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秘密の抜け穴
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三〇三号室。第二の事件現場。
ミサさんの遺体を前にしても取り乱さない真犯人。
我々の揺さぶりにも何とか耐えている。
仕方がないか。では次に行くとしよう。
まったく真犯人の奴めどれだけ粘ればいいんだ。
こっちはもうすべて証拠が揃っている。いい加減自白してくれよな。
こうなったらもう言い逃れ出来ない決定的証拠を突きつけるしかない。
「皆さんはこの不気味な絵が気になりませんか? 」
巨大な絵画。黄緑色のカエルがこちらを睨みつけてる。
そう言えばガイドさんは苦手にしていたっけ。
今もなるべく見ないように目を瞑っている。
壁に掛っている迫力のある絵画に注目を向けさせる。
そう言えば食堂の額に飾ってあるイルカの絵も気になっていた。
その近くにはこれまた似たようなクジラの絵が。
「どうですか皆さん? 」
「探偵さん…… 」
ガイドさんは壁の絵の秘密をすでに知っている。
本来だったら彼女に解説してもらいたいが…… 面倒だ一気に行ってしまえ。
「真犯人のあなたはすべて知ってますよね? 」
返事一つ返さない。余裕がないのか笑みは消え視線を合わせようとさえしない。
どうにか取り繕ってるが本当に限界のようだ。そう見えるだけかもしれないが。
この状況でも何か企んでいるとしたら相当な切れ者。
用意周到に殺人計画を進めた奴なら有り得るか。
「では誰でも良いのでその絵の前に立ってください」
「分かったよ。俺が行ってやる」
皆が牽制してるところを黒木が前に出る。
彼も詐欺グループをまとめたリーダーとしての誇りがある。
身勝手だが仲間の恨みを晴らしたいのだろう。意外にも協力的だから助かる。
「では黒木さん慎重にお願いします」
「おお…… 気持ち悪いなこれ。俺の部屋のオタマジャクシと何か関係あるか? 」
「はい。三号室は四号室とペアになっています。
独立したものではなく大きな部屋を二つに分けたと考えればいいかと。
だからこそ鍵も共通。それから…… 」
これ以上は実際に体験してもらった方が早い。
黒木は絵の前に立つ。
「カエルの絵の真ん中辺りを探ってください」
「ああ真ん中だな。どれどれ。ああ? 」
「下の方。下の方をよく探ってください」
苦戦すること三分。ようやく取っ掛かりを見つけた黒木。
「おい何だこれ? ドアみたいなのがあるぞ」
ざわざわ
ざわざわ
新発見に驚愕し言葉を失う者たち。
「ちょっと探偵さん。これはどういうことだい? 」
さっそく小駒さんが噛みつく。
「どうと言われましても…… 見たまんまかと…… 」
「そうだ私の日記がどこかに消えたよ。どこを探してもないんだ。
まさかあんたの仕業じゃないだろうね? 」
余計なことを思い出させてしまった。実際は相棒であって私は関係ない。
説明は後回し。黒木にドアを動かすように指示。
「うん? いやびくともしないぞ。何だこれ? ははは…… 」
興味を示すがただの装飾だと考えてる黒木。
おかしいな。開いてるハズなんだけどな。
そうか黒木を閉じ込めた時に癖で鍵を掛けたんだった。失敗。失敗。
三〇三号室は黒木の監禁場所。
鍵はポケットに入ったまま。
「これを使ってください! 」
ポケットから三号室の鍵を出す。
黒木が遠慮なく奪い取る。
鍵を回すとガチャと言う音がし開錠。
これでほぼトリックの完成。
「黒木さんも覚えてますよね。監禁された時のことを」
「それはまあ。さっきのことだしな。だが目隠しをされていたから詳しくは。
お前に無理矢理押し込まれこの部屋で監禁されていた。まったく良くやるぜ本当に」
「見てください。それが秘密の抜け道です」
黒木は躊躇することなく隣の部屋へ。
即ち自分の部屋に戻る。
「すげえ! これはすげえよ! 」
まるで子供のように行ったり来たりを繰り返す。
「何だこの仕掛けは? 」
騒ぎだすハイテンションの黒木。
「それは元々このホテルの売り。
団体客が多くその実情はお友だちか家族か。
山奥の田舎で鍵をつけていませんでした。
この地方でもお年寄りを中心に家の鍵は夜ぐらいにしか掛けず昼間は無施錠。
近所の者が勝手に出入りし放題。防犯意識など微塵もありません。
いつも顔を合わせるご近所さんばかり。鍵を掛けるのは村の者を信用してない証拠。
最悪村八分にされてしまう。
まあこれは大げさに言いましたが昭和まで残っていた伝統の文化。
平成になってもこの文化は受け継がれていた。
続く
ミサさんの遺体を前にしても取り乱さない真犯人。
我々の揺さぶりにも何とか耐えている。
仕方がないか。では次に行くとしよう。
まったく真犯人の奴めどれだけ粘ればいいんだ。
こっちはもうすべて証拠が揃っている。いい加減自白してくれよな。
こうなったらもう言い逃れ出来ない決定的証拠を突きつけるしかない。
「皆さんはこの不気味な絵が気になりませんか? 」
巨大な絵画。黄緑色のカエルがこちらを睨みつけてる。
そう言えばガイドさんは苦手にしていたっけ。
今もなるべく見ないように目を瞑っている。
壁に掛っている迫力のある絵画に注目を向けさせる。
そう言えば食堂の額に飾ってあるイルカの絵も気になっていた。
その近くにはこれまた似たようなクジラの絵が。
「どうですか皆さん? 」
「探偵さん…… 」
ガイドさんは壁の絵の秘密をすでに知っている。
本来だったら彼女に解説してもらいたいが…… 面倒だ一気に行ってしまえ。
「真犯人のあなたはすべて知ってますよね? 」
返事一つ返さない。余裕がないのか笑みは消え視線を合わせようとさえしない。
どうにか取り繕ってるが本当に限界のようだ。そう見えるだけかもしれないが。
この状況でも何か企んでいるとしたら相当な切れ者。
用意周到に殺人計画を進めた奴なら有り得るか。
「では誰でも良いのでその絵の前に立ってください」
「分かったよ。俺が行ってやる」
皆が牽制してるところを黒木が前に出る。
彼も詐欺グループをまとめたリーダーとしての誇りがある。
身勝手だが仲間の恨みを晴らしたいのだろう。意外にも協力的だから助かる。
「では黒木さん慎重にお願いします」
「おお…… 気持ち悪いなこれ。俺の部屋のオタマジャクシと何か関係あるか? 」
「はい。三号室は四号室とペアになっています。
独立したものではなく大きな部屋を二つに分けたと考えればいいかと。
だからこそ鍵も共通。それから…… 」
これ以上は実際に体験してもらった方が早い。
黒木は絵の前に立つ。
「カエルの絵の真ん中辺りを探ってください」
「ああ真ん中だな。どれどれ。ああ? 」
「下の方。下の方をよく探ってください」
苦戦すること三分。ようやく取っ掛かりを見つけた黒木。
「おい何だこれ? ドアみたいなのがあるぞ」
ざわざわ
ざわざわ
新発見に驚愕し言葉を失う者たち。
「ちょっと探偵さん。これはどういうことだい? 」
さっそく小駒さんが噛みつく。
「どうと言われましても…… 見たまんまかと…… 」
「そうだ私の日記がどこかに消えたよ。どこを探してもないんだ。
まさかあんたの仕業じゃないだろうね? 」
余計なことを思い出させてしまった。実際は相棒であって私は関係ない。
説明は後回し。黒木にドアを動かすように指示。
「うん? いやびくともしないぞ。何だこれ? ははは…… 」
興味を示すがただの装飾だと考えてる黒木。
おかしいな。開いてるハズなんだけどな。
そうか黒木を閉じ込めた時に癖で鍵を掛けたんだった。失敗。失敗。
三〇三号室は黒木の監禁場所。
鍵はポケットに入ったまま。
「これを使ってください! 」
ポケットから三号室の鍵を出す。
黒木が遠慮なく奪い取る。
鍵を回すとガチャと言う音がし開錠。
これでほぼトリックの完成。
「黒木さんも覚えてますよね。監禁された時のことを」
「それはまあ。さっきのことだしな。だが目隠しをされていたから詳しくは。
お前に無理矢理押し込まれこの部屋で監禁されていた。まったく良くやるぜ本当に」
「見てください。それが秘密の抜け道です」
黒木は躊躇することなく隣の部屋へ。
即ち自分の部屋に戻る。
「すげえ! これはすげえよ! 」
まるで子供のように行ったり来たりを繰り返す。
「何だこの仕掛けは? 」
騒ぎだすハイテンションの黒木。
「それは元々このホテルの売り。
団体客が多くその実情はお友だちか家族か。
山奥の田舎で鍵をつけていませんでした。
この地方でもお年寄りを中心に家の鍵は夜ぐらいにしか掛けず昼間は無施錠。
近所の者が勝手に出入りし放題。防犯意識など微塵もありません。
いつも顔を合わせるご近所さんばかり。鍵を掛けるのは村の者を信用してない証拠。
最悪村八分にされてしまう。
まあこれは大げさに言いましたが昭和まで残っていた伝統の文化。
平成になってもこの文化は受け継がれていた。
続く
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