ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

文字の大きさ
上 下
121 / 122

最終回後編 真の真犯人

しおりを挟む
「理解してくれたようだな」
そう言うとバスに乗り込む警察嫌いの黒木。
「刑事さん…… 」
運転手が泣きつく。
「済まないが乗せてやってくれないか」
「はあ…… 別に良いっすけど。どうせ仕事ですからね」
運転手をどうにか説き伏せる。
「よしなら早く乗れ! 俺も乗る! 」
「ふざけるな! 誰が刑事と同じ空気を吸えるかよ! 」
ここまで来れば黒木の勝ち。刑事は引き下がるしかない。
「分かった。勝手にしろ! だが下山したらすぐに話を聞くからな! 」
「はいはい。分かりましたよ刑事さん」
黒木は勝ち誇ったように大笑い。

「黒木! 戻っておいで。いい加減にしないか! 」
見かねた小駒さんが引き止めようとする。
「うるせい! さあ行くぞ運転手! 急げ! 」
黒木の命令に渋々従う運転手。
「頼んだぞ! 」
迷惑そうにヘイと答える。
ついにバスは黒木を乗せ出発。

「行くんじゃないよ黒木! 黒木! 」
小駒さんの懸命の説得も黒木には通じなかった。
「何で止めないんだい? 」
刑事に突っかかる。
「仕方ないだろ。ただの被害者或いは関係者では拘束力はない。
だから強制も出来ない。お願いベースだから。
ほらお婆さんも車に戻って」
「命令かい? 」
「いえお願いです」
お婆さんは大人しく従うことに。
黒木を乗せたバスは下山を開始する。
「ちょっと待っててくれ。今警部に報告してくる」
もうバスは姿を消した。

はあはあ
はあはあ
「失礼します警部。黒木が勝手にバスに。我々もすぐに後を追いますので」
そう言うと出て行った。
「おいちょっと…… 」
「ふふふ…… どうやら黒木は本性を現したようですね。
ではそろそろ事件の真相を語るとしますか。ねえ探偵さん」
不敵な笑みを浮かべる。

「はあ…… では改めてなぜ雑見さんを? 」
邪魔は居なくなったのに何を気にしていたのか慎重だった山田さん。
もう懺悔の時間だ。
「我々は黒木たち詐欺集団を抹殺する為にこのドスグロ山ホテルを買い取りました」
「ちょっと待って。我々? 買い取った? 」
「はい。彼はこのホテルを買い取りました。そして黒木たちを抹殺する為の準備を。
手始めに犯罪被害者の会と接触を。一度彼の付き添いで龍牙さんにも会ってます。
その時会長さんとお話を。彼らに慰安旅行を提案しました。
私も彼も同じ境遇ですからね。会長さんは二つ返事。こうして殺害計画がスタート」

「それでなぜ雑見氏を? 」
「私には恨みがありませんが彼には強い恨みが。
ガラクタの壺を無理矢理買わされたことで命を絶った男。ほら田中さんの元恋人」
「嘘…… やっぱり…… トオル? 」
田中さんはショックを隠せない。
「トオルは新しい恋人を作って私を振った。たぶんミサさんだったのね
でも彼はそんな人じゃないの。亡くなったと聞いて驚いた」
「トオルさんの家族とは? 」
「いえ電話でしたから。もしかして…… 」
「はいその方が今回の私の協力者。あなたの元恋人、トオルさんの父です」

「では山田さん。まさかあなたは依頼されて雑見さんを? 」
「そう言う約束ですから。お世話になりましたし当然ですね」
「まさかその男がホテルのオーナー? 」
「はい。それからこの殺人計画を立てたのはもちろん二人で」
「では共犯だな。そいつは誰だ? 早く答えろ! 」
刑事が飛びつく。

「それは探偵さんに推理してもらいたい」
「私に? 黒木ではありませんよね? 」
「当然じゃないですか! もう少しまともな回答をしてください」
怒らせてしまったか?
「小駒さん? 」
「違います! 」
「やはり龍牙さんが怪しいかな。奈良さんと共謀して…… 」
首を振る山田さん。満足の行く回答ではないようだ。
「だったらマジシャン! 彼なら何でもこなせそうだし」
「いい加減にしてください! そろそろ答えを」
このままでは明後日探偵の評判が地に落ちる。どうしよう…… もう外せない。

「でしたらバスの運転手さん」
一瞬山田さんの目が泳ぐ。
「はい正解です。彼こそがこの連続殺人事件の共犯者。真の真犯人。
ドスグロ山の雷人です」
あっさり答えてくれた。それにしてもバスの運転手が共犯って本当?
 
「そうですか。ではまさか…… 」
「はい。結局は彼がこのドスグロホテルに誘った」
「しかし二泊三日で五人もは現実的ではないような…… 」
「そこは私が出来るまで。後は彼に任せるつもりでした。
それには黒木たちを恐怖させ警察を嫌がる必要が。
もちろん天候もありますが土砂崩れは彼の役目。天候不良で工作は無用でしたが。
ああそれからオーナ―として従業員二人をコントロールしていたのも彼。
初日にガイドさんに気付かれないか冷や冷やものでしたよ。
大胆に運転手で。さすがに雇い主のオーナーだとは思わなかったようですね。
通報が遅れたのも彼が報酬で縛っていたから。彼女たちに罪はありません」
「分かりました」

「それから…… 」
「ちょっと待て! 今は呑気に話を聞いてる時じゃない。まったくこの野郎!
時間稼ぎしやがって! 運転手だ! 黒木が危ない! 」
警部は急いで外へ。
私も急いで追いかける。

バスは?
だがもちろんバスはどこにも見当たらない。
「何だあれ? 」
警部の視線は燃え盛る炎へ。

嘘だろ? バスが炎上している。

             
                 エピローグへ続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

強制憑依アプリを使ってみた。

本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。 校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈ これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。 不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。 その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。 話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。 頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。 まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

シグナルグリーンの天使たち

ミステリー
一階は喫茶店。二階は大きな温室の園芸店。隣には一棟のアパート。 店主やアルバイトを中心に起こる、ゆるりとしたミステリィ。 ※第7回ホラー・ミステリー小説大賞にて奨励賞をいただきました  応援ありがとうございました! 全話統合PDFはこちら https://ashikamosei.booth.pm/items/5369613 長い話ですのでこちらの方が読みやすいかも

警狼ゲーム

如月いさみ
ミステリー
東大路将はIT業界に憧れながらも警察官の道へ入ることになり、警察学校へいくことになった。しかし、現在の警察はある組織からの人間に密かに浸食されており、その歯止めとして警察学校でその組織からの人間を更迭するために人狼ゲームを通してその人物を炙り出す計画が持ち上がっており、その実行に巻き込まれる。 警察と組織からの狼とが繰り広げる人狼ゲーム。それに翻弄されながら東大路将は狼を見抜くが……。

夏霜の秘め事

山の端さっど
ミステリー
東の島国、環樹の名もなき忍びが一人、無愛想な秘め事屋は仮の名を霜月という。彼には三つ、大きな秘め事があった。一つ、「悪意」を感じ取る能力を持つこと。一つ、大陸を統べる国の長「裁」の養い子であること。一つ、実は女であること。野心渦巻く謀略の国、露霧から一人の異端児、夏冬が現れたとき、霜月の秘め事は増え始める。 (超不定期更新中)

【キャラ文芸大賞 奨励賞】変彩宝石堂の研磨日誌

蒼衣ユイ/広瀬由衣
ミステリー
矢野硝子(しょうこ)の弟が病気で死んだ。 それからほどなくして、硝子の身体から黒い石が溢れ出すようになっていた。 そんなある日、硝子はアレキサンドライトの瞳をした男に出会う。 アレキサンドライトの瞳をした男は言った。 「待っていたよ、アレキサンドライトの姫」 表紙イラスト くりゅうあくあ様

処理中です...