永遠のトナラー 消えた彼女の行方と疑惑の隣人

二廻歩

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おかしな男

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「これが話したかったこと? 」
今更だが男は引っ越す前には彼女が居なくなったのを認識してたはずだよな。
「お巡りさんには言いずらかったのじゃ。それからもよく遊びに来てな。
初めは嬉しかったよそれは。でも今の奴はあの頃の奴じゃない。
現実逃避したままの哀れな男。
別れた彼女の代わりを見つけて儂の前でいちゃついてな。
もう見ておれんようになった。だから厳しく接っするようになった。
もう来るなと追い返したことも。でもそれでもしつこく毎日のように」
「ではその状態がずっと続いた? 」
「ああ今だって変わってないだろう。変われないほど傷ついてるのさ。
お巡りさんも経験があるじゃろう? 」

「なぜもっと早く伝えてくれなかったんですか? 」
「それはプライバシー。それに儂は奴には関わるな。信じるなと助言したはず」
言ってたかな?

「もう一度確認します。それは先月の話ですよね? 」
「ああいつだったかな…… 思い出せないがとにかく先月なのは間違いない」
おかしいな? 男が駆け込んできたのは今月の初め。
二日だったはず。明らかにおかしい。
「何か心当たりありませんか? 気づいたことでも何でもいいので」
これ以上は難しいかな?
「いやこれは推測じゃがな…… 」
「ありがとうございました。では今度の話の書類作成にご協力下さい」
今日は暇なので午後に来るそう。

お爺さんの家を出るとすぐに呼び止められる。
「まだお調べになってるんですか? 」
左横田さんの奥様が話し掛けてきた。
「はい。報告出来ることがあれば近いうちに参ります」
不信感を抱かれる前に伝えられるものは伝えておくべきだろう。
だが果たして伝えられるだろうか?


ここで振り返ってみたいと思う。
男がお爺さんの紹介により隣の市からこの町に引っ越して来たのは先月。
だがお爺さんの証言によれば彼女と喧嘩したとかで新居の件は白紙に。
お爺さんはそのことで男との関係が悪化。
だがなぜか男は毎日のように姿を見せ訳の分からないことを言い困らせる。
まるで男がそこで住み続け彼女と生活してるかのように。
お爺さんは男が狂ったと見て、男はお爺さんが冷たくなったと。
お互いがお互いを信用できずに今に至る。

そして今月に彼女失踪。
まだ何も知らない我々は男の話を真に受ける。
彼が言うには近隣住民が怪しい。
証言によれば裏にはお爺さんが。
確かにレンタル倉庫に住んでいれば裏には証言通りお爺さんの家が。
また向かいの家には前田さんが。これも正しい。銭湯以外で顔を合わせてないと。
左隣にはブブンカが。これも正しい。男はブブンカとも銭湯で交流がある。
右隣は左横田さん。これも男の証言通り。
飛行機や電車で隣り合わせになって大変な目に遭ったのに新居でも隣人の恐怖。
左横田さんはそのことは認識していなかった。
変なストーカーが付けてきたぐらいだろうか。

「帰りました」
「おおちょうどいい。もうすぐ来るそうだ」
「誰が? 」
「例の男に決まってるだろ? 世紀の大悪党」
同僚は口が悪い。確かに業務を妨害した。
だがお爺さんからの話を聞いた後ではどうもやる気が出ない。
同僚は来たら説教をする気なのだろう。
または逮捕する気か? やり過ぎてはいけない。

お昼を済ませると忙しい午後の始まり。
「あらお巡りさん。落とし主は見つかったかしら? 」
「はい見つかりました。今日にも取りに来るそうです」
「うんうん。その人若いのかい? 」
「はい。どうも会社の資料を落としてしまったらしいんですよ」
「何だいそうかい。だったらよかったよ。
ああそれとあんたの好物を教えてくれないかい? 」
お婆さんはせっかくなら好物を作ってあげると言ってくれた。
「だったらハンバーグ」
「悪いね。洋ものはちょっと。刺激が強すぎるだろ? 」
「でしたらチラシとか」
「ああそんなんでいいのかい。分かったよ覚えてたら作って来るね」
おかしなことを言うな……

「それじゃまた今度」
「ああ婆ちゃんちょっと待って」
同僚が止めに入る。
「何だいあんたもか。好きなものをいいな」
「そうじゃなくて天ぷら…… 」
「面倒臭いの所望だね。いつか持って来てやるよ」
「婆ちゃん。この辺りでオレオレ詐欺が流行ってるから気をつけな。
先月は田中さんとこの婆ちゃんが引っかかったてよ」
「ハイハイ。ありがとうね」
世間話風に注意をする同僚。下手に強く言うと反発して聞きはしないからな。

                   続く
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