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全裸体の謎

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第一発見者のガイドさんにミサさん発見までを振り返ってもらった。
今のところ矛盾点もなく信頼がおける。

「ちなみにミサさんとはここで初めて? 」
ガイドさんを追及。第一発見者である以上しっかり答えてもらう必要がある。
「はい? 当たり前じゃないですか。ねえ田中さん? 」
頷いて同意する料理人。
「では他のツアーで顔を合わせたりはしてませんか? 」
「いえ今回が初めてのバスツアーですからあり得ません」
「個人的に付き合いがあるとか? 」
二人は首を振る。
どうやらガイドさんたちとミサさんには接点はなさそうだ。

では今度は事件について質問するとしよう。
「遺体に触れたりはしませんでしたか? 動かしたり余計なことは? 」
「怖くて怖くてその場に座り込み悲鳴を上げるのが精一杯」
いくら彼女が第一発見者だとしても思い出してもらうのは悪い気がする。
再びあの日の記憶が蘇ればトラウマは相当なものだろう。精神的にも辛いはずだ。
それが一度きりではなく合計で四度も。あり得ない遭遇回数。
私も何度となく注意したがそれでも悲劇は止めようがなかった。
毎朝死体を発見すれば慣れる? 決してそのようなことはない。
この後警察から何度も思い出すように言われるだろう。出来たらもうこれくらいで。
彼女は積極的に見えるがもう限界だろう。
これもすべて真犯人が仕組んだこと。計画通りだとすれば何て酷い奴なんだろう。
いつの間にか違う形で真犯人への怒りが込み上げてくる。

「こうして第二の事件は発生。皆さん何かお気づきになったことは? 」
「やっぱり一人だけ裸なのはおかしいよ! 」
相棒が食いつく。今まで大人しくしていたのに。
遺体はもちろん覆われていてここからは見えない。
だから想像でしかないがそのことが強烈に残っているのは男だから?
 
「おかしな点はなかったんだろ? 」
「うん。単純な撲殺事件さ」
相棒の見立てに間違いはない。
「それでやはり全裸体が気になるのか? 」
「うん。不自然かなと思って…… 」
そこが私も引っかかっていたところ。
なぜミサさんだけ裸にしたのか?

第一、第三、第四とどれも衣服はそのまま。
ただ面白がって? いやそれはあり得ない。
真犯人が何も考えずにお遊びでこんなことをするとは思えない。
絶対に何かある。裏に何か隠してるに違いない。そう思うのが普通。
ただ今回の真犯人は一筋縄では行かない。常識に囚われれば足元をすくわれる。

真犯人の様子を窺うが俯いてるだけ。
疲れが見え始めている? 
「どうしましたお疲れの様ですが? 今お認めになれば楽になりますよ」
真犯人を揺さぶる。
「ふふふ…… 」
ただ不敵な笑みを浮かべるだけ。
この謎を解いてみろと挑発しているかのよう。

「では小駒さん。推理好きなあなたならどう判断しますか? 」
ここで小駒さんを投入。
すると真犯人は一言ささやく。
「はい? 降参しますか? 」
首を振り笑みも消え真剣な表情の真犯人。

「探偵さんから指名されたから言うんだけどね…… 」
らしからぬ自信のなさ。前置きをする小駒さん。
「この全裸体はこの女に良いように騙された男の復讐だと思うんだよ。
この人が直接被害を受けたんじゃないなら家族かね。
私の息子もこの女に騙されて酷い目に遭ってるんだよ。
気持ちはよく分かる。でもしちゃいけないよ」
小駒さんは全裸体に意味を見出した。
これさえも真犯人の思う壺?
「あんたこの女を裸にして楽しんだんだろ? そこだけは頂けないよ」
死者を侮辱するあるまじき行為に皆絶句する。

「ありがとうございました。他にお考えはありませんか? 」
危険なので小駒さんの世話を相棒に任せる。
このまま行くと遺体に何かしかねない勢い。
冷静になるまでがっちりキープ。
「ほら木偶の坊。あんたはいつも邪魔ばっかりして。いいところだったのに」
相棒を貶し怒らせ逃れようとするが相棒はハイハイと宥める。
さすがは相棒。ちっとも堪えてない。

「あの…… 隠そうとしたのでは? 」
田中さんが前に出る。
「被害者の抵抗に遭い傷ついた。または血が付いてしまった。
当然真犯人の血ですからそのまま放置は出来ない。
血を洗い流す為に体を洗い血の付いた衣服を奪った。
血が大量ならどこに垂れたか分からないので下着類もすべて持ち去った。
そのことをカモフラージュする為に全裸体に。敢えて服を着させなかった」
田中さんの推理は的を得ているように思えるが。
果たしてどうなのだろう?

                 続く
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