永遠のトナラー 消えた彼女の行方と疑惑の隣人

二廻歩

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ブブンカの罪

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情けないことに銭湯で落とし物。親切にも前田さんが届けてくれた。
「それではこちらの書類にご記入を…… 」
まずい。いつもの癖で……   
「お巡りさんの忘れ物でしょう? しっかりしろよ! 」
前田さんが指摘すると皆大笑い。
「ははは…… 面目ない」
改めて礼を言って詳しい話を聞くことに。

どうやら左横田さんの勘違いだったらしい。
「どうして逮捕しないのよ! 」
感情的になりヒステリックに叫ぶ。
「いえお隣さんですよ。ご近所トラブルは本意ではないのでは? 」
とりあえず落ち着くように説得する。
だがそれが気に入らなかったのか喧嘩腰の左横田さん。
「はあ? この人私のことを触ろうとしたんだから! 」
ブブンカを睨みつける。
触ろうとしたが実際には触ってない。これでは何の罪にも問えない。
「誤解でーす。挨拶のハグをしようと近づいたら止められて…… 」
前田さんが大事になる前に間に入ったらしい。
それを勘違いして前田さんまで変質者扱い。

「チカンじゃないよ。ブブンカだよ」
そう言って再びハグをしようと迫るから始末が悪い。
あれ? ブブンカってそんな癖あったかな?
まさか女性にだけやるのだとしたらそれは見過ごせない。
でも文化の違いもあるしな何とも。でも放っておくのもどうかと思うし。
そうだ。前田さんが教育係をやればいい。お節介なところもあるし適任だろう。

「ハグは禁止! 分かったな? 」
「イエス! イエス! 」
そう言って同僚にOKのサイン。
「はい誤解があったようですね。とにかくこの件はこれで決着でよろしいですか」
同僚がため息を吐く。

一悶着あって皆が落ちついたところで挨拶。
「おお前田さんかい。久しぶりじゃな。まだ銭湯に通ってるのか? 」
「はい引っ越しの挨拶以来ですね」
「マエダサン? この人誰ね? 」
「お世話になってるこの町の長老だ。分からないことがあればこの人に聞くといい」
「オーイエス」
「なーに儂はただ長生きしてる口煩い老人じゃ。
まあここの若造に比べれば頼りにはなろうがな」
嫌味を言う老人。若さで括ってはいけない。
我々は一個人ではなく集団なのだから。

たくさんの人が押し掛け交番はパンク寸前。
偶然にも今度の失踪事件の関係者が集まっている。
残すは例の男一人に。
上司を引き連れて今日来るようなことを言っていたが果たして?
ここまで大騒動を引き起こした犯人が大人しくやって来るはずないか。
もし来るとすればそれは相当な間抜けか狂っているか。
そんな危険な人物相手に出来ない。

「ねえいつまで私ここにいなくてはいけないのかしら? 」
左横田さんが飽きたのか文句を言い始める。
「まあまあ。誤解が解けたんですからここはもう少しお話を」
「だから話すことなんてないって! 」
怒りだしてしまった。始末に負えない。
「そうだぞ。もうこれ以上いられたら業務に支障が出る!
皆さんに速やかにお帰り頂いてだな…… 」
自分が言いにくいものだから私に嫌なことを押し付ける。
「はあ…… 」
「早くしろ! うるさくて敵わない」
確かにトナラ―で埋め尽くされた交番は息苦しくて仕方がない。
暑くもあるのでえらい迷惑。クーラーでもつけようかな。

「では皆さんそろそろお帰り下さい」
トナラ―はトワさんを含めて五人。
「そんなこと言われなくても分かってるわよ! 」
左横田さんの機嫌が悪い。
自分の思い通りに行かなかったからだろうか。
同僚でもなく他のトナラ―たちでもなく私に当たるから困ってしまう。
「落ち着いてください。被害届は出さなくて本当によろしいですね? 」
念の為に確認する。強要されたと言われたら大問題だからな。
「面倒なことは結構です。この人にきちんと指導してねお巡りさん」
ブブンカとなぜか前田さんまで睨みつける。
ブブンカは恐怖のあまり一言も発さない。
「大丈夫だ。気にするなブブンカ。でも謝罪はしろよ」
すかさず前田さんが慰めの言葉を掛ける。
うんいいコンビだ。

「そこを退きなさいよ! 」
左横田さんが塞がった道を通り抜けようと四苦八苦。
「儂は用があるから残るぞ。いいな? 」
お爺さんには午前中に伺った話をもう一度詳しくしてもらう予定。
「はい。では皆さんがお帰りになってからゆっくりと」
疲れたと言うので座ってもらうことに。
すぐにお茶を入れる。何でもそうだが特に老人の世話は最初が肝心。

                続く
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