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お宅拝見
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ここまでは順調。問題はこの後。
「他に何かあるか? 」
ブブンカは鋭い。それとも心当たりがあるのか。
「先月に引っ越してきたんだよね? この家にはどれくらい人がいるのかな? 」
丁寧に優しく語りかける。下手に警戒されて口を噤まれては堪らない。
「えっと…… ワタシ分かりません」
ブブンカは手を広げ困惑して見せる。
把握できないほどの人数が部屋にいると見て間違いない。
「済まないが部屋を見せてもらうことは出来るかい? 」
「イエス。でも今は出払ってるね」
「ちなみに聞くけど。若い女性はいないかな? 」
「俺たちは男だけだ。変なこと言うなよ」
ブブンカは必死に訴えるがどうも怪しい。
「本当に女性はいない? 」
ブブンカは頷く。令状がある訳でもないのでこれ以上の追及は困難。
「では見せてもらう」
嫌々承諾を得る。
ブブンカの案内で部屋を回る。
広くはなく和室一つと洋室二つ。
ブブンカの手前、隈なく調べることも出来ない。ざっと見る程度。
一番怪しいのは奥の和室の押し入れだが……
「開けても? 」
「オオ…… イエス」
死体なんか置いてないよな? ではお言葉に甘えまして。
もちろん誰もいない。無駄足だったらしい。
いなかったことが証明されただけでも一歩前進。前向きに捉えなくては。
「ありがとう。もう充分です」
粘れば疚しいところも出てくるだろうが今度の失踪とは関係ない。
また別の機会にでも。
ブブンカの家にも失踪女性はいなかった。
やはりただの家出。失踪なだけではないのか?
ただお爺さんにせよブブンカにせよ何かを隠してるのは間違いない。
一体何を隠してると言うんだ?
あの男の言った通り調べてはみたが時間の無駄だったかな。
今日はこれくらいでいい。残りは明日にしよう。
交番に戻る。
「ああお巡りさん。落としもの」
まるで日課のように遊びに来るお婆さんが出迎える。
「あれ…… 」
「ああ、あの人ならすぐ戻るから留守番しててくれって頼まれてね」
取り敢えず遺失物の確認をする。
お婆さんは茶色の袋を拾ったそう。中身は封筒。
開けてみると現金がどっさりとは行かない。
何らかの資料が複数枚。
中身を検めるが手掛かりになるようなものはない。
これは一体何か? 気になるが保留だな。
「それでおばあちゃん。最近引っ越された方について何かご存じありませんか?
些細なことで構いませんから」
ダメもとで聞いてみる。ただの失踪事件だが何かあったとしてもおかしくない。
「ああ最近引っ越してきた人ね…… うるさくて敵わないよ」
ダメだ。それはブブンカの話。でもここまで敏感ならもしかして。
「ええ? そのお隣さんか。いつも独り言をブツブツと気持ち悪かったね」
お年寄りの無遠慮に切りまくる姿が怖い。
「それは男性ですよね。そうではなく女性の方なんですが」
男についてはこれ以上いい。本人の申告と見た目で判断できる。
何度も訪れるしつこい男ではあるが。そこは真剣と言うことで。
ただ真剣過ぎて我々警察が苦労することになる。
「女性かい? いや一度だって見かけたことないよ」
おかしい。男の方は見たとはっきり言うのに女は否定するなんて。
彼の言では彼女が一人で住んでると。来月までの我慢だと。
だから通いの男よりも女の方を見ているはずなのに。
これは一体どう言うことだろう?
疑問が湧く。
「ご苦労さん。ああ…… お前戻ってたのか? 」
同僚が戻って来る。俺よりも一つ上だがそうは見えない若々しさ。
「お疲れ様です。今失踪事件を調べてるところなんですが」
暇なので多少は調べておかないと格好がつかない。後で男にも報告する。
「ははは…… お前は熱心だな。しかしこれ以上首を突っ込まない方が良いぞ」
笑顔を見せるも決して穏やかではない。
「まさか上からストップがかかったとか? 」
そんなはずはないだろうが確認しないと気が済まない。
「慌てるな。ただ業務に差し支えるから一失踪事件にこれ以上拘るなってことさ」
確かに他にも片付けなければならない地味な仕事が山積み。
でもやっぱり気になるんだよな。
続く
「他に何かあるか? 」
ブブンカは鋭い。それとも心当たりがあるのか。
「先月に引っ越してきたんだよね? この家にはどれくらい人がいるのかな? 」
丁寧に優しく語りかける。下手に警戒されて口を噤まれては堪らない。
「えっと…… ワタシ分かりません」
ブブンカは手を広げ困惑して見せる。
把握できないほどの人数が部屋にいると見て間違いない。
「済まないが部屋を見せてもらうことは出来るかい? 」
「イエス。でも今は出払ってるね」
「ちなみに聞くけど。若い女性はいないかな? 」
「俺たちは男だけだ。変なこと言うなよ」
ブブンカは必死に訴えるがどうも怪しい。
「本当に女性はいない? 」
ブブンカは頷く。令状がある訳でもないのでこれ以上の追及は困難。
「では見せてもらう」
嫌々承諾を得る。
ブブンカの案内で部屋を回る。
広くはなく和室一つと洋室二つ。
ブブンカの手前、隈なく調べることも出来ない。ざっと見る程度。
一番怪しいのは奥の和室の押し入れだが……
「開けても? 」
「オオ…… イエス」
死体なんか置いてないよな? ではお言葉に甘えまして。
もちろん誰もいない。無駄足だったらしい。
いなかったことが証明されただけでも一歩前進。前向きに捉えなくては。
「ありがとう。もう充分です」
粘れば疚しいところも出てくるだろうが今度の失踪とは関係ない。
また別の機会にでも。
ブブンカの家にも失踪女性はいなかった。
やはりただの家出。失踪なだけではないのか?
ただお爺さんにせよブブンカにせよ何かを隠してるのは間違いない。
一体何を隠してると言うんだ?
あの男の言った通り調べてはみたが時間の無駄だったかな。
今日はこれくらいでいい。残りは明日にしよう。
交番に戻る。
「ああお巡りさん。落としもの」
まるで日課のように遊びに来るお婆さんが出迎える。
「あれ…… 」
「ああ、あの人ならすぐ戻るから留守番しててくれって頼まれてね」
取り敢えず遺失物の確認をする。
お婆さんは茶色の袋を拾ったそう。中身は封筒。
開けてみると現金がどっさりとは行かない。
何らかの資料が複数枚。
中身を検めるが手掛かりになるようなものはない。
これは一体何か? 気になるが保留だな。
「それでおばあちゃん。最近引っ越された方について何かご存じありませんか?
些細なことで構いませんから」
ダメもとで聞いてみる。ただの失踪事件だが何かあったとしてもおかしくない。
「ああ最近引っ越してきた人ね…… うるさくて敵わないよ」
ダメだ。それはブブンカの話。でもここまで敏感ならもしかして。
「ええ? そのお隣さんか。いつも独り言をブツブツと気持ち悪かったね」
お年寄りの無遠慮に切りまくる姿が怖い。
「それは男性ですよね。そうではなく女性の方なんですが」
男についてはこれ以上いい。本人の申告と見た目で判断できる。
何度も訪れるしつこい男ではあるが。そこは真剣と言うことで。
ただ真剣過ぎて我々警察が苦労することになる。
「女性かい? いや一度だって見かけたことないよ」
おかしい。男の方は見たとはっきり言うのに女は否定するなんて。
彼の言では彼女が一人で住んでると。来月までの我慢だと。
だから通いの男よりも女の方を見ているはずなのに。
これは一体どう言うことだろう?
疑問が湧く。
「ご苦労さん。ああ…… お前戻ってたのか? 」
同僚が戻って来る。俺よりも一つ上だがそうは見えない若々しさ。
「お疲れ様です。今失踪事件を調べてるところなんですが」
暇なので多少は調べておかないと格好がつかない。後で男にも報告する。
「ははは…… お前は熱心だな。しかしこれ以上首を突っ込まない方が良いぞ」
笑顔を見せるも決して穏やかではない。
「まさか上からストップがかかったとか? 」
そんなはずはないだろうが確認しないと気が済まない。
「慌てるな。ただ業務に差し支えるから一失踪事件にこれ以上拘るなってことさ」
確かに他にも片付けなければならない地味な仕事が山積み。
でもやっぱり気になるんだよな。
続く
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