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手のひらの真実
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我慢しきれず小駒さんが暴走。もう滅茶苦茶。悉く邪魔をする困った人。
これなら大人しくお部屋に籠ってくれた方がどれだけ助かったか。
そんなタマではないのは百も承知だが。
彼女に加え黒木までいるから手に負えない。二人とも縛り付けておくべきか?
現場が混乱しコントロールを失えば真犯人の思う壺。
それだけはどうしても避けなければならない。
相棒に合図を送る。
これで大人しくなるかと思いきや何を勘違いしたのか相棒はウィンクを返した。
おいおい! まさか本気じゃないよな?
ふう…… 暑くて堪らない。どうしてか暑くて暑くて堪らない。
汗が噴き出てくる。拭っても拭っても大量の汗が流れ出る。
真犯人は頑な。邪魔は入るし相棒はポンコツだし。
どうしてこうなった? 思っていた展開とこれほどまで違うものか?
今すぐにでもガイドさんの胸に飛び込みたい。
そんな衝動に駆られるがもちろん我慢だ。冷静にならなくては。
「では第四の事件の疑問。どうして千田さんはこんなにも簡単に殺されたのか。
皆さん不思議に思いませんか? はい黒木さん」
「俺? ああ確かに不思議だよな。仲間が次々殺されてるのになぜ不用意に開ける?
それとも鍵は真犯人の手の中だったのか? 」
意外にも冷静で鋭い指摘に驚く。
「それはあり得ません。現場に鍵が。少なくとも侵入は出来なかったかと。
もちろん十号室のマジシャンが真犯人なら突破できますがね。どうです? 」
「おいおい。こっちに振らないでくれよ」
今まで大人しく見守っていたマジシャンの慌てた表情。
「申し訳ありません。ですがあなたの潔白を証明しなければ次に進めない」
「もう探偵さんも困った人だ。いいでしょう協力しましょう。
確かに第四の事件はそうかもしれません。でも私には第三までの犯行が不可能。
それに一連の殺人事件には一切関わっておりません」
マジシャンは否定して見せる。だが話を聞いただけでは潔白とはならない。
「では手を見せてください」
マジシャンの彼は手を見られるのを極端に嫌う。それ故まだ疑いが晴れてない。
「まったく分かりましたよ。見せればいいんでしょう? では探偵さんこっちに」
観念したマジシャンはこっそり手の内を見せる。
指の一本一本をじっくり見て行く。
うーん。別段おかしな点は見られない。
「もういいだろ? これでも商売道具なんだからさ」
「ありがとうございます。きれいな手をされていました。細くしなやかで…… 」
「おい! それ以上は止めろ! 営業妨害だぞ! 」
常に冷静だったマジシャンが取り乱す。
少々疑わしいが素直に応じたことから問題ないでしょう。
「ちなみに共犯だとか? 」
「それもありません! ただ私も犯罪被害者の会のメンバー。
彼らを恨んでるかと問われればそちらの真犯人候補さんと同じ。
それ以上に恨んでいると言ってもいい。ですが私たちは自分が酷い目にあっただけ。
それ以上でもそれ以下でもありません。
今回だって副会長さんからの呼びかけがあって参加した。そうですよね副会長さん」
マジシャンは龍牙を巻き込む。
「はい。小駒さんも奈良さんも。皆さん大変苦労されました。
今回のツアーはそんな皆さんの苦しみを和らげるための慰安旅行」
「ああそうだ。お前が頼りないから俺がサポートしてた訳だがな」
龍牙に続き奈良も口を開く。
「ではお二人とも本当に一連の事件に何一つ関わってない? 」
「当然だろ! 俺はこいつのお守さ。だからいつも行動を共にしてきた。
こいつが逃げ出したり不審な行動を取ったりしたことはない。
まあただいつもおかしな動きをするから誤解されやすいがな」
「ではお二人とも手を見せてください」
「はい。別に構いませんが」
「そうだな。じっくり見てくれ! 」
確か龍牙は爪が割れて絆創膏を。
奈良は切り過ぎて深爪に。深爪は癖になるから早めに対処すべき。
念の為に絆創膏を剥がすがこれと言って不審な点はない。
奈良の深爪は見ているこちらが目を覆いたくなるほど。
「ご協力感謝します。どうやらあなた方ではなさそうですね」
続く
これなら大人しくお部屋に籠ってくれた方がどれだけ助かったか。
そんなタマではないのは百も承知だが。
彼女に加え黒木までいるから手に負えない。二人とも縛り付けておくべきか?
現場が混乱しコントロールを失えば真犯人の思う壺。
それだけはどうしても避けなければならない。
相棒に合図を送る。
これで大人しくなるかと思いきや何を勘違いしたのか相棒はウィンクを返した。
おいおい! まさか本気じゃないよな?
ふう…… 暑くて堪らない。どうしてか暑くて暑くて堪らない。
汗が噴き出てくる。拭っても拭っても大量の汗が流れ出る。
真犯人は頑な。邪魔は入るし相棒はポンコツだし。
どうしてこうなった? 思っていた展開とこれほどまで違うものか?
今すぐにでもガイドさんの胸に飛び込みたい。
そんな衝動に駆られるがもちろん我慢だ。冷静にならなくては。
「では第四の事件の疑問。どうして千田さんはこんなにも簡単に殺されたのか。
皆さん不思議に思いませんか? はい黒木さん」
「俺? ああ確かに不思議だよな。仲間が次々殺されてるのになぜ不用意に開ける?
それとも鍵は真犯人の手の中だったのか? 」
意外にも冷静で鋭い指摘に驚く。
「それはあり得ません。現場に鍵が。少なくとも侵入は出来なかったかと。
もちろん十号室のマジシャンが真犯人なら突破できますがね。どうです? 」
「おいおい。こっちに振らないでくれよ」
今まで大人しく見守っていたマジシャンの慌てた表情。
「申し訳ありません。ですがあなたの潔白を証明しなければ次に進めない」
「もう探偵さんも困った人だ。いいでしょう協力しましょう。
確かに第四の事件はそうかもしれません。でも私には第三までの犯行が不可能。
それに一連の殺人事件には一切関わっておりません」
マジシャンは否定して見せる。だが話を聞いただけでは潔白とはならない。
「では手を見せてください」
マジシャンの彼は手を見られるのを極端に嫌う。それ故まだ疑いが晴れてない。
「まったく分かりましたよ。見せればいいんでしょう? では探偵さんこっちに」
観念したマジシャンはこっそり手の内を見せる。
指の一本一本をじっくり見て行く。
うーん。別段おかしな点は見られない。
「もういいだろ? これでも商売道具なんだからさ」
「ありがとうございます。きれいな手をされていました。細くしなやかで…… 」
「おい! それ以上は止めろ! 営業妨害だぞ! 」
常に冷静だったマジシャンが取り乱す。
少々疑わしいが素直に応じたことから問題ないでしょう。
「ちなみに共犯だとか? 」
「それもありません! ただ私も犯罪被害者の会のメンバー。
彼らを恨んでるかと問われればそちらの真犯人候補さんと同じ。
それ以上に恨んでいると言ってもいい。ですが私たちは自分が酷い目にあっただけ。
それ以上でもそれ以下でもありません。
今回だって副会長さんからの呼びかけがあって参加した。そうですよね副会長さん」
マジシャンは龍牙を巻き込む。
「はい。小駒さんも奈良さんも。皆さん大変苦労されました。
今回のツアーはそんな皆さんの苦しみを和らげるための慰安旅行」
「ああそうだ。お前が頼りないから俺がサポートしてた訳だがな」
龍牙に続き奈良も口を開く。
「ではお二人とも本当に一連の事件に何一つ関わってない? 」
「当然だろ! 俺はこいつのお守さ。だからいつも行動を共にしてきた。
こいつが逃げ出したり不審な行動を取ったりしたことはない。
まあただいつもおかしな動きをするから誤解されやすいがな」
「ではお二人とも手を見せてください」
「はい。別に構いませんが」
「そうだな。じっくり見てくれ! 」
確か龍牙は爪が割れて絆創膏を。
奈良は切り過ぎて深爪に。深爪は癖になるから早めに対処すべき。
念の為に絆創膏を剥がすがこれと言って不審な点はない。
奈良の深爪は見ているこちらが目を覆いたくなるほど。
「ご協力感謝します。どうやらあなた方ではなさそうですね」
続く
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