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内見
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昼過ぎ。
ご機嫌斜めな彼女をどうにか宥めて遅めの昼食。
「それで何なの? 」
「実はさあ。いい物件が見つかったんだ。見に行かないか? 」
うどんをすする。
ラーメンを食べようと店を探していたらなぜかフードコートに。
別に彼女希望のうどん屋でも良かったのに気を遣ってここでお食事。
結局俺はうどんだ。彼女に釣られてしまった。
もったいないことをしたかな?
それにしても静かだ。そして誰もいない。
いくらゴールデンウイーク明けの平日だとしてももう少し人が居てもいい。
フードコートに来ると余計に週末との違いを感じてしまう。
ごみごみうるさいのは嫌だけど寂しいのはもっと嫌だ。
ワガママだと言うのは充分承知している。
「はあ? それっていつ? 」
彼女は物件の話を訝しがっている。
当然か。さっき爺さんに勧められたんだからな。
怪しいかどうかで言ったらかなり怪しい。
だから言い忘れてたことにする。
「どうする? 」
「へえ…… カス君も少しは考えててくれてたんだ」
「当たり前だろ。俺たちの新居なんだから」
「いいんじゃない。そのお爺さんが安くしてくれるんでしょう? 」
あっさりOK。そう言うところは能天気だから助かる。
「さあ急いで食べましょう」
マイペースの彼女。
午後もお買い物の予定。
「そう言えば何で今? 」
機嫌のいい時に聞いておけば詳しく話してくれるはず。
さあとしか答えない。
俺も早く新居を見つけたいのは同じ。
ただ振り回されてる気がしてならない。
時期的にはもう少し後でもいいのではと軽く考えてしまう。
年末までに決めればいいんじゃないかと心の中では思っている。
もちろんそんなこと直接は言えない。実際いつがいいのか俺にはまったく……
だから彼女に任せている。
引っ越すなら寒いより暖かい方がいい。もちろん年末ではくそ寒いが。
出来たら暑くも寒くもない秋に…… ああだから春なのか。
計画的で前倒し気味の彼女とギリギリまで放置の俺では話が合わない。
いつの間にか喧嘩に発展することも。そう言う時はいつも俺の方から頭を下げる。
俺の方が年も上なので引くようにしている。
そして謝罪の手紙を書く羽目に。
古風な彼女は手書きの文を書くよう要求する。
それが本当に面倒で。だがこれで彼女の機嫌が直るなら仕方がない。
一体今まで何通書いたことやら。まあほとんど俺のせいだけどね。
でも一割は彼女の早とちりが原因。それでも人のせいにするから困った困った。
しかも彼女なりのこだわりが。心を込めた文ではないとやり直せと突き返される。
また今日も書かされるのかな?
つまらないことを考えながらすすってるといつの間にか中身は空。
「あれ…… 食べたんだっけ? 」
「はあ? いいからもう行きましょう! 」
ランチを済ませ買い物へ。
「なあたまには映画でも? 先週から公開した話題の映画があってさ」
買い物だけではどうももったいない気がする。貧乏性かな?
「はいはい。また今度ね」
やはり断られたか。まあどうせ面白くないさ。次の機会に回すとするか。
帰る頃にはすっかり風は穏やかになっており午前中の出来事が嘘だったかのよう。
駐車場を後にする。
内見当日。
先日勧められた物件見学にやって来た。
あれだけ条件が良ければ後は実際に見学するだけでいい。
重大な瑕疵でもない限りほぼ決まり。
「どうです? 広々としてるでしょう? お庭は狭いですがその分手入れも楽ちん」
マイナス情報を無理矢理プラスに変えるのはさすがはプロ。
「はああ…… 」
どうも乗り気がしない。彼女と一緒に行くつもりだったのに……
予定が入ったとかで一人で行って来いと。本当に俺だけでいいのかな?
こだわりと言えば築年数ぐらいだがそれは問題ないらしい。
「こちらの物件は築五十年ですが一年前にリノベーションしました。
ほら新築同様ですからご安心ください」
どうもいい加減なんだよなこの人。
新築同様は客に誤認させる恐れがある。だから使ってはいけないはずだ。
そもそも新築とは完成してから一年以内の物件を指すのでは?
まあ賃貸だからな適当なんだろうが。
「ご覧ください。広々としているでしょう? 二階建ての立派な建物ですよ」
大きさは確かに問題ない。二人で住むには広すぎるぐらい。
後は値段ぐらいだがまあそれも爺さんの紹介なので安く抑えられるはず。
逆にこれ以外では割引は致しかねると言われてしまった。もはや選択の余地はない。
さあどうしようかな…… やはり即決は俺には無理。
もう少し様子を見るとしよう。
続く
ご機嫌斜めな彼女をどうにか宥めて遅めの昼食。
「それで何なの? 」
「実はさあ。いい物件が見つかったんだ。見に行かないか? 」
うどんをすする。
ラーメンを食べようと店を探していたらなぜかフードコートに。
別に彼女希望のうどん屋でも良かったのに気を遣ってここでお食事。
結局俺はうどんだ。彼女に釣られてしまった。
もったいないことをしたかな?
それにしても静かだ。そして誰もいない。
いくらゴールデンウイーク明けの平日だとしてももう少し人が居てもいい。
フードコートに来ると余計に週末との違いを感じてしまう。
ごみごみうるさいのは嫌だけど寂しいのはもっと嫌だ。
ワガママだと言うのは充分承知している。
「はあ? それっていつ? 」
彼女は物件の話を訝しがっている。
当然か。さっき爺さんに勧められたんだからな。
怪しいかどうかで言ったらかなり怪しい。
だから言い忘れてたことにする。
「どうする? 」
「へえ…… カス君も少しは考えててくれてたんだ」
「当たり前だろ。俺たちの新居なんだから」
「いいんじゃない。そのお爺さんが安くしてくれるんでしょう? 」
あっさりOK。そう言うところは能天気だから助かる。
「さあ急いで食べましょう」
マイペースの彼女。
午後もお買い物の予定。
「そう言えば何で今? 」
機嫌のいい時に聞いておけば詳しく話してくれるはず。
さあとしか答えない。
俺も早く新居を見つけたいのは同じ。
ただ振り回されてる気がしてならない。
時期的にはもう少し後でもいいのではと軽く考えてしまう。
年末までに決めればいいんじゃないかと心の中では思っている。
もちろんそんなこと直接は言えない。実際いつがいいのか俺にはまったく……
だから彼女に任せている。
引っ越すなら寒いより暖かい方がいい。もちろん年末ではくそ寒いが。
出来たら暑くも寒くもない秋に…… ああだから春なのか。
計画的で前倒し気味の彼女とギリギリまで放置の俺では話が合わない。
いつの間にか喧嘩に発展することも。そう言う時はいつも俺の方から頭を下げる。
俺の方が年も上なので引くようにしている。
そして謝罪の手紙を書く羽目に。
古風な彼女は手書きの文を書くよう要求する。
それが本当に面倒で。だがこれで彼女の機嫌が直るなら仕方がない。
一体今まで何通書いたことやら。まあほとんど俺のせいだけどね。
でも一割は彼女の早とちりが原因。それでも人のせいにするから困った困った。
しかも彼女なりのこだわりが。心を込めた文ではないとやり直せと突き返される。
また今日も書かされるのかな?
つまらないことを考えながらすすってるといつの間にか中身は空。
「あれ…… 食べたんだっけ? 」
「はあ? いいからもう行きましょう! 」
ランチを済ませ買い物へ。
「なあたまには映画でも? 先週から公開した話題の映画があってさ」
買い物だけではどうももったいない気がする。貧乏性かな?
「はいはい。また今度ね」
やはり断られたか。まあどうせ面白くないさ。次の機会に回すとするか。
帰る頃にはすっかり風は穏やかになっており午前中の出来事が嘘だったかのよう。
駐車場を後にする。
内見当日。
先日勧められた物件見学にやって来た。
あれだけ条件が良ければ後は実際に見学するだけでいい。
重大な瑕疵でもない限りほぼ決まり。
「どうです? 広々としてるでしょう? お庭は狭いですがその分手入れも楽ちん」
マイナス情報を無理矢理プラスに変えるのはさすがはプロ。
「はああ…… 」
どうも乗り気がしない。彼女と一緒に行くつもりだったのに……
予定が入ったとかで一人で行って来いと。本当に俺だけでいいのかな?
こだわりと言えば築年数ぐらいだがそれは問題ないらしい。
「こちらの物件は築五十年ですが一年前にリノベーションしました。
ほら新築同様ですからご安心ください」
どうもいい加減なんだよなこの人。
新築同様は客に誤認させる恐れがある。だから使ってはいけないはずだ。
そもそも新築とは完成してから一年以内の物件を指すのでは?
まあ賃貸だからな適当なんだろうが。
「ご覧ください。広々としているでしょう? 二階建ての立派な建物ですよ」
大きさは確かに問題ない。二人で住むには広すぎるぐらい。
後は値段ぐらいだがまあそれも爺さんの紹介なので安く抑えられるはず。
逆にこれ以外では割引は致しかねると言われてしまった。もはや選択の余地はない。
さあどうしようかな…… やはり即決は俺には無理。
もう少し様子を見るとしよう。
続く
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