てはある。
俺の体が壊れる前にどうにか最高のパートナーを。
「あの…… 私で本当によろしいのですか? 」
まだ俺の心を弄ぶ気か? 見た目に反して無神経な人だ。
それとも優柔不断なだけ? そうだよな。彼女は本当に良い人だもんな。
俺とは違う。名家のお嬢様。それだけに人の気持ちに疎いところがある。
人のこと言えないけど。まあそれはお似合いと言うことで。
名家のお嬢様か……
ただの噂だが案外本当なのかもしれないな。いくら迫ってもかわされる。
幼き頃から身についたであろうかわし方は完璧だった。
「それは当然じゃないですか! あなた以外誰がいるんですか? 」
強く推してみる。それでもまだ首を縦に振らない。
頑固で自分を曲げられないらしい。
それはそれで立派だけど迷惑になることもある。
もう少し。もう一歩で達成すると言うのに。
だが彼女はまだ悩んでいるようだ。
マリッジブルーか?
仕方ないさ。強制はさせられない。
「では前向きに検討しますね」
どうやらまだどうにか望みがあるらしい。
完全に糸が切れたかと思ったがまだ繋がっている。
俺たちの間の赤っぽい細い糸がギリギリ。
少しでも動かせば思いは遠くの空へ。
「ぜひお願いします。無理にとは言いません。ははは…… 」
ランチタイム終了。
そろそろ向かわなければ生徒に告げ口される。
そうなったら私立だから容赦なく切り捨てられるだろう。
勤務態度は真面目で通している。
ただ病気療養中だった身。その間は皆に本当に迷惑を掛けた。
これ以上はさすがに掛けられない。
チャイムが鳴る。
「ああもうこんな時間! 先生! 先生! 準備! 準備! 」
「ふあーい。それでは」
大欠伸を噛み殺しどうにか立ち上がる。
午後の授業って眠いんだよね。
生徒なら寝てればいいが俺は教師だしな。
自習にでもするか? それとも……
放課後。
<ZERO館>
今日もまた始まる無意味な悪ふざけ。
「早く! いい? 」
「ホラ! すぐに来ちゃう。ホラ! ホラ! 」
コツコツ
コツコツ
廊下を歩く音が聞こえる。
いつも一定の足音。
立ち止ることもなく急ぎ足になることもなく常に一定。
コツコツ
コツコツ
向かってくる音。
足音が止まる。
一拍置いてから取っ手に手がかかる。
ガラガラガッシャーン
勢いよく扉が開く。
壊れてしまうのではと思うぐらいの強さで。
一切の加減をしない。
これでぴくっと驚く者も僅かながら。
だがほとんどが笑みを湛えている。
男が入って来た。
キャア!
キャア!
ギャアア!
悲鳴に合わせて部屋にあるものが次々投げられていく。
キャア!
ギャアア!
部屋では数名の女子が着替えの最中だった。
続く
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